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04_勝気ルートのヒロイン

「そんな気がしていたんだよね。」

家庭教師からこの国の歴史を習っていて気分が悪くなったエリスは何とか授業を終えると自室に引っ込んだ。

弛緩した表情でベットに横になり天井を見上げる。

自分では無い知識や記憶を子供の頃から感じていたが、今日初めて繋がった気がする。

記憶の中の小説では記憶の統合に高熱を出して何日も掛かったなんていうのがあるが自分の場合はそうでない。

ずっと小さい頃からそれの存在に気が付いていたからか多少気分が悪くなった程度で済んでいる。

そうで無ければ家庭教師に医者を呼ばれ面倒なことになっていただろう。


「『大樹の元に』だったかな。」

自分は勝気ルートのヒロイン、エリス

足りないステータスは体力と教養。特に体力。

仕事をするには体力勝負、大きな仕事をするには体力が無いと始まらないと前世はランニングを趣味にしていた。

お陰で記憶が戻る前から毎日庭を散歩している。

付き添いがあるなら街中を好奇心の赴くままに歩き回っていた。

お陰で8歳の文系貴族令嬢としては体力のある方だろう。

仕事をするなら見栄えも大事ということで身なりに気を付け会話も気を使っていた。

結果、ゲーム内で他のヒロインから見た頭でっかちで本の虫、口は達者だけど実力(体力)が伴わない令嬢ではなくなっている。

このゲームの面白いところは余所から見たヒロインの姿がわかるところだ。

最速で王太子ルートを攻略しようと思ったらステータスの成長率がダントツの普通ルートを周回する方が良い。

初期ステータスの差なんてアッと言う間に追い抜いてしまう。

このゲームのシステムではエンディング後引き継げるステータスは、開始時点ではなくそのルートの初期ステータスを引いて2で割った値だ。

どの初期ステータス値も低い普通ルートは成長した分を無駄にすることなく次に回すことが出来る。

昔遊んだシミュレーションRPGの村人の様なものだ。出だしは悪いが育てれば大成する。

しかし・・・その普通ルートの主人公を別ルートの主人公から見た場合・・・お友達になりたいかと言うととてもそうは思えない。

周回してステータスが上がった状態ならまだしも初期ステータスから始まった場合、修行し直せと言いたくなる位態度が悪い。

ゲームでは教養ステータスが上がっても言葉の選択肢は変わらないので選択肢によっては傍から見たら大丈夫かこいつと思うものがある。

あんな言葉で良く王太子ルートを目指せるものだと思う。

まあ王太子ルートに入ったらそれに合わせた選択肢しか出てこなくなるので粗は目立たなくなるのだが。

現実で普通ルートのヒロインが王太子ルートを目指す場合、どこかの高位貴族の養子になって自分自身の立場を上げないと難しいだろう。


翻って勝気ルートだが普通ルートには無い大きなメリットがある。

内気ルートも同じだが初級ヒーローは幼馴染なのだ。

その気になれば学園入学前に婚約というのも可能だろう。

勝気ルートの初級ヒーローはヒロインと同じで本の虫、体力無し。

本より重たいものは持てないと言う根性無し。

さらに本が全てで身なりや態度に気を使わない。

そんなみっともない男の子だがゲームのエンディングではイケメンヒーローになっている。

だったら今から協力して磨き上げれば学園入学前には自分好みのヒーローにすることも出来るだろう。


対する王太子やその側近は現実として結婚相手とするには面倒臭すぎる。

子爵家では王太子は勿論、勝気、内気の中級ヒーローを狙うのも身分的にきつい。

普通ルートの中級ヒーローは狙えないことも無いが騎士として危険に向き合う相手は選びたくない。

勿論身分を上げるために高位貴族の養子になるという手はある。

が、仲が良くて大好きな両親、兄弟とは別れたくない。

それならば実際に婚約・結婚は横に置いて一緒に努力して良い男、良い女になった方が建設的だ。

「明日会いに行ってみようかな。まずは手紙を書こう。」

そう呟いてエリスは起き上がり、机に向かった。


それから1年、エリスは無事トレイシーと一緒に勉強するようになった。

お互い実家が専門とする分野が違うので一人で教わるよりもより深い知識が身に付く。

二人の勉強会には双方の兄弟姉妹が加わり賑やかに議論が行われている。

体力作りと知識の幅を広げる為と称して頻繁にトレイシーを外に連れ出した結果、体力がついて姿勢も良くなり身なりも言葉遣いも改善された。

今ではお茶会で二人共羨望の視線を集めるようになっている。

ただ、二人共本の虫で馬鹿が嫌いなのは治っていない為、まともに会話できるのは自分より上の世代となってしまった。

そんなある日、出席したお茶会で王子の10歳の誕生パーティが行われたという話を聞いた。

「そっか、ついに王子様も婚約か。」

エリスの言葉に兄は首を横に振った。

「それが相手が体調不良で出席できなかったんで婚約していないんだ。」

「ええっどういうこと?」

3人で顔を見合わせる。

ここはゲームの世界と思っていたけれど何かが違う。

いや変わろうとしている。

そんな気がした。

閲覧、有難うございます。

ゲームのままだったら勝ち気ヒロインは誕生パーティーは勿論のこと、こういう話を聞けるお茶会に参加できないので知る機会はありません。

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