action2.「台本の外側」
この物語は、「あらかじめ決められた世界」と「そこから外れた存在」の違和感をテーマにしています。
登場人物たちはそれぞれ“役割”を持ち、物語としての流れ(いわゆるシナリオ)に従って行動していますが、その中に一人だけ「どこにも定義されていない存在」が混ざることで、世界そのものの前提が揺らぎ始めます。
これは勇者の物語でも、魔王の物語でもありません。 “物語そのものに気づいてしまった世界”の話です
森の静寂が戻ったあと、一番最初に動いたのは少女だった。
「……ダメだ、これ」
小さく呟いて、剣を握り直す。その声は焦りというより、“台本が狂った時の確認作業”みたいだった。
黒いローブの男――中ボスは、俺から視線を外さないまま言う。
「本来ならここで俺が一撃食らって撤退、だ。そこから“覚醒イベント”に繋がる」 「でもお前がいるせいで、そのフラグが立たない」
「フラグって何だよ」
俺の言葉に、男はほんの少しだけ困ったように笑った。
「そういう反応する時点で、やっぱりお前は“異物”だな」
その瞬間、森の奥から風が吹いた。
いや、風じゃない。 “ページがめくられる音”みたいなものだった。
木々が一斉に揺れ、空の色がわずかにずれる。 世界が一段階だけ、軽くなる。
少女が目を見開いた。
「まずい……シナリオが再編されてる」
「再編?」
俺が聞き返すと、門番の声が遠くから響いた。
「おい!戻れ!今の森、イベント未確定領域に入った!」
未確定。
その単語が、妙に嫌な響きを持っていた。
中ボスが一歩下がる。
「ほらな。お前がいると“役割”が崩れる」 「俺は本来ここで死ぬか撤退するだけの存在だ。なのに今、“選択肢”が増えてる」
「選択肢って……ゲームかよ」
その瞬間、少女が叫んだ。
「違う!ゲームじゃない!私たちは――」
言いかけて、彼女は言葉を止めた。
まるで“それ以上言ってはいけないセリフ”だったみたいに。
沈黙。
森の奥で、何かが“起動”する音がした。
ゴゴゴ、と地面が鳴る。 黒い霧が、一本の線のように空へ伸びていく。
中ボスが舌打ちした。
「最悪だ……“未定義イベント”が始まる」
「それ何だよ!」
俺の叫びに、誰も答えない。
ただ一つだけ確かなのは―― さっきまで“決まっていたはずの未来”が、今、音を立てて崩れているということだった。
そしてその中心にいるのが、俺だということも。
霧の中から、声がした。
機械みたいで、人間みたいで、どこか楽しそうな声。
『……観測対象を確認しました』
『シナリオ外存在、識別コード未登録』
少女が一歩下がる。
中ボスが剣を構え直す。
門番の声が遠くで震えた。
「おい……それ、“運営側”の声じゃねぇか……」
俺だけが、まだ理解していない。
ただ一つだけわかるのは――
この世界は、俺を“登場人物として扱っていない”。
霧が割れる。
そこに現れたのは、誰でもなかった。
「ようこそ」
声だけが、はっきりと響いた。
「台本の外側へ」
少しだけですが見てくれた方がいたので!
続きを書いていこうと思います!
ぜひ暖かい目で見ていってくださいね!




