#07 ときめかない日曜日
アユムと最後に会ってから一週間が過ぎようとしていた頃、私は桜から紹介された男の人と何度かメッセージをやり取りしたあと食事に誘われた。
「今度の日曜日に上野でランチしませんか?」と。
アユムのことが気になってあまり乗り気にはなれなかったけど、アユムもデートをしていたことを考えたら、なんだか自分だけ殻に閉じこもっているのは癪に思えたので快くOKの返事をした。
もう少し先だと思っていたら、気づけばあっという間に日曜日になってしまった。
男の人と二人きりで食事なんて、アユムとのデート以来で少し緊張しながら支度をした。
楽しみからじゃない。ただ落ち着かないだけだった。
メイクをして髪を巻く。クローゼットを開けると、何を着て行こうか悩んだ。
アユムとのデートは、前日の夜から張り切って、着て行く服を考えていた。
2~3日前から考えて、そのデートのためだけに洋服を買うこともあった。
その熱量に比べたら、今日のデートは全然気持ちが足りていなかった。
それでも、着飾るのが大好きな私は入念に支度をする。
上は、毛足の長い白のシャギーニットにした。
ふわふわな見た目が可愛くて、汚れのない清純さを演出できるから。
あとなんと言っても“萌え袖”が、デート相手の男心をくすぐるかもしれない。
下は、パンツスタイルかミニスカートか。ロングスカートという選択肢もある。
私はルームウェアのまま、鏡の前でそれぞれを合わせた。
アユムはパンツスタイルが好きだった。「大人っぽくていい」とよく言っていた。
ミニスカートは「露出が心配で嫌だ」と好んでいなかったから、デートにはあまり着て行かなかった。
なのに今、私は無意識にそれを手に取っていた。
黒の、ボックスプリーツ。
「よし。ミニスカートにしよっと。靴は黒のロングブーツ合わせようかな」
バッグは、チェーンストラップの黒のバニティバッグにする。
ガーリーだけど、モノトーンでまとめて、子供っぽくなりすぎないようにした。
時計を見ると出発時刻を少し過ぎていて、私は慌てて部屋を出た。
日曜日の上野駅は人でごった返していた。
世の中にはこんなにも大勢の人がいるんだ。
東京の郊外に住む私はその人口密度に驚いた。
外国人の観光客も多い中、日本人も負けていなかった。東京都の中心部に近いだけあって、その人の多さはジュースの原液みたいに濃かった。
デート相手とはお互い名前は知っていても顔は知らないから、待ち合わせの場所はわかりやすいように、駅前にあるジャイアントパンダのモニュメント前にした。うっかり、白と黒の模様のパンダと、自分のモノトーンでまとめた服装がシンクロしていてちょっと恥ずかしかった。
私の他にも待ち合わせをしているような女の人たちが立っているのを見て、念のため、「白いニット着てます」とメッセージを送った。
「あの……ヒナちゃん?」
名前を呼ばれて振り向くと、金髪の短髪に青のパーカー姿の若い男の人が立っていた。
「桜ちゃんに紹介されて、メッセージしてた佐々木航平です。ヒナちゃんだよね?」
「あ、はい。ヒナです。航平くん、初めまして」
私はちょっと緊張しながら答えた。
「うわー、声までめちゃくちゃ可愛いな。桜ちゃんに感謝しないと」
航平くんはさらりとそう言って、少年のようにあどけないその表情を緩ませた。
秋晴れの太陽の下、青のパーカーの上でシルバーのネックレスがキラッと光った。
アユムとは正反対のカジュアル系で、少し軽そうな雰囲気だった。
「じゃあランチの店、行きましょっか。桜ちゃんのおすすめの店」
「うん。イタリアンの創作料理のお店だよね?」
「そうそう。すげー人気らしいっす」
「そうなんだ。それじゃ、急ごう」
私たちは笑顔を浮かべながらそんなやり取りをして、店へ向かった。




