第11話 巨大なバケモノ
それは巨大だった。見上げるのに、胸を張らないといけないほど。大きすぎて、全貌が見えない。
見えるのは、手がある。足がある、胸より上は見えない。
鋼鉄の巨人。そうとしか言いようがないモノ。
「隊長、あれは・・・」
部下に説明を求められ、隊長が解説する。
「試製九八式搭乗操縦型外骨格デモンストレーションだ。」
「あんなの見たことありませんよなんすかあれ動くんすか。」
「2年前に試作された人型ロボットだ。軍用として開発され一定の性能水準をクリアしたんだが、
どうしても稼働時間の問題をクリアできなかったので破棄された計画だ。」
「失敗作って事っすか?」
「軍で使う兵器としてはな。稼働時間が2時間が限界じゃ無理があるが、個人が所有するには過ぎた威力がある。」
コクピットの中では、警察署長ジンキが日本の操縦桿。壁につけられた多数のスイッチをいじっている。
モニタにはリリスが写っている。
「バケモノめ。潰してくれる。」
ジンキがペダルを踏むと、ロボットが一歩踏み出す。
それだけですさまじい音が響く。地鳴りのような、地震のような振動が。
慌てて走り出す抹消部隊。周りにいた警官、騒ぎを野次馬に来た一般人が、一斉に逃げ出す。
ここにいたら巻き込まれて死ぬ。そう本能で理解したからだ。
ただ一人、リリスだけは一歩も動かない。
「ゴーレムか。久しぶりに見たな。何万年ぶりか。」
リリスは人差し指を立てる。
それを天に掲げる。
「なんだ?何の合図だ?」
ジンキはモニタを拡大する。
リリスはその指を下におろす。
すると、リリスの前に一本の線が出現する。
その線は上にぐんぐん伸びていく。
ジンキがなんだこれは、と思うよりも早く、その線から、腕が出てきた。
布に切れ込みを入れて、そこから手を出すような、何もない空間から、突然腕が生えている。
そしてもう一本手が現れる。
その二本の手が、裂け目を、無理やりに広げていく。
広がった裂け目には、真っ暗な石油のような液体が満たされていた。
そこから、頭が出てくる。あまりの超現実的な光景に、ジンキは言葉を失っている。
出てきた頭は、どんなものにも似ていないモノだった。
虫でもない。魚でもない。人でもない。
真っ赤なガラスのような半透明の一つしかない目。
スズメバチのような金と茶色のストライプ。
金の装甲。白と黒のストライプの毛皮。
そして手には真っ赤な棒の先に、銀の四角い刃。剃刀のようだ。あの四角い使い捨ての剃刀。
大きさはデモンストレーションの半分程度。この機体の全長が30mだから、15mほどか。
今、目の前で、明らかに物理法則を無視した、魔術的な、異次元的な、超自然現象を見せられたが、
もはやそれが何か?を考えている暇はない。
そんな超常的な存在が、私を殺しに来ている。
ならば考えるべきことは一つ。
今ここで、このバケモノを殺さなければ私がヤられる。
殺さなければ殺される。
このバケモノをどう殺すか。それだけを考えろ。とジンキは念じた。




