表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/50

4 昼休み

 二年D組の教室。昼休み。


「チーム、入る気になった?」

 朋美の席の向かいに楓が座った。


「一つ、聞いていい?」


「なぁに?」


「何か、あちこちの野球部に果たし状を出してるみたいね。何でそんなことをしてるの?」


「野球がやりたいから」


「だったら、うちには野球部もあるじゃない」


「面倒臭いもん」


「え?」


「あたしは強いチームと戦って、どんどん実力つけなきゃいけないの。練習ばっかりやってる時間ないもん」


「それでソフトボール部を作ったの?」


「まぁね。野球部が二つもあったら、変だから。メンバーは形だけだから、誰でもいいの。どうせあたしが打って、抑えるから」


 何なの、この子……


「でも、学校には色々決まりがあって、そんなこと勝手にやってると、野球部に――」


「朋ちゃん」


「な、なに?」


「どうしてそんなに心配してくれるの?」


「え?」


「朋ちゃんには関係ないじゃん」


「そりゃ、そうだけど」


「朋ちゃんがうちのチームに入ってくれると嬉しいんだけどな。藤谷が言ってたよ、朋ちゃんは野球部で一年の初めからレギュラーに選ばれたって」


「昔の話よ」


「昔って二年もたってないじゃん」


「藤谷は雑用に耐えられなくて、野球が楽しくなくなって野球部を辞めたって言ってた。朋ちゃんは何で辞めたの?」


「知らない」


 朋美は教室を出ていった。


「よぉ、皆岸」

 朋美の前に大きな生徒が立ちはだかった。


「柴原……」


 三年生の柴原澄美であった。柴原は女子野球部のエース・ピッチャーであった。


「元気そうだな」


「……」


「相変わらず、貧相な面してるな」

 柴原が朋美の頬を軽く叩いた。


「何かご用ですか?」

 同級生ながら、柴原には朋美もつい敬語になってしまう。


「このクラスに沢木楓って奴がいるだろ」


「あたしのこと?」

 楓が廊下に出てきた。


「おまえか、勝手にクラブ作って、他校と試合やってるのは」

 柴原が楓の制服の襟首をつかんだ。


「暴力禁止ですよ」

 楓が柴原の腕をつかんだ。楓の握力に柴原が顔をしかめ、襟首から手を放す。


「で、用は何ですか?」


「試合をやってやる」


「?」


「おまえを叩きのめすための試合だよ。負けたら、おまえの部を廃部にしろ」


「それ、本気で言ってますか?じゃあ、うちの部が勝ったら、こっちの要求も呑んでもらいますよ」


「負けるわけないだろ」


「そうかなぁ。この朋ちゃんもメンバーなんですよ」

 楓が朋美の肩に手を乗せた。


「なにぃ」


「わ、わたしは……」

 朋美は戸惑った。


「こんな弱虫、何の戦力になるってんだ」

 柴原の言葉に朋美はカチンと来た。


「私は弱虫なんかじゃない。あんな閉鎖的な体質の野球部に見切りをつけて、辞めただけなんだから」


「てめえ、言うじゃないか。試合に負けたら、どうなるかわかってんだろうな」


「大丈夫。あたしがいて、負けるわけないじゃない」

 楓が当然とばかりに言った。


「試合は今度の土曜、午後一時、この学校のグラウンドだ。逃げんなよ」

 柴原はそう言うと、肩を怒らせて、去っていった。


「楓、どうして私もメンバーだなんて」


「野球、やりたくない?」

 楓が笑顔で聞いた。


「そりゃあ、やりたいけど」

 朋美はボソッと言った。


「じゃあ、決まり」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ