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6 紹介

「みんな、集まってくれ」


 スターレイカーズの練習用グラウンドに現れた宮田は、練習中の選手を全員ベンチまで呼び集めた。


「新しい入団選手を紹介する。秋月瑞香だ」


 宮田は隣にいた茶髪の少女を紹介した。


「よろしくな」

 瑞香は帽子も脱がず、ぶっきらぼうに挨拶した。


 瑞香のふて腐れた態度は、最初から選手たちの瑞香へのイメージを悪くしていた。


「それで、どこを守らせるの?」

 横山千鶴が聞いた。


「外野だ。だが、困ったことに野球の経験がゼロだ」


「おじさま、本気なの?ここは草野球チームじゃないのよ」


 千鶴が呆れた顔をした。他の選手たちもざわざわと会話を始める。


「強い肩とコントロールは使える。少し試してやってくれないか」


「いいわ」

 千鶴はそう言って、瑞香の方を向いた。「じゃあ、秋月、センターの守備について」


「センターってどこだよ」


「あそこに二塁ベースがあるでしょ」


 千鶴は二塁ベースを指さした。


「ああ」


「あのベースよりさらに二〇メートルぐらい先へ行って。距離がわからないなら、ベースから四十歩くらい先まで歩きなさい。さあ、行って」


「わかったよ」


 瑞香は二塁ベースの方へ走り出した。


「そう、そこでいいわ」


 数十秒後、瑞香はセンターの守備位置に着いた。


 千鶴はバットを手にし、打席に入った。


「ボールが行くわよ」


 千鶴は他の選手からボールを受け取ると、外野に向かって大きなフライを打ち上げた。


 ボールが瑞香の方へ飛んでいく。


 瑞香は上空のボールを目で追いながら、数歩歩き、落下地点でボールをグラブだけでキャッチした。


 素人にしては判断力はありそうね。


「投げ返していいのか?」


「いいわ」


 瑞香は捕ったボールをホームに向かって返球した。


 うそっ……


 それは山なりではなく、まっすぐな勢いのあるボールで、ノーバウンドで千鶴の横を通過した。


 センターからここまで百メートルはあるわ。それをノーバウンドでストライク返球するなんて。


 千鶴は宮田の方を見た。


 宮田は俺の言った通りだろうという顔をする。


「次、行くわよ」


 千鶴は再び他の選手からボールを受け取ると、外野に向かって大きなフライを打ち上げた。


 今度はレフト側への打球だ。


 しかし、瑞香は打球は追わず、その場に立っている。


 ボールはそのまま下に落ちた。


「どうして捕りに行かないの!」

 千鶴は怒鳴った。


「あれは他の外野手の守備範囲じゃねえのか」

 瑞香は素知らぬ顔で言った。


 生意気な奴。


 千鶴は今度は、外野のセンター方向に向かって低い打球を打った。


 二塁ベース付近でボールが地面に落ち、勢いよくゴロになって転がってゆく。


 瑞香はそのボールを取りに行ったが、見事後ろを抜かれてしまった。


 ゴロを捕る時のグラブの出し方、腰の堅さ、まるでなってないわね。


 千鶴は溜息をついた。




 その後、五〇球前後、瑞香に対し、千鶴は外野ノックを行った。


 結果、フライに対しては左右の打球は問題なく捕球できるものの、手前に落ちる打球や頭上を越す大きな打球などの前後の打球に対しての目測と瞬時の動きができていないことがわかった。また、速いゴロに対しては簡単に横を抜かれてしまう軽率さがあった。


「どうだ?」

 宮田が千鶴に聞いた。


「強肩とコントロールは認めるわ。けど、それだけ。守備は使えないわ。これなら、リンダを使った方がまだましね」


 一塁の守備についている身長二メートル六センチ、体重百三十キロの巨漢外国人選手リンダ・ナグルスキーをちらりと見やって、言った。


「だろうな」


「彼女、打つ方はどうなの?」


「もっと期待できんな」


「今シーズンは無理ね」


「いいや、開幕で使う」


「嘘でしょ」


「何とか仕上げてやってくれ」

 宮田はそう言うと、杖をつきながら、グラウンドの出口へ向かって歩き始めた。


「どこへ行くの?」


「スカウト活動さ。開幕まで時間がないからな」


「もう少し使える選手を取ってきてね」



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