引き金
零との帰り道、零が言う。
「ねえ、黒瀬さん」
「もし、人の死を止められる力があったら、どう思う?」
俺の中で、ギクっと音がした。
慌てて天音に問う。
「何が言いたい」
「黒瀬さんは、そんな力あったら欲しいのかなーって」
また、能力のことを知られると気味悪がられる。
だから、必死に普通の回答を探した。
「お、俺は全然いいと思うぞ?」
「へぇ……」
二人の間に、沈黙が落ちた。
沈黙が続く。
その時、静寂を突き破るかのように、
「ひったくりだ!」
と中年男性の声と、目の前を通り過ぎる、それらしき人物が現れた。
俺は、なぜか反射でひったくり犯を追いかけた。
(なぜまたこんなことを……)
あと、数センチで届く距離なのに捕まえられない。
全力で走っている足にもっと力を入れて駆ける。
(あと少し……届いた!)
ひったくり犯のパーカーのフードを掴むと、ようやく止まった。
ひったくられた鞄を持ち主に返す。
急いで零のところに戻ると、零が言った。
「さっき言おうと思ったんだけど、黒瀬さんって……」
「他の人には見えないモノ見えてるよね?」
一瞬戸惑ったが、これ以上隠していても、意味は無い。
だけど、問い返すように言った。
「……なぜそう思った?」
彼女はゆっくり口を開くと、言った。
「黒瀬さんって、人のことを見ないよね」
「なんというか…わざと見ないようにしているみたいな……」
「……」
毒を食らわば皿までだと、能力のこと、トラウマのこと、能力を使って助けようとしたこと、全部を話した。
零は少し驚いた顔をしたが、決して何か侮辱するようなことは言わなかった。
そして、もう一度零が口を開く、
「ねえ」
「私の頭の上、あるんでしょ」
「色が」




