5 誓い
楓たちが朋美を探し始めた頃、朋美は選手寮を出て、レイカーズ専用グラウンドへ続く川沿いの道を一人、夜空の星を見上げながら歩いていた。
「もう辞めようかな」
朋美は呟いた。
朋美は、今日、初めて野球の恐ろしさを知った。十分、研究してきたにもかかわらず、ブルー・ライナーズ打線に配給を読まれ、ことごとく打たれた。
最初は投手のコントロールが悪いせいだと自分の心の中で責任転嫁していたが、すぐにそれが自分の自惚れであることに気づいた。
自分の要求した球がことごとく打たれ、次第に朋美自身、投手に何を投げさせていいのかわからなくなった。
大差がついたところで、監督代行の美登里に自分の交代を頼んだら、選手たちの目の前で「甘えるな、最後まで責任を全うしなさい」と叱責された。美登里は、結局、最後まで朋美を交代させることはなかった。
ビュン!
朋美は風を切るような音で立ち止まった。
耳を澄ますと、ビュン、ビュンと風を切る音が微かに聞こえてくる。
音はグラウンドの方からだ。
まさか。
朋美は、スター・レイカーズ専用グラウンドに向かって駆けだした。
グラウンドには内野部分にだけ照明が点いていた。
グラウンドでは、必死にバットで素振りをする瑞香の姿があった。
今日は、楓と一日、守備練習やってたはずなのに。
朋美はグラウンドには降りず、グラウンドへ降りる石の階段に座り込み、瑞香の素振りをしばらく見ていた。
「ここにいたんだ」
朋美の隣に楓が座った。
「楓……」
「みんな、探してるよ」
「ごめん……」
「すごいよね、瑞香ちゃん。妹たちのために必死なんだよ」
「私、甘く考えてた。霧原があんなにすごいバッターだったなんて。あんなバッターに真っ向勝負を挑んでたお母さんって、すごいと思った」
「そうだね」
「それで逆に楓の凄さもわかった。プロの打線を無失点に抑えたんだから。あれは私のリードじゃなく、楓の力なんだなって」
「そんなことないよ」
「ううん。今日の試合でそれがわかった。だから――」
「駄ぁ目」
「え?」
「まだ、あたし、霧原さんと勝負してないもん。辞めるなら、その後だよ」
「それは楓の問題でしょ」
「違うよ。あたしと朋美は、二人で一人前なの。半人前の朋美が霧原さんに負けるのは当然。でも、二人だったら、互角かも」
「楓だったら、他のキャッチャーでも大丈夫よ」
「わかってないね」
「何が?」
「朋ちゃんは一度もあたしのボールを後ろにそらしたことがない。だから、安心して投げ込めるんだよ。どんな球でも受け止めてくれるって言う信頼感があるから」
「……」
「開幕戦、ブルー・ライナーズと当たるよ。あたしたちで勝負して、霧原さんに負けたら、その時はもう朋ちゃんを止めない。そこまで頑張ろうよ」
楓が朋美をじっと見つめた。
「わかった。もう一度だけ頑張ってみる」
「うん、その意気だよ」
楓が笑顔で言った。




