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死者たちがあまりにも悲しそうだったので手を伸ばしていたら、いつの間にか精霊に愛されていました  作者: ちょこだいふく


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20.グランとルーク

ゴッ!!

ゴッッ!!


乾いた音が森へ響く。


どんどん薪が地面へ転がり、ルークは無言のまま次の薪を割るために丸太を持ってくる。

汗が額を伝う。慣れない斧の重みで掌は赤くなっていたがそれでも止まらない。

橋の下で感じた恐怖が、今も胸の奥へ残っている。


——なにも知らない。


その悔しさを振り払うみたいに、ルークは再び斧を振り下ろした。


ゴッ!!


薪が綺麗に割れる。

少し離れた縁側では、グランが湯呑みを片手にその様子を眺めていた。最初は追い返すつもりだった。


だがこの若造、文句ひとつ言わない。


薪割りを命じられれば薪を割り、水を汲めと言えば黙って何往復もする。しかも妙に真面目だ。

グランは目の前へ積み上がっていく薪の山を見て、我慢できずに言った。


「……お前は来年の分まで割る気か?」


ルークは斧を持ったまま振り返る。


「まだ足りないかと」


真顔だった。グランは思わず吹き出しかける。


「誰もそこまでやれとは言っとらん」


呆れ半分、可笑しさ半分。

その瞬間だった。


ふわり、と風が揺れる。

ルークが目を瞬く。

小さな光が、木々の間から現れた。


淡い風色の光。

葉のように揺れながら、くるくるとグランの周囲を飛んでいる。


「……精霊」


思わず呟く。

今までこの場所は驚くほど静かだった。

避暑地やリシュアの周囲のように、光が舞うこともなかった。


それなのに今、小さな精霊たちが楽しそうに集まってきている。


グランは湯呑みを持ったまま、ちらりと精霊を見た。


「……珍しいな」


ぼそりと呟く。


風の精霊はグランの肩へちょこんと乗ると、機嫌が良さそうにふわふわ揺れた。


ルークはその光景をじっと見つめる。

するとグランが面倒臭そうに言った。


「精霊っつうのは、感情の動きに寄ってくる」


ルークは静かに思い出す。


——精霊は騒がしい場所を好む。


感情が動く場所へ集まる、と。

…つまり今、グランの感情が動いたということだ。

ルークがそう考えていると、グランは眉を寄せた。


「変なこと考えるな」


「顔に出とる」


「……申し訳ありません」


素直に謝るルークへ、グランは深いため息を吐いた。

だがその目元には、ほんの少しだけ笑みが残っていた。


その周囲を、小さな風の光たちが嬉しそうに舞っている。


森は静かだった。

けれどその静けさは、どこか前より少しだけ温かかった。

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