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お姉ちゃん。流石やね。  作者: こんて
4/8

~これまでのあらすじ~


お姉ちゃんの彼氏がやって来るとかあり得んわ!



 ――三十分後。

「来ないな……」

「愛足りないみたいやなー。なあお姉ちゃん、もうケータイもメアドも消した方がええんちゃう?」

「んん……。ってかな、誰にも家教えてないんや。バイト用の住所も偽造や。駅も定期つくらんで、わざと違う駅で降りてから乗り換えたりしてるから……」

「……は?」


 わたしは目をぱちくりとした。お姉ちゃんはコロコロと掃除を続けながら、


「だってストーカーとか怖いやん……うち一人暮らしやから」

「じゃあ来れるわけないやろ! ……まあええけど」

 Cってやつはなんなんや。来るって言っといて来ないのは失礼やろ。

 お姉ちゃんに悲しい顔させおって。もう絶対許さんわ。


 ピンポーン


 TVインターホンが鳴った。


「はい」


「あ、来た! ちょい待ち!」

 お姉がぴょーんと飛び上がってロフトから着替えを取り出して服を変えるとさっきの服はごみ箱に捨ててから髪をポニテで縛って軽く化粧し直して部屋にアロマをせっせと振りまき始めた。その間十秒。


「えらい早いなあ……っていうかわたしの時は気合い抜いてたんかい……ガッカリやわ……」

「べ、別にそういうわけやない!」


 ぴょんぴょんと跳ねる。偉い喜びようやなあ……。そんなにいいやつなんか。

 でも、来るわけないやろ、家知らないんやし。

 インターホンのモニターに映ったのは、


「うわっ! 変態がおる!」


 全身びしょ濡れの大男だった。


「気持ち悪いな! 通報や!」

「何いってんねん。Cや」

「え?」

「よ うC。え、えらい遅いやないか! 別に待ってないけどな! うちの降りる駅番の総和をうちの誕生日で割ると一意に定まることにやっと気付いたんか!? そ れともこの前送りつけた亜種ウィルスの中に入れた変数のアンダースコア以降を結合したあとの文字列にこの前送ったメールに入れたシーサー暗号ヒントで復号 するとここの住所になることがやっとわかったんか!? それとも……」


 お姉ちゃんがべらべらと喋る。


「……」


 お姉ちゃん……。わたしはお姉ちゃんのこと好きだけど、ちょっと気持ち悪いで。

 様子を見守ることにする。


「な、何とか言ったらどうや!」

「この前……一緒に映画に行った」

「せ、せやな。まあまあやった! 非常につまらなかったというわけでもないけどな! 強いて言えば普通や!」

「それで、この辺の半径1kmぐらいに住んでるのは映画の待ち合わせの時に知ってたから、端から順に……全力でピンポンダッシュした……表札無いのは分かってたけど……流石にちょっとキツかった……」


 男は疲れ切ったように喋った。お姉ちゃんは感動したように、


「そ、総当たりアルゴリズム……。あ、愛や! 愛の力や……!」


 と呟いている。ちゃう。それは単なる近所迷惑や。

 わたしは我慢出来ずにインターホンに怒鳴った。


「お前がCか! とりあえず言いたいことは腐るほどある!」

「初めまして……Cです」


 Cは礼をした。


「初めましてな! わたしはAの妹のEや! 最初に言っておくがお前傍から見たら超迷惑やからな! 大体家わからんのなら普通に聞け! それでも男か!」

「すいません……恥ずかしくて」


 お姉ちゃんがわたしの袖を引っ張る。


「だ、だから言ってるやろ……Cはシャイなんや……」

「そういう問題やないって! ご近所様にごっつう迷惑やろ! こいつは変態の軽犯罪者や! お姉ちゃん何考えとんの!?」

「あの、面倒くさがりですが、変態ではないです……」

「面倒くさがりはそんな根性出してピンポンダッシュしないわ!」

「Aさんと、あの、……結構仲良くさせて頂いてます」

「結構やて! 結構やて! もっと言って!」


 小声で言ってぴょんぴょん跳ねる。跳ねすぎて頭が天井にぼこんぼこんと何回も低い音を立ててぶつかっていた。――この部屋厚い壁で良い部屋やなあ。実家は一回これで天井壊れたしな。これで馬鹿にならないんやから、流石お姉ちゃんやで。


 ――遠くからパトカーのファンファンという音が聞こえる。


「あ、通報されたみたいですね。流石に迷惑だったみたいで……申し訳ないです」

「かーーーーーっ!! アホかお前は! とにかく上がれ! 三階や!」

 とりあえず分かったけど、こいつはアホや。間違いない。

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