5 入寮
数日後の正午。
スターレイカーズ選手寮のロビーに宮田が現れた。
ロビーには人の姿がない。
「おーい、誰かいないのか」
「あら、監督。どうしました?」
砂原寮長が管理人室から出てきた。
「オーナーから連絡は受けてるな」
「ええ。ここで選手のお子さんを預かるとか」
「いいや、弟たちだ。さあ、入れ」
宮田は外で待たせている瑞香たちを呼んだ。
大きなバッグを持った瑞香が四人の弟たちを連れて、ロビーに入ってくる。
「あら、こんなに」
砂原寮長は声を上げた。
「家政婦は雇うから、寮長には迷惑はかけない」
「この子が新しい選手?」
砂原寮長が決まり悪そうにしている瑞香を見て、言った。
「さあ、挨拶しろ」
宮田は瑞香の背中を軽く叩いた。
「秋月瑞香だ、よろしくな」
瑞香は上目遣いに寮長を見て、ボソッと挨拶した。
「私は砂原よ。ここでは私がルールよ。気に入らなければ、寮を出てもらいますからね」
「わかってるよ」
瑞香は面倒くさそうに言った。
「それじゃあ、寮長、部屋へ案内してやってくれ」
「わかりました。さあ、いらっしゃい」
砂原寮長は瑞香を案内した。弟たちは不安げな顔で瑞香の服をつかんで、後をついていく。
その時、順子だけが何かを思いだしたように宮田の方へ戻ってきた。
「どうした?忘れ物でもしたか」
「お、お姉ちゃんをありがとうございます」
順子はたどたどしい口調で言った。
「姉ちゃんを支えてやれ」
宮田は順子の頭を撫でた。
「うん」
順子の顔が明るくなった。順子は宮田に手を振ると、瑞香たちの後を慌てて追いかけていく。
順子の姿が消えると、宮田は真顔になった。
「秋月、本当の勝負はこれからだぞ」
宮田はぽつりと呟いて、ロビーを出ていった。




