14_先輩
ケルヌに入国して3日目、明日やっと最初の目的地である王都に到着する。
途中の領主への挨拶を飛ばせば今日の内には王都入りしていただろうが。
一行にとって救いなのは王都に近付くほど出てくる料理の味が良くなっていること。
アリサの商会の啓蒙のお陰だろう。
領主の歓待を受けた後、王女の部屋に主だったものが集まった。
「明日ですが、王都に入ったら二手に分かれます。」
侍女よりメンバー分けのリストが手渡される。
「私に付き添って王城に入る者、マイルズ家の手配した宿屋に入る者。
宿屋の方は滞在期間中貸切で、先行が既に滞在しています。」
リストを見ていたエリスは口を開いた。
「先輩、見掛けないと思ったら既に現地入りしていたんですね。」
「先輩?ああ、あの動植物を研究しているって言う人!」
「大人しくしているとは思えないけど大丈夫かな。何か騒ぎを起こしてないかな?」
その言葉に団長は言う。
「あ奴の首根っこを押さえられるものを傍に付けている。」
「ま、迷惑を掛けたら羽化の儀に参加させないと言ってあるから少しは大人しくしているでしょう。」
王女の言葉でこの件は終わりになった。
与えられた部屋に戻ったサーシャはボヤいた。
「私もそっちが良かった!」
「サーシャは王女の護衛でしょ諦めなさい。」
王女に付き添い王城入りするのは団長と文官の代表、執事に専属侍女数名にサーシャ。
10名に満たない人員である。
ケルヌ側からは王城にエリスとトレイシーの部屋を用意していた。
が・・・引き抜きが予想されている上に、二人共社交を好む性格をしていない。
特待クラスで作法の鍛錬を積んでいるから目立たないが学園の夏冬のパーティーでも最低限しか会話をしない。
大体アリサが傍にいて近寄る子息令嬢達を遇い、2人は笑顔を浮かべて黙っている。
ダンスも婚約者として最初に踊ると後は全て断っている。
ついでに最低限の義務を果たすと早々に退場してしまう。
2人と交流を持ちたい者達には手の届かぬ高嶺の花である。
実際にサーシャを通じて交流のあるクレスやポリーには付き合いやすく親しみやすい人柄なのだが。
「本来私達も王城だったのですが・・・ごめんなさい。」
「エリスが謝ることじゃないでしょ。ここならケルヌの人が来ても追い払えるけど王城じゃ難しいだろうし。」
こっちにいるなら私が守ってあげるからとポリーが笑う。
お願いしますと頭を下げるエリス。
同じ頃似たような会話をしてトレイシーがクレスに頭を下げていた。
「あ、そうそうさっき団長が言っていたけど、先輩を虫除けに使え!って。」
「そう言えば先輩って侯爵家の出身だったから大抵の相手は追い払えるか。」
「へえ、この手のやり取りできるんだ。」
「うん、前に王家の研究所に行った時、絡んできた別の部署の同僚を笑顔で追い払っていたのを見たわ。」
「何か相手のプライド思いっきり傷付けてそう。」
「うん、最後の方、泣きそうな顔していた。」
覚えてろーなんて捨て台詞を残して去っていく後ろ姿をエリスとトレイシーは見ている。
「そうなんだ。」
「先輩、その人が私達に因縁つけて無理矢理自分の研究に協力させようとしていたの知っていたから庇ってくれたのよね。」
「へえー。」
「私達低位貴族や平民出身は何かと横暴な高位貴族に搾取されやすいからね。
私達の他に何人もの研究者が彼に庇われ、守られているわ。
それで先輩、変わり者だけど研究所では人気があるの。」
「そうなの?会うのが楽しみだわ。」
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