表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/50

5 誓い

 楓たちが朋美を探し始めた頃、朋美は選手寮を出て、レイカーズ専用グラウンドへ続く川沿いの道を一人、夜空の星を見上げながら歩いていた。


「もう辞めようかな」

 朋美は呟いた。


 朋美は、今日、初めて野球の恐ろしさを知った。十分、研究してきたにもかかわらず、ブルー・ライナーズ打線に配給を読まれ、ことごとく打たれた。


 最初は投手のコントロールが悪いせいだと自分の心の中で責任転嫁していたが、すぐにそれが自分の自惚れであることに気づいた。


 自分の要求した球がことごとく打たれ、次第に朋美自身、投手に何を投げさせていいのかわからなくなった。


 大差がついたところで、監督代行の美登里に自分の交代を頼んだら、選手たちの目の前で「甘えるな、最後まで責任を全うしなさい」と叱責された。美登里は、結局、最後まで朋美を交代させることはなかった。


 ビュン!


 朋美は風を切るような音で立ち止まった。


 耳を澄ますと、ビュン、ビュンと風を切る音が微かに聞こえてくる。


 音はグラウンドの方からだ。


 まさか。


 朋美は、スター・レイカーズ専用グラウンドに向かって駆けだした。


 グラウンドには内野部分にだけ照明が点いていた。


 グラウンドでは、必死にバットで素振りをする瑞香の姿があった。


 今日は、楓と一日、守備練習やってたはずなのに。


 朋美はグラウンドには降りず、グラウンドへ降りる石の階段に座り込み、瑞香の素振りをしばらく見ていた。


「ここにいたんだ」

 朋美の隣に楓が座った。


「楓……」


「みんな、探してるよ」


「ごめん……」


「すごいよね、瑞香ちゃん。妹たちのために必死なんだよ」


「私、甘く考えてた。霧原があんなにすごいバッターだったなんて。あんなバッターに真っ向勝負を挑んでたお母さんって、すごいと思った」


「そうだね」


「それで逆に楓の凄さもわかった。プロの打線を無失点に抑えたんだから。あれは私のリードじゃなく、楓の力なんだなって」


「そんなことないよ」


「ううん。今日の試合でそれがわかった。だから――」


「駄ぁ目」


「え?」


「まだ、あたし、霧原さんと勝負してないもん。辞めるなら、その後だよ」


「それは楓の問題でしょ」


「違うよ。あたしと朋美は、二人で一人前なの。半人前の朋美が霧原さんに負けるのは当然。でも、二人だったら、互角かも」


「楓だったら、他のキャッチャーでも大丈夫よ」


「わかってないね」


「何が?」


「朋ちゃんは一度もあたしのボールを後ろにそらしたことがない。だから、安心して投げ込めるんだよ。どんな球でも受け止めてくれるって言う信頼感があるから」


「……」


「開幕戦、ブルー・ライナーズと当たるよ。あたしたちで勝負して、霧原さんに負けたら、その時はもう朋ちゃんを止めない。そこまで頑張ろうよ」


 楓が朋美をじっと見つめた。


「わかった。もう一度だけ頑張ってみる」


「うん、その意気だよ」

 楓が笑顔で言った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ