↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『運だけで生き抜くダンジョンマスター』 ~召喚も配合も全部ラッキーでした~  作者: もかどら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
52/56

第52話 幸運が見つけた王の卵

 宝物庫の中央に置かれた巨大な卵を前にして、ノアたちは誰一人として動かなかった。卵は人間の背丈ほどもあり、白銀とも黒ともつかない不思議な殻に覆われている。表面には細い光の筋が走っており、それが脈打つように明滅していた。周囲に並ぶ大量の魔力結晶や古代の魔道具と比べても、その卵だけは明らかに異質だった。


「……これ、何?」


 ノアが慎重に近づく。


 ミレアはすぐに卵へ鑑定をかけた。しかし、しばらくして首を傾げる。


「種族が表示されません」


「え?」


「魔物の卵であることは間違いありません。ただ、通常の鑑定では情報が取得できないようです」


 ノアは卵の前にしゃがみ込んだ。


「ルナのときもそうだったけど……また鑑定できないの?」


 少し離れたところでルナが卵を見つめている。


 黒い子猫は警戒する様子もなく、ゆっくりと卵へ近づいていった。そして、卵の表面に鼻先を近づける。


 ぴたり。


 ルナが止まった。


 卵の光が強くなる。


「ルナ?」


 次の瞬間、卵から魔力が一気に溢れ出した。


 地下空間全体を満たすほどの膨大な魔力だった。


「下がってください!」


 セラがノアの前に立つ。


 ガルドが斧を構え、レグルも身構える。クロウとルゥは周囲を確認し、モラは慌ててノアの足元へ戻ってきた。


 だが、卵から放たれた魔力は誰かを攻撃するものではなかった。


 ただ、ルナへ向かって流れている。


 黒い子猫の身体を包み込むように魔力が集まり、その額にある星形の模様が淡く輝いた。


「……ルナと反応してる?」


 ノアが呟く。


 ミレアが慌てて魔力の流れを確認する。


「これは……認証です」


「認証?」


「はい。この卵は、ルナを敵として認識していません。むしろ……」


 ミレアが言葉を止める。


「むしろ?」


「主として認識しているように見えます」


「主……?」


 ノアが卵を見る。


 すると、卵の表面に古代文字が浮かび上がった。


『王位継承者への守護種』


 ノアは目を見開いた。


「守護種……?」


 ミレアが文字を読み取っていく。


「古代の王位継承者が選定された際、その者を守るために用意された魔物のようです」


「じゃあ、この卵から生まれるのは……」


「王位継承者を守護するための魔物です」


 ノアはルナを見る。


 黒い子猫は、卵の前に座ったままじっとしている。


「つまり……ルナの仲間?」


「おそらく」


 その瞬間、ポヨンが卵へ近づいていった。


「待って、ポヨン。今度は何もしないでね」


「ぽよ?」


 ポヨンが首を傾げる。


 ノアが警戒して見つめる中、ポヨンは卵の周りを一周した。


 そして――。


 ぴょん。


 卵に体当たりした。


「やっぱり!」


 ノアが叫ぶ。


 カチッ。


 またしても、何かが作動した。


 宝物庫の天井から光が降り注ぎ、卵を包み込む。


『守護種の孵化条件を確認』


『王位継承者との魔力接続を確認』


『必要魔力量――充足』


「……充足?」


 ミレアが周囲を見る。


 そこにあるのは、大量の魔力結晶だった。


 そして、先ほどの試練で使用された魔法陣からも魔力が流れ込んでいる。


「なるほど……」


 ミレアが呟く。


「この宝物庫そのものが、孵化に必要な魔力を保存していたんです」


「じゃあ、卵を持って帰る必要もない?」


「その必要はありません。この場所で孵化させることを前提に作られていたのでしょう」


 ノアは卵を見る。


「でも、まだ生まれないよね?」


「そうですね。通常なら――」


 その言葉を遮るように、卵に亀裂が入った。


 ピシッ。


「え?」


 ノアが固まる。


 ピシッ、ピシッ。


 亀裂が増えていく。


「ちょっと待って。今?」


 ミレアが驚く。


「魔力供給量が急激に増えています!」


「何で!?」


 全員の視線がポヨンへ向く。


 ポヨンは卵の横で、何も知らない顔をしている。


「……ポヨン?」


「ぽよ」


 卵が大きく揺れた。


 そして――。


 パァンッ!


 殻が弾けた。


 大量の光が宝物庫いっぱいに広がる。


 ノアは思わず目を閉じた。


 光が収まる。


 そこに立っていたのは、一体の小さな魔物だった。


 四本の足。


 細長い身体。


 全身を覆う鱗は銀色で、ところどころに黒い模様が入っている。頭には小さな角が二本生えており、背中にはまだ小さな翼が畳まれていた。


 ドラゴン。


 ただし、まだ幼い。


 ノアの腰ほどしかない身体で、丸い瞳をきょろきょろと動かしている。


「……ドラゴン?」


 ノアが呟いた。


 ミレアが鑑定する。


 そして、驚いた顔になった。


「種族名が表示されました」


「何だった?」


「……『星守竜』」


「星守竜?」


「はい。古代の記録にもほとんど残っていない種族です」


 ノアは目の前の幼いドラゴンを見る。


 星守竜はしばらく周囲を見回していたが、やがてルナを見つけた。


 小さな翼を震わせながら近づいていく。


 ルナも立ち上がった。


 二体が向かい合う。


 そして星守竜は、ルナの前で頭を下げた。


「……え」


 ノアが目を丸くする。


 星守竜はそのままルナの前に伏せた。


 まるで、最初から自分の主が誰なのか分かっていたかのように。


 ルナはしばらく星守竜を見つめ――。


 前足で、その頭をちょんと触った。


 星守竜が嬉しそうに喉を鳴らす。


「本当に……守護種なんだ」


 ノアは驚きながらも、どこか嬉しくなった。


 「ルナ、、」


 ルナがこれからどんな存在になっていくのかは、まだ誰にも分からない。


 そんなルナのそばに、今度は最初から仕えるために生まれた魔物が現れた。


「ミレア。この子、強いの?」


「現時点では幼体なので、戦闘能力そのものはそれほど高くありません」


「なんだ、じゃあ安心――」


「ですが」


「ですが?」


「成長限界が確認できません」


 ノアの笑顔が止まった。


「……また?」


「またです」


 ミレアが苦笑する。


「ルナと同じく、通常の鑑定基準では成長限界を測定できません」


「そういうのばっかり集まってない?」


 ノアが頭を抱える。


 その横でセラが星守竜を観察していた。


「魔力適性は非常に高いですね。飛行能力、魔力感知、結界系統への適性もあります。成長すれば、ダンジョン防衛にも――」


 セラがそこで止まった。


「……ノア様」


「何?」


「この子も、ノア様の管理対象に入りますか?」


「え?」


「でしたら、飼育環境を整える必要があります。食事量、睡眠時間、魔力摂取量、成長速度を記録します」


 ノアは嫌な予感がした。


「セラ……」


「はい?」


「ルナの守護者なのに、私が面倒を見るの?」


「当然です」


「なんで?」


「ノア様のダンジョンで生まれたからです」


「それはそうだけど……」


 ノアが困っていると、星守竜が小さく鳴いた。


「キュウ」


 そして、ノアのところまで歩いてくる。


 頭を下げる。


 ノアが恐る恐る手を伸ばすと、星守竜はその手に頬を擦りつけた。


「……可愛い」


 ノアの表情が一気に緩んだ。


 さっきまでの困惑など、もうどこかへ消えている。


「うん。仲間なら歓迎するよ」


 星守竜が嬉しそうに翼を広げる。

 その瞬間、宝物庫の奥から再び古代の声が響いた。


『王位継承者の守護種――孵化完了』


『守護対象を確認』


『新たなる王の道を記録します』


 ノアはルナを見る。

 ルナは星守竜を連れて、宝物庫の奥へ歩き出していた。


「……王様になるための仲間まで出てきちゃったか」


 ノアは小さく笑う。

 そして、そのすぐ横ではポヨンがまた卵の殻へ近づいていた。


「ポヨン?」


 ノアが嫌な予感を覚える。

 ポヨンは残った卵の殻を見つめ――。


 ぺろっ。


「……食べた」


 殻を一枚、丸ごと飲み込んだ。


 次の瞬間。


 ポヨンの身体が、いつもより一回りだけ大きく膨らんだ。


「えっ」


 ミレアが目を見開く。


「ノア様……それ、普通の卵の殻ではありません」


「じゃあ何?」


「星守竜の魔力殻です」


「……」


 ノアはポヨンを見る。


 ポヨンは満足そうに跳ねた。


 ぽよん。


「……また何か起きそう」


 ノアはそう呟きながらも、少しだけ笑っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。