表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/50

8 決意

 その夜、選手寮の瑞香の部屋では、瑞香が床にしいた布団にうつぶせになり、弟たちからマッサージを受けていた。


 寮の選手の部屋は通常相部屋だが、瑞香の部屋は四人の弟たちも一緒に住まわせているため、ベッドを撤去し、瑞香だけの部屋にしていた。


「お姉ちゃん、大丈夫?」

 七才の妹・順子が瑞香の腰を小さな手で一生懸命揉みながら、言った。


「無理しすぎた。くそぉ……」

 瑞香は枕に顔を埋めた。


 負けるものか。せっかくつかんだチャンスだ。


 瑞香は順子たちとアパートを出る前にした話を思い出していた。


★ ★ ★


「姉ちゃん、あのおじさんからプロ野球選手にならないかって誘われてるんだ」


「すごーい、お姉ちゃん、プロの選手になれるの?」


 弟たちがバンザイして喜んだ。


「いいか、よく聞くんだ。もし俺がプロ野球選手になれば、俺は寮に入らなければならない」


「お姉ちゃん、うちを出ていっちゃうの?」

 弟たちが途端に泣きそうな顔になった。


「おまえたちも一緒だ」


「ほんとう?やったぁ」

 一転、弟たちは飛び上がって喜んだ。


「けど、もし俺が成績を残せなかったら、チームをクビだ。そしたら、ここへはもう戻れない」


「どういうこと?」


「おまえたちは施設を預けられて、別れ別れになっちまう」


「そんなのやだよぉ」

 弟たちはまた泣きそうな顔をした。


「だから、聞いてるんだ。おまえたちが反対なら、この話は断る。今まで通り、このアパート暮らしだ」


 弟たちは返答に迷っていた。実際、瑞香の話は幼い子供たちにはまだ理解するのは無理だった。


「順子はどうだ?」


「順子は――」


 順子はじっと瑞香の顔色をうかがっていた。


「順子、怒ったりしないから、おまえの言いたいことを言え」


「お姉ちゃんと――」

 順子はボソッとしゃべった。


「何だ?」


「お姉ちゃんと一緒なら、順子、どこでもいい」


「僕もぉ」

 弟たちも順子に従った。


「そっか……」

 瑞香は弟たちを抱き寄せた。


★ ★ ★


 俺はプロ野球選手の道を選んだ。あのまま、アパート暮らしを続けていたら、半年ももちやしない。だが、プロになれれば、わずかな可能性でも妹たちと長く暮らせる。いいや、金持ちにだってなれるんだ。


 瑞香はぐっと拳を固めた。


 しばらくして、ふと瑞香は顔を上げると、順子たちは瑞香の横で眠っていた。


 姉ちゃん、頑張るよ。


 瑞香は順子たちにも布団をかけると、一緒に眠った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ