1 会見
十月三日、この日、東京ファルコンズ球団事務所で宮田慶吾の引退記者会見が行われた。
「宮田さんにとってプロとしての十八年間はどんなものでしたか?」
記者席から一人の記者が質問した。
「こんだけ成績残したわりに給料は安かったって感じだな」
会見席の宮田が答えた。
「プロ生活の中で一番、思い出に残った試合は?」
「ないな。俺はその年その年の成績しか頭にないんだ。過去の試合のことなんか覚えてないね。一年で言うなら、最初に三冠王とった年かな」
「引退はご自分で決意されたんですか?」
「球団からクビにされたのさ。走れない守れないの選手はいらないってね。本当はテストを受けてでもプロ野球に残りたかったが、この体じゃどこも獲ってくれないから、諦めた」
「引退後はどうされるんですか?」
「女子プロ野球の監督にって声がかかってる」
宮田のこの発言で記者席がわいた。
「どこのチームですか?」
「スターレイカーズだ」
「監督の要請は受けるんですか?」
「暇つぶしに受けようかと思ってる」
「しかし、宮田さんは女子プロ野球を嫌っておられたのではないですか?」
「今だって嫌いさ。だが、嫌いだって言って、無視してたら、いつまでも好きにはならねえだろ。だから、俺が監督になって、好きになれるような球団にしようって思ってるのさ」
「人選はもう考えているのですか?」
「まだ、監督契約もしていないのに、人選を考えるわけないだろ」
「しかし、レイカーズは昨年の最下位です。監督を引き受けたとして、来シーズンの開幕までに上位を狙えるメンバーを集められますか。レイカーズは来シーズンが駄目なら、リーグから撤退という噂も出てますが」
「監督なんて一年やれれば、十分だ。まぁ、ただもし俺が監督になったら、ぜひ獲りたい選手はいる」
「その選手の名前は?」
「企業秘密だ」




