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お姉ちゃん。流石やね。  作者: こんて
3/8

 ~前回までのあらすじ~

 お姉ちゃんが好きなのがわたしじゃなかった! 神死んでる! ニーチェも仰天や!



「……なあお姉ちゃん。わたし応援する!」


 お姉ちゃんがびっくりして振り向いて、


「ええっ? 反対してたんちゃう?」

「き、気が変わったんや! もしかしてわたしの兄になるわけかもしれんからな!」

「そ、それはまだ気が早いっちゅうか……だってなあ……まだ映画見に行ったくらいやし……手、繋いだくらいやし」


 お姉ちゃんは両手で頬を押さえて首を振る。


「見に行ったんかい! 手か! そうきたか! ……まったく東京は手練手管ちゅうかなんちゅうか! お姉ちゃんの純情を踏みにじりおる!」


 お姉ちゃんがもじもじしたり、くねくねしたりしている。


「で、そいつの名前はなんて言うん?」

「え、それはいいやんかー。相談いうても軽く話聞いてもらうだけのつもりだけやったし」


 お姉ちゃんは天才なんや。そんなカスに構ってる暇なんかないんや。


「ダメや。わたしがいる間に試験をしなきゃならんのや!」

「なんやねんそれ」

「お姉ちゃんと付き合う資格があるかどうかわたしが確かめるんや!」

「な、なんでEが決めるんや……うちのことやろ」


 お姉ちゃんは不満そうにふくれっつらになった。


「……あー、だってなあ。よくよく考えたら将来わたしの兄になるかもしれへんやろ」

「な、な、な……」


 お姉ちゃんは真っ赤になって『な』を連発した。

 いつからこんな軟弱になってしまったんや。


「……し、Cや。Cっていうんや……」

「よーし覚えた。これは兄の試練、兄の試練や! まあこの場限りの名目上やけどな! お姉ちゃんメールメール! あるんやろ! 早く出し!」

「う、うん……」


 わたしは拳を握りしめた。C、ただじゃおかん。




 ぴぴっ


 男がケータイを取り出す。


 件名:C

 内容:今から うち 死ね


「……討ち死ね!? ストレートだな……」




「何で書いてる途中で邪魔するん!? 変な文面で送っちゃった……! うち嫌われたかもしれん……!」


 お姉ちゃんが泣きそうな顔になってボコボコとわたしの頭を叩く。


「ふふ、これは愛……愛の試練や。お姉ちゃんのことが本当に好きなら乗り越えられる!」

「さっきまで兄の試練って言ってたやん!」

「兄も愛も一文字しか変わらんやんか。同じやろ」

「せやけど……」


 ぴぴるぴー。


 メールを受信する。お姉ちゃんがケータイをわたしから奪って確認する。

 脇から見ると


 件名:Re:C

 内容:>今から うち 死ね

     いきr


「はー良かった」

「いきrとか! 日本語三文字も打ち終わってないで! タイトル書き直せとか、漢字変換しろとかそういうレベルやない! ふざけてんのかこいつ!」


 わたしはいきり立った。お姉ちゃんは安心したように、にへらと笑って、


「あー、Cな。ちょっとシャイでめんどくさがりやねん。……だからな、うちが面倒見てやらんと」

「そ、それはクズや! お姉ちゃんを超える面倒くさがりなんていないし、いたらどう考えてもクズやろ!」

「……え? うちってそんな面倒くさがりなんか……?」


 お姉ちゃんがわたしの方を不安げに見る。


「そんなわけないやんか! お姉ちゃんは天才で最高や! そんなわけで次弾装填や!」

「ちょ、もう堪忍してやー」

「お姉ちゃんの為や!」


 わたしがメールを打とうとすると、


 ぴぴるぴーぴぴるぴーぴぴるぴー


 ケータイから音が鳴る。


「あれ、メール?」

「いやこれ通話や! ケータイかして!」


 お姉ちゃんの顔が、ぱあっと明るくなった。


「……なんでメール着信と電話の音が同じなん?」

「設定したんや。音が同じだと誰からかかってきたか分かるやん」


 わたしは戦慄した。


「……っ!! ありえへん!! お姉ちゃんが細かい設定いじくったりするわけない! お姉ちゃんは世界一の面倒くさがりなんやで! ひょっとしてらぶらぶ会話とかする気なんか!?」


 わたしはケータイに耳を寄せた。ついでにお姉ちゃんのほっぺにちゅーした。柔らかかった。集中集中。


「……もしもし」

『よ』

「ん」

『何?』

「いも、うと」

『あー』

「……く、る……い、ま」

『やー』


 ツーツーツー


「終わったでー」


 満足そうにお姉ちゃんは一息つく。


「……何やそれ! それは会話やない! 単語や! 感嘆詞や! どれだけ短文やねん!」


 お姉ちゃんがカーペットの上をごろごろと一周しだす。お姉ちゃんを踏まないようにわたしはちゃぶ台の上に乗った。


「誤解解けた! 家来るって……どうしよう! どうしよう! うちやばい!」

「え? 今の会話で家来るの……? ってか最後ヤダって断ったんちゃう? 振られたんちゃう?」

「ちゃうわ。最後のは英語や。ヤーはyes、肯定やねん。さっき言ったやん。Cはシャイやって。沢山喋るの恥ずかしいやんか」


 わたしは頭が痛くなった。お姉ちゃんはごろごろ転がるのをぴたりと一度止めて、


「愛の力や」

「何が愛や! どんだけめんどくさがりやねん! ……まあとにかく来るならしゃーない確認するまで。とりあえず掃除する?」

「掃除用具無い。今、身体でコロコロしとる」

「もだえるのと掃除を一緒にするなんてどんだけめんどくさがりや! 服が汚れるやろ!」

「同じの50枚ロフトにあるから大丈夫。それに、薄汚れてるのが原宿ファッションなんや」


 それ原宿の人が聞いたら怒らん?


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