先輩の場合
話の区切りがついたところで時計を見たサーシャは立ち上がった。
「エリスを布団に放り込んできます。」
見ると結構な時間が立っていた。
「サーシャ、私がやるからここに居て。」
「でも・・・」
「クレスに会いたいから。」
そういうことならとサーシャは座り、ポリーは出ていった。
「大変ね。」
王女の言葉にアリサが苦笑い。
「いつものことですから。
そう言えば私が居なかった1年時はどうしていたんです?」
「最初は専門外の授業があって、そちらを優先していたからね。
後半研究室を貰ってからは私が面倒を見ていた。」
今も食事を取らせるべくお昼や夕飯を届けている。
「なるほど。」
王女とサーシャが納得しているとアリサが言った。
「まあ、あの二人は言えば従うから楽よ。
集中しすぎて時間の感覚が無くなっているだけで時計を指せば納得してくれるから。」
「食事や休息を取らないとパフォーマンスが落ちるの分かっているし。
着替えさせて布団に放り込んだら大体30秒で寝落ちしてます。」
ぎりぎりまで頭を酷使しているのだろう。
「お風呂はどうしているの?」
「朝風呂派で起きたら自分でお風呂に入ってます。
トレイシーさんも同じみたい。」
そういう生活なので学問に没頭するあまり無精する研究馬鹿と違って身だしなみもきっちりしていて清潔感を損ねるようなことはない。
少ししてポリーが戻ってきた。
いつも通りエリスは大人しく寝たらしい。
「そう言えばカンテラとはどうなの?」
アリサからエリスが先輩を紹介した話を聞いている王女は興味津々である。
「止めた方が良いと思います。」
答えたのはポリーだった。
「理由を聞いても?」
「あの人、エリス達と同類ですから。」
「どういうこと?」
「誰かが面倒見ないと生きていけない人種ということね。」
「はい。
エリスとトレイシーさんは私達が何か言えば余程のことがない限り従います。
でもあの人は違います。」
「どういう風に?」
「フィルやあの子に対しですね。
聖獣や神獣が珍しいのは理解しますが、嫌がられるまで付きまとうのはどうかと。」
「引き離すのに苦労したからね。相手の都合より自分の好奇心が優先だから。」
その場に同席していたアリサが言った。
「対価を用意して交渉する姿勢はまあ評価出来るんですけどね。」
人手の足りない辺境で見張りが必要な人は要らないとポリーは言う。
「たまに来るお客さんなら良いんですけどね。」
下手に実家が高位貴族だから大変だとアリサが言う。
「まあ先輩はスティーブンさんと違ってサーシャにはない強みはあるけど癖が強すぎます。」
「サーシャはどう?」
王女はサーシャに振った。
「うーーん、話していて楽しい人ではあるけど、辺境には辺境の禁忌があります。
それをちゃんと理解出来るかというと不安がありますね。」
「ポリーの言い分に同意?」
「はい」とサーシャは頷いた。
「そう、なら私が話しても良いかしら?」
「アリサ?」
「あの目利きとセンス、それに人脈、使えそうだから。」
「えーと?」
「ああいうタイプならこちらの商売の邪魔はしないでしょうし。」
「アリサさん・・・」
反応の困るポリーの袖をサーシャが引いた。
「あのね、アリサってリラダン令息につき纏われて苦労していたの。」
「あの人に?」
「そう、彼、自分が当主になってアリサや商会を利用しようとしていたから。
でもアリサにその気が無くてずっと相手にせず流していたのよね。」
「婿入りする立場なのに図々しい・・・」
「侯爵令息で王太子の側近候補という立場に自信と高いプライド持っていたから婿入りして自分が子爵になる気だったから。
結婚してもマイルズ家の当主はアリサだって、やっと理解して諦めてくれたんだよね。」
「成程、先輩は侯爵家の嫡男だったのに研究がしたいからって降りた人だもんね。」
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アリサは相手がこっちの商売を邪魔しないで予算の範囲内で研究するなら別に構わないというスタンスです。
暴走しない様に誰か人を付けるでしょうけど。




