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1 卒業式
翌年。
三月二十一日、氷島中学の卒業式が行われた。
体育館では椅子に座っている卒業生たちを前に壇上の校長が次々と卒業生の名前を読み上げ、壇上に上がった卒業生に一言言って卒業証書を渡している。
「沢木楓」
校長がマイクで楓の名前を呼んだ。
しかし、楓がいつまでも壇上に上がらない。
「ちょっと、楓」
後ろの女子生徒が椅子に座っていた楓をつついた。
楓は椅子に座ったまま、眠りこけていた。
「う……ん、なに」
楓は目をこすりながら、寝ぼけた声で言った。
「校長に名前を呼ばれてるわよ」
「えーっ、あたし、悪いことなんかしてません!」
楓は驚いて立ち上がり、大声で言った。
「あ、あれ?」
廻りと見ると、楓は卒業生たちからの冷たい視線に囲まれていた。
「壇上に上がるの!」
後ろの女子生徒は恥ずかしそうな様子で楓に言った。
「そ、そうだった」
楓は慌てて壇上に行こうとしたが、途中で椅子に転んだりして、周囲からひんしゅくを買った。
「全く……」
楓の後ろの席で見ていた朋美は思わずため息をついた。




