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死者たちがあまりにも悲しそうだったので手を伸ばしていたら、いつの間にか精霊に愛されていました  作者: ちょこだいふく


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28.すすむ教育

避暑地での教育は、穏やかだが確実に、着々と始まった。



「ではノア、この場合お茶会へ招待された側は、まず何を確認しますか?」


ミレイユに穏やかに問いかかられたノアは少し考え、


「……主催者の立場?」


「正解です」


ミレイユが微笑む。


「相手が何を求めているかを考えるのは大切ですよ」


ノアが少し得意げな顔をした。

その隣では、リシュアが感心したように瞬きをしている。

するとノアは続ける。


「あと、誰が本当に仲良いか」


ミレイユが「まあ」と首を傾げる。


ノアは真顔だった。


「こっちに笑顔で接していても心の中では嫌ってる人とかいるじゃないですか」


リシュアは慌てた。


「ノア!?」


「え、違う?」


ミレイユは一瞬目を丸くして、感心したように笑った。


「…ノアは、人を見るのが上手いわね。」


窓辺では、風の精霊たちがくるくると揺れている。



また別の日。


「遅い」


木剣を軽く受け流しながら、エドガーが静かに言った。ノアが悔しそうに顔をしかめる。


避暑地の庭では、護身訓練が始まっていた。

ルークも少し離れた場所で見守っている。


一方リシュアは、木剣を構えているだけで既に疲れた顔をしていた。


「む、難しいわ…」


「力任せに振る必要はない」


エドガーが言う。


「まずは“危険へ気づく”ことだ」


リシュアがぴくりと顔を上げた。


「……後ろ」


ルークが反射的に振り返る。


次の瞬間、木の上から落ちてきた小枝が、先程までルークが立っていた場所へ落下した。


ルークが目を見開く。

ノアが「おぉ…」と声を漏らした。

リシュアは自分でも驚いた顔をしている。


「……なんとなく、嫌な感じがして」


風の精霊たちが、リシュアの周囲でそわそわと揺れていた。エドガーは静かに娘を見る。

その目は鋭い。

けれど、どこか考え込むようでもあった。



「だから言っとるだろうが」


グランが面倒臭そうに煙草を咥える。


「精霊ってのは、“気配”みてぇなもんだ」


避暑地の外れのいつもの小屋。

ノアは床へ胡座をかきながら首を傾げる。


「でも、人間みたいに感情あるじゃん」


「人間が勝手にそう見とるだけだ」


グランが鼻を鳴らした。


「風は流れる」


「水は満ちる」


「火は燃える」


「影は包む」


「…そんだけだ」


リシュアは静かにその言葉を聞いていた。

グランはちらりと彼女を見る。


「…だがまあ、人間の感情ってのは自然に近い」


「だからあいつらも寄ってくる」


窓の外では、小さな光がゆっくり漂っている。

その景色は、とても穏やかだった。


避暑地での日々は、静かに流れていく。


けれどその時間は確かに、彼らを少しずつ変えていた。

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