4 食事
女子プロ野球公式戦開幕前夜、美登里は銀座の高級日本料理店二階の座敷部屋で宮田と一緒に食事をしていた。
「いよいよ、明日から開幕ですわね」
美登里は日本酒を飲みながら、テーブルを挟んで向かいにあぐらをかいて座っている宮田に言った。
「君でも緊張するんだな」
宮田は素知らぬ顔でフグの刺身を食べている。
「当然ですわ。ずばり、聞きますけど、わたくしのチームが優勝できる確率はどれくらいありますの?」
「最後の四試合は君が指揮を執ったんだ。見当はつくだろう」
「わたくしの予想では、一%も無理ですわね。打てず、守れずで最悪のチームですわ」
「そうでもないさ。ブルー・ライナーズ戦後の三戦は、四-十六、四-十一、三-七と徐々に接戦になってきてるじゃないか。打線だって、以前は完封負けばかりだったが、三点以上、毎回取ってる」
「あの皆岸って子、ブルー・ライナーズ戦の大敗で野球を投げ出すのかと思ってましたけど、翌日にはノート・パソコンを持参して、攻撃中の合間に相手チームの研究をしてましたわ」
「なかなか、いい子だろう」
「監督が推薦しただけのことはありますわね」
「君が連れてきた芙美村纏。彼女も面白いな。九球しか投げられないんじゃ、使えないと思ったが、九球全部打たれないんなら、使えるかもしれない」
「でしょう。アメリカにいた時、彼女の療養先の施設で、野球の交流試合をやることにありましたの。その時、彼女が三球投げて、わたくしは一球も打てませんでしたわ。その時、思いましたの。もしプロ野球に関わることになったら、絶対に彼女を連れてこようと」
「野手もセカンドは守備だけなら、廣橋で問題なさそうだ。外野も秋月が使えるようになった」
「それで、確率は?」
「十%だな」
「散々、誉めといて、それだけですの」
「全ては、メンバーが全員揃う開幕戦を見てからだな」
宮田はそう言うと、コップの日本酒をぐいっと飲んだ。




