2 謎の少女
球団事務所を出ると、宮田は杖をつきながら、駅の方へ歩いていった。
その時、宮田は歩きながらチームのことを考えていて、背後から宮田を尾行する男の存在に気づかなかった。
宮田は飲み物を買おうと、自動販売機の前に立ち止まり、背広の内ポケットから財布を取りだし、販売機に千円札を入れて、缶のスポーツ・ドリンクを購入した。
そして、宮田が取出口から缶を取り出そうと腰をかがめた時だった。
宮田から二〇メートルほど離れて尾行していた男が突然走り出し、宮田に体当たりを喰らわした。
杖だけで体を支えていた宮田は簡単に地面に倒されてしまった。
男はいきなり馬乗りになって宮田の顔を殴りつけ、宮田から財布を奪うと、逃げ出した。
「くそっ、誰か……」
宮田が体を起こした時、男の背中は三〇メートル以上先にあった。
やられたか。
「おっさん」
その時、宮田に茶髪の少女が声をかけた。
「ん?」
「財布取り戻したら、一割くれるかい?」
「あ、ああ」
「じゃあ、缶貸しな」
少女は宮田から缶を受け取った。
「おい、どうする気だ?」
「こうするんだよ」
少女は思いっきり缶を逃走する男に向かって投げた。
缶は真っ直ぐ飛んでいき、男の頭に命中した。
男は倒れた。
「よっしゃ」
少女はガッツ・ポーズを取って、倒れた男のところへ向かって走り出した。
「何て肩だ。百五十メートルは離れていたぞ。しかもすごいコントロールだ」
宮田は財布のことよりも少女の方に気を取られていた。
しばらくして少女が戻ってきた。
「五万あるから、五千円もらった」
少女は宮田に財布を渡した。
「ああ、ありがとう」
「おっさん、次からは、まわりに気をつけな」
少女はそう言うと、立ち去った。
「ま、待ってくれ」
宮田は少女を呼び止めようとしたが、少女の姿は見えなくなってしまった。




