二百九十五話
まったり回!
植物ダンジョンをクリアと言う事で、一時的にだが手が空いた俺達は、村へ戻ったり、魔石ダンジョンに潜ったり、植物ダンジョンにカカオの回収や物々交換をしたりする生活をしている。
何故魔石ダンジョンに行くんだ? と言うと、街に滞在していると、カカオをとって来いという視線が凄い。
まぁ、取ってきても量が足らないからね……とは言え、休むべき街でそんな視線に晒されれば割とストレスが溜まっていたりしている訳で、ぶっちゃけ息抜きと言うわけでは無いけど、エスケープみたいなものだ。
黙って部屋に引きこもったりすれば良いかもしれないけど、戦闘の勘は休む時間が多いとズレが生じてくるからな。そのズレが起こらないようにする為にも、魔石ダンジョンに潜っている。
ただ、今はそのどちらのダンジョンにも潜っていない。では何処にいるのかと言うと、村にある爺様の家だ。
何せ、妹たちにしゃべる双葉と対面させたら、妹たちが大暴走したからな。
可愛い可愛いと連呼し、あれやこれやと遊びから着せ替えまで楽しみ、仕舞いには「双葉ちゃんはここに居るべき!」などと言い出す。
まぁ、双葉自身が俺についていくと断言したので、その案は却下されたのだが……代わりに村に戻る頻度を増やせと駄々をこねた。
ただ、ここで問題なのが塩ダンジョン探しの旅が予定されているという事だ。
俺としては村に戻る頻度を増やすのは問題が無い。いや、むしろ今まで駆け足だった分少しぐらいは良いだろうと思っている部分はある。
だが、現状の環境がそれを良しとしない。直ぐに動けるパーティーなんてそう多くないからな。……一応、育成は進んでいるはずなんだけどね。
そんな訳で、次の指令が来るまでの間だが、村にいる比率を高くする方針で美咲さんと話し合い、協会にもその許可を得た。……まぁ、カカオを取りに行く比率が下がるので協会……と言うか、受付のお姉さま方は渋々と言った様子だったが。
まぁ、その様な流れで村に来る比率を上げ、今は双葉が妹たちときゃっきゃ言いながら遊びまわっている。……イオに美咲さんも混ざってるよ。
そんな様子を見ながら、俺は爺様と風と並んでお茶を啜る。
「最近はよく村に戻っておるが……大丈夫なのじゃな?」
「この間も言ったけど、許可は得てるからね。それに、協会から出る次の仕事を考えたら……ね」
「ふむ、遠征でのダンジョン探しじゃったな。大丈夫なのかの?」
「どうだろうね。物資の面は協会持ちだから大丈夫なんだけど、未知の領域に足を踏み入れる訳だから」
「オークキングみたいなモノが居るやもしれぬか」
「そういう事。まぁ、まともに戦闘するつもりは無いけどね」
別に、村やら街に被害が出る可能性が有る状況でもない限りは無理に戦闘なんてする必要は無い。
寧ろ下手にそいつ等と戦って、人が居る場所へと移動させるよりは無視したほうが良いだろう。
まぁ、すべては状況次第って事なんだけどね。手を出すべき相手とそうでない相手の見極めは、しっかりとやらなければいけないって事だ。
「そうじゃのう。獣も手負いになると手が付けられぬ時があるからの……モンスターともなれば、余計どうなるか解らぬか」
「オークキングも元々はジェネラルと一段階低いクラスだったしね……追い詰めるのは問題だよ。それに、あの時と違って包囲出来るほど人数が居る訳じゃないし」
今のところ、ダンジョン探しの旅に出るのは俺と美咲さんのパーティー。それ以外は全く聞いていないが、まぁ、増えたとしても二から三パーティーぐらいだろう。
となると、人数だけで言うならばイオ達モンスターズも含めて十五前後……これでは包囲作戦なんで出来る訳がない。
巨大な集落でも作られていた場合は、その人数で攻めたところで数匹のモンスターは必ず逃げるだろう。
そして、その逃げたモンスターが、俺達の知らない場所で人に対して、攻撃を苛烈に行うなんて可能性もある訳で。
「まぁ、そういった集落に対する方針とかも、協会のほうで調整してくれると思うけどね」
「どれだけ人が生き残ってるか解らぬからのう……慎重になりすぎる方が良い話じゃな」
俺たちのせいで、どこぞの村なり街が一つ潰されました。なんて事になったら悔やんでも悔やみきれないからな。
「しかし、双葉ちゃんは良いのう。子供たちが集まって来て皆楽しそうにしておる」
うん、いつの間にかに村の子達が集まって来て、皆が楽しそうに遊んでいる。
こうなると、ゆりにゆい、そして美咲さんは子供たちのまとめ役に回り……。
「そこの子危ないよ!」
「あー、男子! 女の子泣かせちゃダメでしょ!」
「イオちゃんの尻尾強くつかんじゃダメだよ」「ミャァァァァァン!?」
と、もはやてんやわんやである。
「で、風は混ざらないのか?」
「ピュィ!?」
ちらりと風に話題を振ってみる。すると風は「え!? 自分も混ざらないとダメですか!?」みたいな対応。……どうやら風は子供の腕白具合が苦手そうだな。
「ピュィピュィピュィィィィ!!」
必死にジェスチャーをする風。その動きをみると、嘴で羽根を咥えるような動きを見せた後、ブンッ! と首を横に振り、羽根を引き千切るかのような動き。
そして、その後はスリスリと羽を抑えながら泣き真似をした。
「お……おう。そうか、前に思いっきり羽根を毟られたのか」
「ピュィピュィ!」
そうそう! と首を縦に振りながら鳴く風。うん、そんな理由があるなら混ざって来いって言えないな。
武器になるイオの尻尾と違い、羽根は抜けちゃうからなぁ……。そして、抜けた羽根が復活するのも時間がかかるだろうし、それ以上に激痛のはずだ。
「それなら、風は此処で俺や爺様の相手をしてくれればいいよ。もし呼ばれたら……空に飛んで逃げてもいいから」
「ピュィ!」
翼を使い敬礼する風。……一体だれが教えたんだ? まぁ、風はその後、爺様の隣をキープして爺様の話に相槌を打ちながら、お茶や煎餅を堪能。……モンスターズの中では一番年齢が低いはずなのに、何でこうも隠居した雰囲気を出しているんだ。
視点をイオ達に戻す。
それにしても、村の子達……相当身体能力上がってるよな。目測だけど、ダンジョンが誕生する前と比べて、同じ年齢だった子達の倍ぐらいの能力がないか?
とは言え、それでもイオや双葉達に敵う訳ではないけども。
「イオちゃんたーっち!」
「ミャン!」
「あぁ、避けられた! 男子包囲して!」
「待てよ! なんで俺達が包囲側なんだよ! 俺もイオにタッチしたい!」
……なんか戦術が出来上がってきてないか? 男子の中には、将来眼鏡をクィとやりそうな雰囲気を持つ子が何やら指示を出そうとしてるし。
女子は女子で……うん、お菓子をネタに双葉を釣り出そうとしている。
「爺様……この村は、何時から戦術の勉強を子供に教えてだしたんだ?」
「可笑しいのう? そんな科目は学校で教えてないはずじゃが……」
天然か!? それとも誰かがこっそりと教えてるのだろうか。
「ふっふっふ……双葉ちゃん、お縄につく時間だよ!」
「ちょっとゆい。何子供に混ざって暴走してるの!?」
「やー! いおちゃん、あっちにはしって!」「みゃん!」
……あ、犯人はゆいだな。あいつ、子供たちを巧みに誘導してやがる。女子にお菓子を配ったのもゆいの様だ。
「ふふふ……ゆいお姉さんには負けませんよ!」
キラリと光る眼鏡……の幻想が見えてしまう男子君がゆいに負けないように、男子を統制し始めている。
うん、これは男子と女子によるイオと双葉の争奪戦が始まったようだ。
「なんというか、彼は将来協会にスカウトされそうだなぁ」
「素質はあるじゃろうな。後はどう育てるかじゃが……ゆいが良い具合に壁になっておるのう」
ワイワイと賑わう家の庭。なんとも微笑ましい光景だ。まるでモンスターが蔓延る世界になった事など無縁という感じで……いや、モンスターズなイオ達がいるからちょっと変な言い方だな。
「ヤー!」と言いながらも楽し気にイオを誘導する双葉。「ミャン」と尻尾を掴まれないようにしながら走るイオ。
そして、それを追う子供たちと誘導するゆいと眼鏡(幻想)君。
「あぁもう! 庭からでたらだめだからね!」
「あ、あの子転んでケガしちゃったみたい。私行ってくる」
と、全体を注意しながら見ている美咲さんに、救護班と言える立ち回りをするゆり。
何はともあれ……村はと言うか、この場は今のところ平和なようだ。
因みに、この子供たちの遊戯は父さんが帰ってくるまで続き……帰ってきた父さんが驚愕していたりする。
その時の父さんの言葉はと言うと、「ゆい……混ざるのは良いけど、自分が熱中しすぎるのはダメだろう」だった。
うん、ゆいが暴走してたからな。父さんの言いたい事はよく解るよ。
ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!
双葉ちゃんに対して、皆さん暴走しています。
舌足らずでしゃべる双葉は、無意識にクリティカルを出して言ってますね。




