7
Cの隣にお姉ちゃんがいて、わたしがちゃぶ台越しにトイメンにいる構図やで。気に入らんが仕方ない。
「……」
「……」
二人とも喋らん。お姉ちゃんもう五分程固まりっぱなしや。
普段のボケツッコミはどこに行ってしまったんや。どんだけ無口やねん。
「うっ」
あんなお姉ちゃん。もう突っ込まんけど、「うっ」てなんや。また感嘆詞か。
大方「うち」っていいそびれたんやろけどな。
「うん」
Cも二文字か。本当に喋らんな。ずずっと啜ったお茶はやっぱ全然おいしくない。これはお姉ちゃんのせいやなくて、東京のせいやな。東京はダメや。変なやつもおるし、わたしの中の東京ポイントがさらに十くらい下がったで。東京の価値は0.1マイクロ大阪くらいや。
「あの、持ってきた」
C。お前何を持ってきたんや。目的語を抜かすな。日本語の段取り悪いで。
「な、なに?」
「これ」
Cが胸ポケットからハンカチーフを取り出すと、ぽんっと花束になった。
「花。これは、本当の手品、です」
「わー……ええの? うわーーーー!! っと。……う」
ふん。なかなかやるやないか。お姉ちゃんがまた飛び上がりそうになった瞬間に頭の上に手を差し伸べたのはナイスや。気安く触らなかったのも評価したる。
「あの、おみやげです……手ぶらじゃ悪いですし」
「へえー。う、う、嬉しい……。あの、ところ、で、球根は? これ、全部、食べられる種類、やな」
――何でやねん! 包装されてるやろ! どう考えても飾る用やんかお姉ちゃん! なんで食べるんや! 天才過ぎるやろ!
「……あ、球根も持ってきてます。ユリだけですけど……」
ユリの球根を袋から取り出した。
「わあー。わあ……べ、別に……」
あーまたお姉ちゃん止まったわ。エラー出たわ。まあ大方「別にそこまで嬉しいわけじゃないけど強いて言えば普通」とか言おうとしたんやろ。
「ってかな、……Cなんでお前球根なんてもってんねん! 意味分からん!」
あかん。突っ込んでしもた。
「多分、花束を、渡したら……Aさんだったら球根欲しがるかなあと……考えました」
「お、お前なあ! 頭おかし……くは、ない。気がきいとるやんか」
「ありがとうございます。あ、じゃがいもも、あります。半分は芽が生えちゃいましたけど」
「お前頭おかしいっ!」
「そや! ちょーど、じゃがいも切らしてたんや……! 流石やな! 流石やなCは! うちのことホントに良くわかっとるなー。ゆでて食べよう! 夕食はみんなでじゃがいもパーティーや!」
あ、……お姉ちゃん復活した。流石やな。ゆでたじゃがいもだけでパーティーとか完全に常人の発想やない。天才や。塩もないんか。ないんやろなあ。
少し泣きたくなってきたわ。何も言えないでいるとCがわたしの方を見て、
「……大丈夫。栄養バランスが偏らないように、カレールーも、にんじんも、肉も全部持ってきた。カレーにしよう」
「……ナイス! 超ナイス! C、お前案外出来る男やんか!」
「そ、そか。じゃあじゃがいもパーティーは今度やな。ちょっと残念やけど、まあ、Cの作る料理は何でもおいしいからな」
「へ? 何、料理て?」
「あんな、うち毎日Cが弁当作ってるのを味見してん。Cにうちに面倒見てくれって頼まれてな……まあしゃーなくてな!」
お姉ちゃんは得意げに言った。
…………………………。
お姉ちゃん、それ、話逆やない? お姉ちゃんが面倒見なきゃって言ってたやんか。
わたしが困惑してCの方を見ると、Cは人差し指を一本立てて、
「……Aさんには、すごい面倒見てもらってる。助かってる」
「せ、せやな。人生は助け合いやからな!」
お姉ちゃんは一気に物凄く元気になった。
またぴょーんと飛び上がりそうなところをCが掌でストップをかけた。
「……そか。……うん」
うちは、特に出る幕なさそうやなあ。
Cも変なやつやけど、悪いやつじゃなさそうやし。
「じゃあみんなで料理しよか」
「うん!」
「あ、包丁なかったわ。そもそもケトルと電子レンジしかなかったわ」
お姉ちゃんがてへっとする。
「……」
「大丈夫、調理器具も全部持ってきた」
「お姉ちゃん、良く生きて来れたなあ……」
「あんな、空腹で行き倒れになってるところをたまたまCに助けてもらってん。まあでも五回くらいやろ、確か」
「Cお前兄試験合格! お姉ちゃんの面倒見ろ!」
「なんやE。面倒見てるのはうちやで」
「せやな、うん」
C、お前とりあえず認めたる。でもお姉ちゃん泣かせたら殺すで。
「分かった」
Cが頷いた。
*




