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ガールズ・リーグ ~女子プロ野球青春物語  作者: mf
第10話 復活への道
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3 新助っ人

 一週間後。楓の瑞香への密着指導は依然続いていた。


「随分、うまくなったな」


 スターレイカーズ練習用グラウンドに、茜を連れて現れた宮田は、朋美の外野ノックを危なげなく捕球している瑞香を見て、感心した。


「楓たちのおかげよ」

 千鶴が言った。「捕球だけじゃなくて、野球ルールとか、状況判断までしっかり教えてるわ。プロ並みとはいかないけど、守備だけなら使える目処は立ったわね」


「そいつはよかった」


「厄介者を連れてきたわりには他人事ね。正直、不満もあるわ。協調性がないから、楓と朋美以外の選手との折り合いは悪いし、態度は反抗的だし。一体、どういう子なの、あの子は?」


「根性あると思わないか?」


「え?」


「野球経験がまるでないのに、死にものぐるいで野球選手になろうとしている。全ては今の生活から抜け出すためだ」


「ハングリーさを買ってるわけ?」


「どうせ今シーズンかぎり監督業だ。やるなら、面白いメンバーを集めないとな」


「で、彼女は?」

 千鶴が茜を見て、言った。


「廣橋茜だ。今日からうちのチームの選手だ」


「嘘、だって、アローズの選手でしょ。よく出したわね」


「彼女は死球がトラウマで、打撃が出来なくなってしまった。だから、守備要員として無償で獲った」


「まぁ、確かに守備は期待できるけど……無償でくれたってことは、全く打撃に期待できないってことよね」

 千鶴が溜息をついた。


「廣橋です。よろしく」

 茜はお辞儀をした。


「よろしく」


「そういえば、俺がいない間、チームは最悪だったようだな」


「四試合、惨敗よ。美登里の怒りもバースト・モードに入ってるわ。監督が戻ってきた今日あたり、何かあるかも」


「おいおい、恐ろしいこと言うなよ」


 その時、グラウンドの外に一台の黒いリムジンが止まった。


「ほうら、お嬢様がお見えよ」


 リムジンの運転席から先に運転手が降り、後部座席のドアを開ける。


 そして、紺のスーツ姿の朝野美登里が現れた。


 美登里はベンチの宮田の姿を見つけると、恐い形相に変わり、猛然とグラウンドに突入してきた。


「監督!」

 美登里は宮田の前に息を弾ませながら、言った。


「おう、久しぶりだな」

 宮田は美登里の勢いにやや圧倒されながらも、挨拶する。


「視察から戻られたのなら、真っ先にオーナーのわたくしに報告するのが義務ではなくて」


「球団事務所には連絡したぞ」


「わ・た・く・し・にです」

 美登里は強調して言った。


「悪かったな。今日は私服のようだが、どうしたんだ?」


「お話しする前に選手全員を集めます。横山さん、選手を集めて」


「はいはい」

 千鶴はベンチを出て、グラウンドで練習中の選手を笛を鳴らして、呼び集めた。


 ベンチに選手全員が集合する。


「遅いですわ。プロなら、三分で集まりなさい」

 美登里は文句を言った。


「それでは、全員揃ったところで、今日はスター・レイカーズのオーナーとして話があります」

 美登里は選手たちを見回した。


「この四試合、わたくしは監督より指揮を預かり、チームの実力を見せていただきました。正直、失望しました。打てず、守れず、走れずで四試合連続、二桁失点、打線も四試合で取った得点はたった七点。あなたたち、プロとして恥ずかしくないんですの?わたくしはチームを預かるオーナーとして情けなくなりましたわ」


「四番打者が打てなくてはね……」

 千鶴がボソッと言った。


「横山さん、言いたいことがあるなら、はっきり、おっしゃったら?」


「確かにうちのチームは最悪だけど、その中にあんたもいるってことを忘れないでよね。特にその五試合はあんたが四番を務めたのよ。オーナーとしてより選手として責任を感じたら?」


「言いますわね。それなら、こちらからも言わせてもらうけど、あなたはチームで一番の高給をもらってますのよ。それで、オープン戦の成績が打率.三〇七、本塁打一、打点八。これでは詐欺もいいところですわ」


「何だって。こっちはシーズンに向けて調子を合わせてんだ。オープン戦の成績でごたごた言われたくないね」


「おい、喧嘩はやめろ」

 宮田が止めに入った。


「監督!」

 美登里が監督を睨みつけた。


「な、なんだ?」


「抑え投手を欲しいとおっしゃいましたね。一人、連れてきましたわ。竹川、連れてきなさい」


 車のそばに待機していた竹川に命令すると、竹川は車の後部座席のドアを開け、一人の少女を下ろした。身長は一四〇センチと低く、ストレートな長い黒髪で色白の童顔。体は非常に細い。


 少女は竹川と手を繋いで連れられ、美登里のそばにやってきた。


「おい、この子、小学生じゃないのか?」


「立派な一九才ですわ。芙美村(ふみむら)(まとい)です。ご挨拶なさい」


 美登里に言われ、纏をひょこっと頭を下げる。何か挨拶をしたようだが、声が小さくて、何を言っているのかほとんど聞こえない。


「体、弱そうだが、どんな投手なんだ?」


「一日九球だけ、医者に投げる許可をもらいました」


「医者って、この子、病気なのか?」


「無理な運動が出来ないだけですわ。九球あれば、一イニングは抑えられるでしょ」


「そんなにいい投手なのか?」


「実力はわたくしが保証します。いよいよ、一週間後に開幕戦。後は監督にお任せしますわ」



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