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持論の狂い

「黒瀬さん?」


「いや、何でもない」


久しぶりに口を開いた気がする。


「そう」


零はそれだけ言うと、自分の席に戻っていった。

その日の放課後、零に少し違和感を覚えながら帰宅した。

家に帰ると、


「あら、お帰り。今日早かったじゃないの」


「うん……まあね」


一つ、気になったことがあった。

零のことだ。

零の頭上には黒が浮かんでいた。

自殺を意味する色。

ただし、この色だけは厄介だ。

いつ死ぬのか、俺にも分からない。

でもそんな暗い顔やそういう素振りは見せなかった。

俺が見てきた中で、色が見えたヤツは、いつもとは違う行動を取る。

急に新しい趣味に目覚めたり、今まで小遣いを溜めてきてたやつが、急に全額出して遊びだしたり。

自分の死に気づいているかのように。

でも実際問い出すと、全員否定した。

そしていつからか、人は皆、そんな感じだと思うようになった。

でも、零だけは違った。

一瞬どこかわびしい表情を浮かべたりはするが、それ以外はいつもとは変わらなかった。

俺は、そのわびしい表情に何か引っかかった。

まるで、零は自分の中の何かを隠しているみたいに。

______________________


次の日、零の頭上の黒は、ほんの少しだけ濃くなっていた。


「おはよう。今日寒いね」


「えっ?あ、うん」


また話しかけてくる。

まあ、挨拶くらいならいいかと流した。


一時間目の後、


「黒瀬さん、数学ノート取ってなかったよね。見せてあげるから書いて」


「いや、大丈夫」


話しかけてくる零に嫌気が差しはじめてきた。


「内申点に響くって」


「俺そんなの気にしてないから」


仲良くしたって意味ないと分かっているのに、勝手に言葉が出てくる。


昼休み、また零が話す。


「今日、放課後時間ある?」


「ない」


即答した。


「そう」


零は少し笑った。

また、その笑顔が少し引っかかった。

普通の笑顔なのに、どこか無理をしているような。


「じゃあさ」


零は続けた。


「帰り道、途中まで一緒に帰らない?」


「……は?」


思わず聞き返した。


「方向、同じでしょ?」


確かに同じだ。

(なんで俺なんだ。)


「別に誰と帰ってもいいだろ」


「でも、黒瀬さんがいい」


即答だった。

その瞬間。

天音の頭上の黒が、ほんの少しだけ揺れた気がした。

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