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1.少し時を戻して。







 【ラブコメ指数】について分かったのは、これが自分に対する相手の恋愛感情――ないしは、恋愛発展の可能性であること。というのも、先ほどの女子転校生はまるで漫画のように、俺の隣の席にやってきたからだ。


「あの、これからよろしく……お願いします!」

「う、うん。よろしくね」


 俺に満面の笑みで語りかける転校生――御剣セーラ。

 金色の滑らかな髪に小さな髪飾りを付け、吸い込まれるような蒼の瞳をしている。制服は他の生徒とは違い、どこか異国情緒あふれるものであった。

 すらりとした体躯の、小柄で可愛い花のような美少女だ。


「あの、それと。今朝はごめんなさい!」

「こっちこそ、ごめんね。急いでたから……」

「わ、わたしも道に迷ってしまって……えへへ」


 恥ずかしそうに笑うセーラ。

 そんな彼女に表示されている数値を、眼鏡を外して確認してみた。


【ラブコメ指数――520】


 やはり、上昇している。

 俺はそれを見て、自分の仮説にさらなる自信を得た。


「やっぱり、おかしかったんだ。――今までの方が」


 窓の外に目を向ける。

 春の日差し降り注ぐ中に、小鳥が舞っていた。

 俺はそんな小鳥に自分を重ねて、内心で強くガッツポーズをする。



「マナミはもう関係ない。俺は、自由なんだ」





 ――休み時間。

 さて、自由時間になるとセーラの周囲には人だかりができた。

 特に男子生徒が多かったが、やはり皆、美少女転校生という存在には興味津々なのだろう。隣の席の俺でさえそれに混ざることができなかった。


「でも、指数は変動なし――か」


 窓際の壁に背を預けながら、俺はセーラに表示された指数を確認する。

 見つめていると、にこやかに応対している彼女が、ちらりとこちらに手を振った。不意にそんな愛らしい姿を見せられ、思わず頬が緩む。


「あの、駒田くん……?」

「ん、キミは……」


 そうしていると、声をかけてくる女生徒がいた。

 長い黒髪を三つ編みにして、眼鏡をかけた女の子だ。たしか先ほど教室に入った時に、ラブコメ指数が270を示していたはず。

 名前はたしか、坂上このみさん。


「坂上さん、だったよね」

「そ、そうです! よかった、名前覚えてもらえてた……」


 モジモジとしながら、彼女は頬を赤らめる。

 それだけで、何やらラブコメ指数が上昇していた。


「その、今朝は大変でしたね」

「マナミのこと? そうだなぁ。でも、今日で終わりだよ」

「あ、やっぱり……。えっと、駒田くん――」


 俺の答えが契機となったのか、さらにラブコメ指数は上昇。

 坂上さんは、深呼吸一つ。何かを口にしようとした。



「授業始めるぞー! 席につけー!」



 だが、そのタイミングで。

 次の授業の担当である武藤先生が、教室に入ってきた。


「あ、あはは。それじゃ、またね!」

「うん、また」



 ざわつくクラスの中。

 俺と坂上さんは言葉を交わして、それぞれの席につくのだった。


 


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「完全趣味作のヒューマンドラマ」新作です。こちらも、よろしくお願い致します。
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