1 スポーツ紙
翌朝、ほとんどのスポーツ紙で珍しく女子プロ野球の話題が一面を飾った。
【中学生投手、七回までパーフェクト・ピッチング】、【美少女ピッチャー、プロを手玉】、【魔球投手、誕生】といった様々な見出しで、全てライトパンサーズ戦での楓の好投を讃えるものであった。
朝野邸のテラスで美登里はコーヒーを飲みながら、そんなスポーツ新聞を読んでいた。
「おお、ここにいたのか」
テラスに美登里の父親、朝野豊彦が背広姿で現れた。
「おはようございます、お父様」
「美登里、お手柄だ。すごい投手を入団させたようだな。スター・レイカーズがスポーツ紙の一面で取り上げられるのは宮田君の監督就任会見以来だ」
「当然ですわ。わたくしはオーナーですのよ」
「しかしだ、一つ気になることがある」
「何ですの?」
「なぜおまえが試合に出てるんだ」
「チームを優勝させるためですわ」
「オーナーが選手として試合に出るなぞ聞いたことないぞ。また、監督にわがままを言ったのだろう」
「失礼ですわね。わたくしは監督に頼まれたのですわ。何せ、あのチームはわたくしよりも数万倍劣る選手ばかりですから」
「能書きはいい。もう二度と試合に出るんじゃない。朝野家の恥だ」
「恥ですって、それはあんまりですわ」
「新聞に出てるぞ。三打席連続三振の上に、最後はゴロを打っても、走らなかったそうじゃないか。おまえが何をしようと勝手だが、朝野家の品位を落とす真似はするんじゃない」
「わたくしを政略結婚の道具にしようとすることは品位のあることなのかしら?」
「それが朝野家に生まれた者の運命だ。その分、今までおまえに自由な生き方をさせてやったはずだ」
「わたくしは妻としてではなく、一人の人間として自分の力で朝野家のために尽くしたいのです」
「今まで何の苦労も知らずに生きてきたおまえに何ができる?お爺様はおまえに甘いから、球団を任せたようだが、今シーズンで結果が出なければ、おとなしく見合いをしてもらうからな」
「わかってますわ」
豊彦は言いたいことだけを言って、その場から去っていった。
お父様はいつだってそう!
美登里のカップを持つ手に力が入った。




