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見覚えのない宙(ソラ)の下で  作者: 旅行ねこ
第二章

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魔石マニア

「話を進めましょうか」

ケイが静かに言った。


「すまない、取り乱した」

「取り乱しました」

クリスティナとミルフィがタグとブローチをそれぞれ身に着け直した。



 クリスティナが軽く咳ばらいをした後、仕切り直す。

「まず確認だ。シスターアリアが討伐されたという情報が入ったのだが、その討伐者がノエルという事で間違いないか?」


「ちょっと違いますね。討伐されたのは確かですけど、討伐者はケイさんです。私ではありません」


「ケイが倒したのか!?」

クリスティナが驚きの声を上げた。


「え゛・・・、その魔力量でシスターアリアに挑んだんですか!? 名前だけじゃなく、頭もおかしいですよ!?」


 この聖女、ちょいちょい失礼だよね。


「失礼ですが、冒険者ランクは?」

いや、今のに比べたら全然失礼ではないよ。


「冒険者ではなくポーターです」

「ポーター? ポーターがシスターアリアを倒したというのはさすがに信じられませんね。そうだ、魔石は回収できたんですか?」

「できましたよ」


 ケイはリュックから濃紫色の大きな魔石を取り出した。


「これがシスターアリアの魔石です。他にも鎌とティアラを・・・」

「あなた! 今、リュックから直接出しましたよね!? リュック直入れとかアホですか! せめて布巻けよ、お願いだから! 傷ついたらどうするんですか!」

ミルフィが突然、人が変わったように激怒した。


 えぇ・・・。


「あの・・・さ、触ってもいいですか?」

今度は、ずいっと体を乗り出して媚びるような声で聞いてきた。


 情緒不安定なの?


「・・・いいですけど」


 ミルフィは震える両手で魔石を持ち、うっとりと眺めている。


 あ、頬擦りを始めた。


「あー、すまんな。ミルフィは重度の魔石マニアでな。周りが見えなくなる」

「・・・みたいですね」


「いくらですか」

「え?」

「これ、いくらなら譲ってくれますか!」


 正直、重いし、持て余していたので譲ってもいいのだけど、いくらで売ればいいものか。

 ノエルを見る。


「ケイさんのものですから、好きにしてください」


 なぜかノエルが顔を覆って下を向いてしまった。

「(きゃー! 言っちゃいました! 言っちゃいました!)」

 この子もどっかおかしいよね、時々。


 魔石の価格については、ギルドの鑑定士から、最低でも金貨200枚、オークションにかければ1000枚を超える可能性すらあると言われた。


「金貨50枚でどうですか!」

「いやシスターアリアの魔石なら最低でも200だろう。諦めろ」


 さすティナ、目利きばっちりです。


 ミルフィは魔石をペロっと舐めた。

「あ、唾つけちゃいました」

「リアルに唾をつけるな!」

クリスティナがミルフィの後頭部をはたいた。


「お願いします! 私財だと50枚が限界なんです。国庫に手を付けると教皇がうるさいんです!」

うるさいで済ますなよ教皇、横領罪だよねそれ・・・。


「おっぱい! おっぱいも付けますから!」

「お前・・・仮にも聖女だろ・・・」

ティナがドン引きしている。


「ダメですからね。」

ノエルが微笑みながら鎌をケイの首にかける。


 その鎌、切れないけど見た目が怖いんでホントやめてください。


 魔石については実際持て余しているわけだし、オークションなんかに出して悪趣味な金持ちの手に渡るよりも、本当に欲しい人の手に渡った方がいいだろう。


「50枚でいいですよ。おっぱいは無しで。命が惜しいので」

ケイは苦笑しながら言った。


「!! ありがとうございます! あなたがメシアでしたか!」


 ミルフィはケイに正面から抱き着くと、ケイの頭を胸に抱え込んだ。


 うわ、修道服で体のラインが見えなかったけど、この子、すごい着痩せするタイプだ。


「だめです! 無しっていいましたよね!!」

 ノエルがミルフィを引っ張って全力で引きはがしにかかった。


「話が全っ然進まんな・・・」

クリスティが疲れたように呟いた。




「興奮してしまい、申し訳ありませんでした。話を戻します。ポーターのケイさんが倒したという事は、シスターアリアは神聖魔法で倒したわけではないんですね」


「そうですね。結論だけいうと、エネルギーを枯渇させたというか、餓死させた感じですね」


「が、餓死? シスターアリアって餓死するんですか!? でも、それだと話が変わってきちゃいますね・・・。討伐者が神聖魔法使いという情報だったので、てっきり神聖魔法で倒したのかと」


「神聖魔法じゃないとマズイんですか?」


「私の国では神聖魔法が信仰の対象なので、神聖魔法でシスターアリアを倒せるとなると箔が付くんですよ。それに私も神聖魔法はちょっとしたものなので、私でも倒せるなら外交にも有利ですし、ふっかけて外貨を稼げるなぁと」


 いろいろぶっちゃけたぞ、この人。


「残念ながら、神聖魔法のしの字も使ってません」

「がーん」

がーんって口に出して言う人、初めて見た。


「クリスティナ様はミルフィさんの護衛でついてきたんですか?」

「いや、護衛はついでだ。私は、シスターアリア討伐者に遺跡調査の同行を頼みに来たんだ」


 仲良さそうだから護衛してきたのだと思っていたけど、別件があったようだ。


「王都の近くにある遺跡で異常な魔力が発生していてな。調査に向かったAランクパーティー2組が帰ってきていないんだ。魔素の濃さからシスターアリアの可能性が疑われている。アラタ村での発生と時期が重なるのが気がかりだが、そもそもシスターアリアがユニークモンスターなのか種族なのかすら分かってないからな」


 うぇ、アレっていっぱいいるかもしれないのか・・・。


「ケイ、もし、もう一度シスターアリアを倒せと言われたらできるか?」

「うーん、準備さえしっかりしていけば、いけるかな・・・」

「何が必要だ? 何でも揃えるぞ。武器・防具も最高級品を用意する」

「武器も防具もいらない。必要なのは4日分の食料。それから水」


「防具すらいらないってお前・・・、本当は何と戦ったんだ?」

「シスターアリアを素手ですか。クリスよりぶっ飛んでる人を初めて見ました」


 2人して白い目で見てくるけど、実際、武器と防具より、過ごしやすい部屋着と暇つぶしの本でもあった方が助かるんです。


「一緒に来てもらえるか?」

「もちろん。ティナの頼みなら断れないよ」

「もちろん私も行きますよ! 3年前の借りを返してやります!」

ミルフィも行く気満々だった。


「3年前になんかあったんですか?」

「うちの国にもシスターアリアが出現しまして、国の威信をかけて1000人単位の大規模神聖魔法を打ち込んでやったんです。そしたら、全・部・吸・収しやがったんですっ! んで望遠鏡で確認したら高笑いしてやがったんですよ!」


 ギリギリと歯ぎしりするミルフィ。


 そういえば、こっちでも高笑いしてたな・・・アリアさん結構煽るよね。


「お前、外遊中だろう? 何かあったらどうするつもりだ?」

「影武者連れてきてるので大丈夫です。何かあっても聖女なんて代替わりすればいいだけですし」


 自由すぎるでしょこの聖女。



 話は終わったとばかりにクリスティナがソファーから腰を上げた。

「必要な物は王都で揃えよう。ケイは馬には乗れるか?」

「乗れない」

「それなら2頭立ての馬車を借りて一緒に帰ろう。途中で馬を変えて夜通し走れば1日半で着けるだろう。馬車の中でシスターアリア討伐について詳しく聞かせてくれ。いつ発てる?」

「荷物が少ないからすぐにでも。シスターアリアの討伐報酬待ちしてたんだけど、行方不明者がいるなら急がないとね」

「悪いな。往復の費用は報酬に上乗せしておく。悪いがすぐ準備してくれ」

「わかった」


 こうして慌ただしくニパドラを後にする事となった。


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