action.3 「台本の外側」
いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。
この作品を読んでくださる皆様のおかげで、こうして続きを書き続けることができています。
今回は物語が少しずつ大きく動き始める回です。
主人公だけでなく、世界そのものにも違和感が見え始めます。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは、本編をお楽しみください。
「ようこそ」
その声は、森全体から響いていた。
男なのか女なのかも分からない。
近くで囁かれているようでもあり、世界そのものが喋っているようでもある。
「台本の外側へ」
霧が左右へ割れていく。
その奥に立っていたのは、人間ではなかった。
輪郭だけが人の形をしている。
白いスーツのような服を着ているようにも見えるが、よく見ると全身が文字でできていた。
無数の文字列が流れ続け、その姿を形作っている。
顔もある。
だが、目も口も鼻も存在しない。
あるのは、真っ白な仮面だけだった。
『識別完了』
『観測対象──異物』
『名称不明』
『世界外存在の可能性、九八・七%』
俺は訳も分からず一歩下がった。
「……誰だ、お前。」
返事はない。
代わりに少女が震える声で呟く。
「観測者……。」
黒いローブの男も苦い顔をする。
「本当にいたのか。」
「都市伝説だと思ってた。」
俺だけが話についていけない。
「だから何なんだよ、そいつ。」
少女は唇を噛み締めた。
「この世界を……管理してる存在。」
その一言で空気が凍った。
管理。
その言葉は、妙に現実味があった。
俺は思わず笑ってしまう。
「はは……管理って何だよ。」
「この世界は誰かが作ったゲームだって言いたいのか?」
「違う!」
少女は即座に否定した。
「ゲームじゃない。」
「でも……。」
言葉が詰まる。
代わりに黒ローブの男が肩をすくめた。
「似たようなもんだ。」
「世界には"物語"がある。」
「主人公がいて、敵がいて、仲間がいて、結末がある。」
「俺たちは、その役を演じるために生まれた。」
俺は眉をひそめる。
「役?」
「そうだ。」
男は笑う。
「俺は中ボス。」
「門番は門番。」
「こいつは主人公。」
少女を見る。
少女は悔しそうに目を伏せた。
「……そう。」
「私は勇者になる予定だった。」
予定。
その一言に寒気が走る。
「じゃあ俺は?」
誰も答えない。
静寂だけが流れた。
その時だった。
『検索開始』
白い存在の周囲に無数の光が浮かぶ。
本。
紙。
羽。
剣。
炎。
人。
景色。
まるで世界中の情報が高速で流れているようだった。
『一致データなし』
『異物判定を維持』
『修正開始』
少女の顔色が変わる。
「逃げて!!」
直後。
世界が止まった。
風も。
木々も。
鳥の鳴き声も。
全部。
止まった。
動いているのは俺だけだった。
「……何だ?」
いや。
違う。
俺の前にいる白い存在だけは動いている。
『世界の修正を開始します』
『異物を削除します』
その瞬間。
胸に激痛が走った。
「ぐっ……!」
身体が透けていく。
腕が。
足が。
少しずつ消えている。
「何だこれ!」
『存在情報を削除中』
『抵抗は無意味です』
俺は必死に腕を見る。
指先が砂のように崩れていく。
「ふざけるな!!」
叫んでも止まらない。
少女は動けない。
門番も。
黒ローブの男も。
時間が止められている。
助けなど来ない。
「こんな終わり方……!」
その時だった。
胸の奥から声がした。
――諦めるな。
聞き覚えのない声。
老人にも。
子どもにも。
女にも聞こえる。
いくつもの声が重なっている。
『異常検知』
白い存在が初めて反応を示した。
『未知の権限を確認』
俺の胸が淡く光る。
ポケットから、一枚の紙切れが落ちた。
真っ白だった紙に文字が浮かび始める。
【登場人物追加】
その一文だけが書かれていた。
「何だ……これ。」
紙は勝手に燃え始める。
灰になった瞬間。
止まっていた時間が動き出した。
ドォン!!
凄まじい衝撃と共に白い存在が吹き飛ぶ。
「なっ……!」
少女が目を見開く。
黒ローブの男も言葉を失う。
白い存在の肩が砕けていた。
『修正……失敗』
『あり得ない』
『脚本権限の上書きを確認』
脚本権限。
俺には意味が分からない。
だが少女だけは青ざめていた。
「嘘……。」
「そんなこと……。」
「脚本を書き換えた……?」
俺は困惑する。
「俺が?」
「何もしてないぞ!」
「普通は出来ない!」
少女は叫ぶ。
「物語を書き換えられるのは観測者だけ!」
「登場人物には絶対に不可能!」
黒ローブの男が乾いた笑いを漏らす。
「だから異物なんだよ。」
「お前だけは……役じゃない。」
その瞬間。
白い存在の背後に巨大な光の輪が現れた。
『緊急権限起動』
『管理者権限、承認』
空が割れる。
裂け目の向こうには、星空ではなく無数の文字列が流れていた。
まるで世界そのものが一冊の本になっているような光景。
そこから、さらに三つの人影がゆっくりと降りてくる。
全員が白い仮面をつけていた。
『観測者、第七班到着』
『異物の危険度を更新』
『危険度──最上位』
『対象を回収します』
四人の観測者が同時に俺へ視線を向ける。
その瞬間、全身が凍りつくような圧力に襲われた。
「おい……。」
黒ローブの男が苦笑する。
「中ボスの俺ですら、あいつら四人相手は無理だ。」
少女は震えながら剣を握った。
「でも……。」
「ここであなたを渡したら、この世界は終わる。」
俺は二人を見た。
主人公になるはずだった少女。
倒される運命だった中ボス。
本来なら敵同士の二人が、今は同じ方向を見ている。
その理由は一つ。
俺が現れたせいで、この世界はもう"決められた物語"ではなくなってしまったからだ。
そして観測者たちは、その物語を元に戻そうとしている。
白い仮面が静かに告げる。
『最終確認』
『異物・排除を開始します』
四人が同時に一歩を踏み出した。
その瞬間――森の空気そのものが悲鳴を上げた。
今この作品と合わせて2つ書いているのですが
たまに2つがごっちゃになっちゃいます笑
最近私事ですがキウイを皮ごと食べれると知り
あの産毛?をピーラーで上手く剃ってあげる事に楽しさを感じています^^
なんか可愛いんですよね。キウイ。




