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お姉ちゃん。流石やね。  作者: こんて
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 ようやく部屋に着く。こざっぱりとした部屋だった。真ん中にちゃぶ台が置かれている。わたしはちょっと驚いて、


「へー。綺麗にしとるんやね。っていうかちゃぶ台しかないんやな。教科書すらないのが清々しいまでにお姉ちゃんらしいわ」

「あんな、予備校に全部置いといたらパクられたわ」

「へー。予備校で置き勉するなんて流石お姉ちゃんや」

「そもそも予備校のテキストなんていらんわ。本屋で立ち読みすれば良いだけやしな」

「流石天才やね」

「浪人生やけどなー」


 二人で笑う。


「そや。立ち読みやけど、東京は大阪より本屋が多いんやで」

「それはない!」

「な、なんで言い切るんや。まあどっちでもええけど」


 お姉ちゃんは自慢げに、


「ちなみにここはマンションオートロック式1R21平方メートルロフト付きトイレバス別駐輪スペース有管理人付きや!」

「へー。すごいんやねー。で、マンション何?」

「まあ何でもええわ。茶わかしたる」


 お姉ちゃんはお湯をわかしてお茶を作ってくれるようだった。


「なんやそのプラスチックのやかん。頼りない。やっぱり東京モンは貧弱やなあ」

「いやティファールって言うんや。有名やで。大阪にもあるで」

「へえ。一つ賢くなったわ。ねえ、ところで東京の水って大丈夫なん? お姉ちゃんはまだ大阪40%残ってる?」

「40%って何? んー。水の味はぼちぼちやな……まあしゃあない」

「なあ、大阪に帰るつもりないの? 東京は人が住む所じゃない。人外魔境の摩天楼や」

「別にそこまでやないで」

「今はええかもしれん。でも東京はだめや。わたしお姉ちゃんのこと真剣に心配して言ってるんよ」


 お姉ちゃんはわたしよりもかなり薄い胸をどんと叩いて、


「なに、大丈夫やで。お姉ちゃんやからな」

「まあそうかもしれんけど。なあ生活費どうしてるん? おとんこっそり送ったりとかないの?」

「あるけど使ってない。おとん心配しすぎやねん。ってかな、あんな、うち今式場でバイトしてん!」


 お姉ちゃんは嬉しそうに言う。


「お姉ちゃんが? 葬式って儲かるんやなあ」

「なんでや。式場言ったら普通結婚式やろ。ウェディングや! 皿はこぶだけで時給3000円やで!」

「3000円!? ごっついなー! お姉ちゃん良く受かったなあ……! ああいうのって可愛くないと採用されないんやろ?」

「と ころがどっこい一発採用や! うち天才やからな! でもやってみて分かったけど、笑顔振りまくとか面倒やねん。うちに向いてない。一週間くらいしたら仕事 出来ない振りして沢山皿割って、ひたすらぺこぺこ謝って今は赤いの振って車の誘導だけやっとるん! 時給は一緒やで!」

「その器用さを仕事に活かせばよかったんちゃう……?」

「面倒なのは嫌いや」


 お姉ちゃんは自信満々に言う。


「せやな、お姉ちゃん天才やしな」

「Eもやるとええよ。うちが出来るんやから」

「誘導とか?」

「おっとそれはうちの仕事やー!」

「あはは。でもお姉ちゃん可愛いし天才やしなー。わたしが勝ってるのって胸くらいしかないやん」

「自分で言うな!」

「はは、流石お姉ちゃんや。ツッコミ健在やな。なあ、抱きしめてええ?」


 お姉ちゃんはほほをぽりぽりとかいて、


「ええよ」

「わーい」


 ぎゅっとする。お姉ちゃんはわたしよりちっこくてあったかいんや。お人形さんみたいやねん。


「あ、E。そうや。相談しよう思て。うち実は今、好きな人がおるんよ」

「……は!? ああ、わたしか」


 納得してほっとするのもつかの間、


「何いってんねん。Eはもちろん大切やけど、姉妹で付き合うわけにはいかないやろ」

「そんなことないで!」

「はいはい」

「わたしは本気で言ってるんや!」

「はは。もうボケはええわ」


 ちっともボケてないやん。わたしは本気や。姉妹として心配なんや。……あれ?

 持っている湯飲みからお茶を零しそうになる。


「ってことは、おおおおおお男か! お姉ちゃん汚れてしまったんか!? これだから東京は……! 魔界や……! 大丈夫かお姉ちゃん!?」

「ちょ、E。何で服めくろうとするんや」

「何もしとらん! お姉ちゃんが汚れていないか確認するだけやで!」


 背中に手を回す。


「ホックない……! まさかスポーツブラやとは……去年からまるで成長しとらん……」

「余計なお世話や! ってかなんで知ってるんやあ、アホ! ちょ、パンツまで! ……やめ!」

「ん、ボタン外れへん。きつきつやなー。見栄張ってるなー」

「余計なお世話や! ……はあ、はあ」

 お姉ちゃんに思い切り突き飛ばされる。

「だから別になんもしとらんて! まだ付き合ってないし、告白もしとらん!」

「え……」

「あ……」

 お姉ちゃんは口を押さえる。

「告白するの……?」

 お姉ちゃんはそっぽを向いてひゅーひゅーとならない口笛を吹く。


「別になんもー」


 どこ吹く風のお姉ちゃん。

 これはあかんとわたしは手をぐっと握りしめた。

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