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3.部活での出来事。







「……部活、行きたくないなぁ」


 マナミは廊下を歩きながら、そう呟いた。

 部活に行けば当然、武藤と顔を合わせることになる。

 そうなれば、体育館倉庫裏でのおぞましい出来事を思い出してしまうだろう。身から出た錆とはいえ、彼女の足取りは必然的に重くなった。


「でも、次期キャプテンが目の前なんだから。頑張らないと……!」


 いつもなら翔に荷物を持たせて歩くが、そんな余裕すらない。

 マナミは深く息を吸い込んでから、思い切り吐き出した。そして、部室の扉を開く。努めて普段と変わりないように、先輩と後輩、両方ににこやかに挨拶した。


「今日もよろしくお願いします!」


 ――だが、すぐに異変に気付く。



「え……?」



 部室の空気が重い。

 先に来ていた部員がみな、マナミを睨んでいた。


「あの、どうしたんですか……?」


 あまりに異質な空気に、彼女の背筋は凍る。

 嫌な予感がした。


「行きましょう、みんな」

「え、あの! キャプテン!?」


 そんな直感があった瞬間に、キャプテンを務める女子がそう言った。

 マナミの声は届かない。誰にも、他の誰にも、彼女の声は届かなかった。全員がマナミの言葉を無視して、次々に部室の外へと出ていく。



「どういう、こと……?」



 ただ一人取り残されたマナミ。

 しかし、さらなる恐怖が彼女を襲うのだった。





 ――ダブルスの練習。

 前衛として身構えていた時だった。

 後方でサーブを打つのは後輩の一年生。将来有望とされている彼女は、入部当初からマナミとペアを組んでいる相棒だった。

 だから、マナミも少し気を抜いていた。

 その時だ。


「きゃっ……!?」


 顔のすぐ横を、後方からボールが抜けていったのは。


「え、なに。いまの……?」


 このくらいなら、ダブルスの練習をしていればたまにあること。

 しかし、この瞬間のマナミには予感があった。自分はいま、後方から狙われていたのではないかと。それでも、何も訴えることはできない。

 偶然に、偶然が重なっているだけだ。

 彼女はそう、必死に自分に言い聞かせた――その直後だった。



「――――っ!?」



 ――ゴツン、と。

 今度は狙い過たず、ボールが後頭部に直撃した。

 軽い脳震盪を起こしたのだろう。マナミはその場にへたり込む。



「うぅ……!」



 これは、いくらなんでもダメだ。

 相手は後輩なのだから、自分が指導しなくてはならない。


「ちょっと、アンタ――」


 そう、思って声を上げた。だが……。



「――――え?」



 息を呑んだ。

 なぜなら、そこには彼女の知る後輩とは異なる誰かが立っていたのだから。

 いいや、正確に言えば。そこにいるのは、間違いなく後輩だった。だがしかし、自分を見る目や、態度がまるで別人。

 感情のこもらない瞳でマナミを見る後輩。

 それに違和感を覚え、彼女は周囲を見回した。すると――。



「あ…………」



 ――震えた声が漏れた。

 誰もが、同じ目をしていたから。

 誰もが、マナミのことをゴミでも見るかのような目で見ていたから。


「なに、これ……」



 六月の湿った空気が、足元に絡みつく。

 自然と、マナミの呼吸は荒くなっていくのだった。



◆◇◆



「くくく……」


 そんなマナミの様子を見て、笑う人物がいた。

 その人物は木陰にたたずんで、ただただ愉悦に浸っている。



「お前が悪いんだァ……」



 そして、ねっとりとした口調でこう言うのだ。




「私のモノにならない、マナミがなァ……」――と。



 


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「完全趣味作のヒューマンドラマ」新作です。こちらも、よろしくお願い致します。
― 新着の感想 ―
[一言] またあの武藤か……。 マナミともども成敗さればよかろう。 セーラにまで危害が及んだらまずいし。
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