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見覚えのない宙(ソラ)の下で  作者: 旅行ねこ
第二章

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カンタナ遺跡

 王都の北の山岳地帯にあるカンタナ遺跡。

 ここを訪れる冒険者は多い。


 この遺跡はモンスターの闊歩する迷宮、というわけではなく、絶景が拝める観光スポットである。

 訪れる冒険者はもっぱら観光客の護衛である。



「ここがカンタナ遺跡だ。降りてくれ」


 おっかなびっくり馬から降りる。

 馬、高すぎて怖い。

 

 馬に乗れないノエルとケイは、王都からは二人乗りさせてもらって、ここまで来ていた。

 ノエルはミルフィの前に、ケイはクリスティナの後ろに。


 密かに、美人と二人乗りできると喜んでたんだけど、実際走り出すと怖くてそれどころではなかった・・・。馬、不安定すぎです。


 ミルフィの前に乗っていたノエルがスタッと軽快に馬から降りた。

 ツカツカと寄って来て、不機嫌そうにケイを睨む。

「・・・随分と嬉しそうですね」


 ノエルさん、今回は冤罪です。嬉しそうなのは馬から降りられたからです。



 カンタナ遺跡は、岩山を人工的にくり抜いたような建造物で、入り口にはパルテノン神殿の柱のような彫刻が施されていた。


 正直、遺跡よりも、遺跡前の広場から見える景色の方に圧倒された。

 広場の先は断崖絶壁で、広大なパノラマが広がっていた。

 北側には深く巨大な渓谷が広がり、南側は遠くに王都の城が見えた。

 腰ほどの高さの転落防止用の柵が設置されてはいるが、背筋の凍る高さだ。


「すごい景色ですね」

「ああ、ここは普段は観光名所なんだ。あっちは悪魔の爪跡と呼ばれる渓谷、あっちには城が見える。今日は霞んでいて見えないが、条件が良ければパラレクス山も見えるぞ。ここの崖の高さは1000m近い。さすがの君でも落ちたら助からないからな」

「あははは・・・」


 そういえば、ティナと初めて会ったの、崖から落ちた直後だったなぁ。



「この遺跡にモンスターなんて出た事はなかったんだがな」

クリスティナは遺跡を振り返ってため息をついた。


「凄まじい魔素濃度だな」

「僕だと中に入るのも難しそうです」

王都で合流したアベルとルーファスが遺跡の入り口を覗き込みながら呟いた。


 まさか2人と1週間も経たずに再会するとは思わなかった。


 今回の遺跡調査メンバーは、ティナ、ミルフィ、アベル、ルーファス、ノエル、ケイの6人。

 アベルとルーファスは、アラタ村でシスターアリアと対峙した経験を買われて抜擢された。



 大まかな作戦は、王都へ向かう馬車の中で、ケイの討伐談を参考に話し合って決めた。


 遺跡へはティナ、ミルフィ、ケイの3人で突入。


 シスターアリアを発見したら、まずクリスティナがシスターアリアの鎌を弾く。


 物理攻撃の手段が無くなったところで、ケイがバリアで隔離する。


 隔離に成功したら、後方支援のメンバーと合流。みんなで適当な魔獣を生け捕りにしてきて、シスターアリアの生贄に捧げ、無駄な魔力を使わせ続ける。といった具合だ。


 ミルフィが突入班に入っている理由は、

「ケイさんがバリアに閉じ込めたら、近くでシスターアリア見れるんですよね! 絶対突入班やります! 何もできないアリアを煽り散らかしてやります!」

と、わがままを言ったからである。



「この遺跡の中って、どのくらいの広さなの?」

「大して広くはないぞ。迷宮ではなく神殿のような感じだな。部屋は20くらいしかない。ひと部屋ひと部屋は広いがな」

「あ、そうなんだ。てっきり何階層かあるのかと思ってた。それならすぐ見つかりそうだね」

「だからこその少数精鋭だ。こんな狭い遺跡の中でA級の2パーティー9名が行方不明なんだ。油断するなよ」

「クリスがいれば大丈夫でしょ。ヒーラーも控えてますし」

「それを油断と言うんだ。アベル、ルーファス、ノエルの3人は入り口で待機していてくれ。何かあったら知らせる。ここの遺跡なら大声で叫べば聞こえるだろう」



 突入班の3人が装備を整えて、遺跡の前に立った。


 クリスティナはいつもの軽鎧に長剣。

 ケイは食料満載の登山用リュックに木の棒(二代目)。

 ミルフィは動きやすいように改良された修道服。両手に1本ずつトゲ付きのメイスを持っていた。


「ミルフィさん・・・聖女というより蛮族っぽいですね」

「ケイさんのほうが余程ふざけた格好してますよ(にっこり)」

「まともなのは私だけか・・・」


 3人は入り口の門をくぐった。


 中に入ると、天井の高い広い廊下が伸びていて、左右に10個ずつ計20個、大きなアーチ型の入り口が規則的に並んでいた。

 廊下の一番奥にもアーチ形の入り口が1つあった。


「まぁ、一番奥だろうな」

「ですよねぇ」


 古往今来、ボスは一番奥と相場は決まっている。


「挟撃されると面倒だから、一応、手前から全部調べていこう」


 一番手前の部屋に入ると中は体育館ほどもある空間で、何もなくガランとしていた。

 壁も天井も白っぽい石灰岩で、標高が高い事もあって部屋の中はひんやりしていた。

 一応、壁に抜け道がないか、1周回って調べたが、特に何もなかった。


「そういえば、ミルフィさんって、魔素濃くても平気なんですか? アベルさんは苦しそうにしてましたけど」


「ちょっと息苦しいくらいですね。私、魔力量多いので魔素圧耐性も高いんですよ。意外に思われるかもしれませんが、聖女になる前はA級冒険者だったんですよ」


 トゲトゲのメイスを2本、軽々と担いでいる時点で、意外でもなんでもないです。


「私より、ケイさんの方がおかしいですよ。馬車で聞いた時は半信半疑でしたけど、ホントに平気なんですねぇ。その魔力量でこの魔素濃度の中を平気な顔して歩いているの、異様ですよ。不気味ですらあります」


「そ、そこまでですか・・・」

 目立たないよう、魔素の濃い場所では苦しそうなフリとかした方がいいのだろうか。でも魔素が濃いか薄いかすら分からないので、フリもしようがない。



 他の部屋も調べていくが、どこも同じような造りで何も見つからなかった。


 ケイは何となく違和感を感じた。

 アラタ村でシスターアリアを4日間も間近で観察した経験からすると、何か変だ。


「ティナ、シスターアリアって、魔力に貪欲というか、人だろうがモンスターだろうがガツガツ喰いたくてしょうがないって感じだったんだよ。こんな何もいないところに居座ってるとは思えないんだけど」


「ふむ。シスターアリアの可能性が高いとされた理由は、A級パーティーが2組も連絡すら無く消えた事と、この異常な魔素濃度だけだからな。別の何かか?」


「でも、これだけの魔素集めるモンスターって・・・ドラゴンが入れるような場所でもありませんし」

ミルフィが顎に指を当てながら言った。



 一番奥の部屋を除いた全20室を調べ終えた。


「いよいよ本命だな。シスターアリアだといいんだが」

「そんなセリフを聞く日が来るとは思いませんでした」


 3人は廊下から中を覗くが、最後の部屋は一段高くなっており、奥が見通せなかった。見えるのは、入り口から続く6段の石造り階段と、部屋の天井。

 天井には天窓のような穴がいくつか開いていて、そこから光が差し込んでいた。


「仕方ない、入るか」


 クリスティナを先頭に、ミルフィ、ケイと続く。


 クリスティナが階段から顔を半分出して部屋の中を覗く。


「何かいます?」

ミルフィもクリスティナの後ろから顔を出した。


「奥に石の棺見たいなのがあるな。他には何もない。調べるしかないな」


 3人は部屋の奥へと歩を進めた。


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