2 卒業パーティー
卒業式終了後、夕方、女子ソフトボール部の部員たちと部員の両親の経営する喫茶店を貸し切って、楓たちの卒業パーティーが行われた。
紛れて王路中の野球部の長倉や板倉も参加している。
「今日の先輩、傑作でした。最後までやってくれますよね」
部員の長谷川が大笑いをして、言った。酒を飲んでいるわけでもないのに陽気である。
「練習疲れってやつでさ、ついね」
楓は頭をかいた。
「気をつけなきゃ。プロでそんなことやってたら、大変よ」
朋美が厳しく注意した。
「先輩たち、スター・レイカーズに入団したんですよね。すごいなぁ。尊敬しちゃいます」
「沢木はともかく皆岸も入団するとはな」
長倉が言った。
「はーっ、早く監督に会いたいなぁ。打って打って打ちまくって、監督に誉められたい」
楓は夢見るような口調で言った。
「おまえ、投手で入団するんじゃないのか?」
「そんなの、どうでもいいの。あたしは監督のためなら投手でも野手でも何でもやって全試合出場するわ」
「もうやってらんねぇな」
長倉は楓の熱烈ぶりに呆れかえっていた。
しかし、その一方で朋美は浮かない表情で、みんなから少し離れたところでぽつんと一人、ジュースを飲んでいた。
長倉はみんなの輪から抜けて、朋美のところに歩いていった。
「よぉ、せっかくのパーティーなのに元気がねぇな」
「いつもこんなものよ。それにこのパーティーの主役は楓だから」
「プロ入団、おめでとう」
「え?」
「まさかプロに行くとは思わなかったけど、応援するよ」
「ありがと……」
朋美は少し顔を赤くした。
「奨くん、カラオケ、やろう」
一応、長倉と付き合っている長谷川が長倉の腕をつかんだ。
「あ、ああ」
長倉は長谷川に腕を引っ張られ、朋美から離れていった。
「朋ちゃん」
入れ替わりで楓がやってきた。
「明日から頑張ろうね」
「楓は気楽でいいわね」
「そう見える?」
「え?」
「見えるんなら、嬉しいな。あたしは緊張なんて知らない脳天気人間だから、きっとキャンプに参加しても余裕でいられると思うのよね、うん」
「ごめん」
朋美は楓に抱きついた。
「朋ちゃん……」
「一緒に頑張ろう」
「うん、そうだね」
楓は小さくうなずいた。




