15_編入試験結果
夏休み前の最後の授業の日、サーシャは特待クラスへの編入試験の結果を伝えられた。
「本来ならば個別に伝えるべき内容なのですが。」
淑女科1年の担任は残念そうな口調でサーシャの落選を告げる。
ここで終わりならサーシャは担任を恨んだだろう。
続けてサーシャのどこが駄目で落ちたのかはっきりと教えてくれた。
実際に出来ていない部分だったので仕方ないと思う。
次にここさえきっちり出来ていれば合格できたと言われて悔しいものの気持ちはかなり浮上した。
さらに担任はサーシャの優れている点をこれでもかと話し始めた。
「サーシャさんは体幹がしっかりしています。
なのでどんな動きでもぶれずにとても美しいです。」
あれこれ例を挙げて説明するのでサーシャは恥ずかしくなって俯いてしまう。
担任の言葉は続く。
「特にこの動きは特待クラスの方も苦手にしている人が多いです。」
そう言って試験での動きを再現する。
「これを完璧に出来るのはイーダ・ド・シュトルム様、・・・」
二人ほど名前を挙げて、続けて
「アリサ・マイルズ嬢は十分合格ラインですがもう少し素早く動ければ完璧・・・」
(ボアから聞いてはいたけど、アリサは特待クラスにいたのか。)
道理で会わない訳だとサーシャは思う。
「エリス・ファティマ嬢は中々出来なくて最近やっと合格しました。」
(エリスも特待クラスにいたんだ!)
担任は特待クラスでも出来ない人はいて努力して出来るようになっている。
皆も諦めずに精進するようにと言ってホームルームを終えた。
「サーシャ様、残念でしたね。」
そう言ってクラスメートたちが声を掛けてくる。
「でも後期もご一緒出来て私は嬉しいですわ。」
彼女たちの言葉にサーシャを嘲る響きは無く、心から残念そうに、そして後期も一緒に学べることを喜んでいることが伝わってきて嬉しかった。
「聞いた話なんですけれど、今回の編入試験で合格したのは騎士科の一名だけなんですって。」
「まあ。どなたかご存じですの?」
「スティーブン・デ・バルバ様。」
「なるほど、それは納得ですわ!」
華やぐ声にサーシャはゲームのシナリオを思いだす。
彼がこのタイミングで特待クラスに移るのはシナリオ通りだ。
時期がずれるケースがあるのはヒロインとのルート確定イベントが起こって、なおかつヒロインが編入試験に落ちた場合である。
今のサーシャは彼と殆ど交流できていない。
一緒に移れなかったのは残念だが仕方がない。
そう思ってサーシャは寮に戻っていった。
サーシャは今日はアルバイトを入れていないので部屋でボーとしている。
エリスもアリサもこの学園にいる。
会えなかったのは既に特待クラスにいるから。
そこでサーシャは考える。
二人共初期ステータスなら文官科、淑女科であって特待クラスではない。
そして自分も騎士科ではなく淑女科
と言うことは自分と同じ前世持ち!?あるいは人生2周目?
「会いたいな。」
そうは思うものの二人は特待クラスで接点は無い。
何とか会う手段はないかとサーシャは考え始めた。
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「スティーブン、編入おめでとう!」
「全く、一体何をやっているんだよ。殿下の護衛が一般クラスってあり得ないだろ。」
素直にお祝いを述べるアーサーに対し、ボリスは悪態をつく。
ピエールとファビアンはにこにこと笑って何も言わない。
「済まん」
訓練が忙しく入学試験を甘く見た結果、学力テストの点数が足らずに特待クラスに入れなかったのはスティーブンのミスである。
結果を見た父親に散々怒られたのは皆知っている。
この3か月ファビアンの協力の元必死に勉強して学力を上げた。
編入試験後ばったり倒れて翌日寝過ごし寮長に心配されたのも今となっては良い思い出だ。
※特待クラスではないのでスティーブンだけ高位貴族寮だった。
「これでやっとこっちに引っ越せるな。」
「ああ。編入試験の合格は5年振りらしいよ。」
「そっか・・・そう言えば同じ1年の女子で惜しい子がいたって話を聞いたな。」
「へえ、女子では珍しいね。前の合格って何時だっけ。」
「ここ20年は居ないって聞いたな。」
「何でも男爵家の出身で入学試験は教養が足りなくて特待クラスには入れなかったらしい。」
「それで淑女科・・・頑張っているね。」
淑女科の生徒は高位貴族の令嬢が殆どである。
子爵でも珍しいと言われるところに男爵・・・平民でないだけマシかもしれないが・・・
思わぬところで中級ヒーロー達の話題になったことをサーシャが知るのは後期にはいってからである。
閲覧、有難うございます。
ここでやっとサーシャは二人が転生者ではないかと言う可能性に気が付きました。
編入試験の結果で中級ヒーロー達の注目を集めましたが
今のところサーシャは面白い女枠です。
アーサーはゲームでは外国留学中なのでヒーローではありません。




