第7話 真実
「では、私の話も聞いてもらえるかね?」
「ええ、いいですよ。」
「私は知っての通り、この街の警察の所長をやっている。家族は妻と子一人。ま、ここに住んでるわけじゃないけどね。」
「偉い人なんですね。」
「そう、だからこんな豪邸を持てるんだ。と言いたいところだが、実際、ここは仕事場みたいなものでね、政治家や役人との会合のために
必要だから、こうせざるを得ないんだ。」
「苦労があるんですね。」
「私は、家族のために働いた。街のために働いた。実績を上げ、上に取り入り、制度を変えて、治安を良くし、身を粉にして働いた。
しかし、私の妻は不倫をしていた。私の子供は、私の子供じゃなかったんだ。」
私は、突然の告白に、思わずギョッとした。そんなことまで、今日あった人間に言う?
警察署長が、そんなことを言っていいの?大丈夫?と思った。
「あれから私は、真実欠乏症になってしまったんだ。真実を摂取しないと、苦しくて、息が出来なくなる。」
何を言っている?何の話をしている?そんな病気聞いたことない。なにそれ。
「さて、真実とは何か?を私は考えた。」
警察署長ジンキは口に手を当て深く考え込む。
「人はウソをつく。犯罪者だけじゃない。一般市民もウソを付く。平気で。気に入らないから、ムカついたから、そういう理由で、
事件をでっちあげ、警察を利用する。それを見抜けなければ冤罪となり、我々警察が社会から攻撃される。
秩序を守られるべき側の市民が、守っている我々を陥れるのだ。」
話す声色に熱がこもってきた。手にも力が入っているのが見て取れる。怖い。
「私は悩んだ。夜眠れなくなるほどに、悩んで悩んで、結論が出たのは、妻の首を絞めた時だ。」
・・・くびをしめた?聞き間違えたのかしら。今、首を絞めたと、言ったような。
「妻は最後に、こういった。私は悪くないと。その時、すべてを理解した。そうか、人間は死ぬその瞬間、真実を口にすると。」
・・・何を言ってるんだろう。この人は。私はこの時、あまりにも常識外のことに、思考が追い付いていかなかった。
警察署長が、いきなり殺人を告白してる、そんな訳が無い。脳が何か、現実的な回答を出そうと、今聞いた情報を処理している。その間、
私の行動は完全に停止している。
「だから、君の真実を教えてくれ。」
そう言って、警察署長は、懐からナイフを取り出した。私がもらったナイフと同じものだ。
私は、まだ脳の処理が追い付かず、完全に行動が停止している。




