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見覚えのない宙(ソラ)の下で  作者: 旅行ねこ
第一章

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いつまでも一緒に

「僕の寿命、全部あげます」



 そう言ったとたん、体から急速に力が抜けていく。


 ノエルの体が明るく輝き、眩しくて目を開けていられない。


 体が変化する急激な負荷に耐えられず、2人は重なるようにベッドに倒れ込んだ。



-----


 チュンチュン・・・チュンチュン・・・



 顔に当たる朝日の光でノエルは目を覚ました。


 白い靄《もや》がかかっていた視界はクリアになり、体も驚くように軽かった。


 老婆のようにシワだらけだった手が、ツヤツヤの瑞々しい肌に変わっていてびっくりした。

 なぜか、体には絹のような銀色の髪が大量に纏《まと》わりついていた。


 『僕の寿命、全部あげます』


 昨日最後に見た記憶がフラッシュバックし、真っ青になって隣をみると、ケイが布団に突っ伏していた。


「あ・・・あ・・・なんて・・・ことを・・・」


 私がケイさんの寿命を全部奪ってしまった・・・


 突っ伏しているケイを全力で揺すった。


「ケイさんっ・・・ケイさんっ・・・いやです・・・起きて・・・起きてください!」


 目から涙が溢れる。


「うぅ・・・やだ・・・いやです。ケイさんっ! ケイさんっ!」


 ノエルは揺するのを止めることができなかった。



 ノエルの手に、もぞっ体が動いたような感触を感じた。


「・・・・・・ケイさん?」


 ケイがのそのそと起き上がり、間抜けな顔でこう言った。


「あれ? ・・・おはようございます?」


 その顔は、かなり老け込んでいて別人のようにも見えたが、間違いなくケイだった。


「お、おはようございますじゃありません! ケイさんのバカッ!! うぁぁぁぁぁぁぁぁん!」


 ノエルはケイに抱き着いて号泣してしまった。


「え、あれ、ノエルさん? ・・・びっくりするくらい可愛いくなってません?」



-----


「ほらここ、寿命を奪う量のとこに、『※ただし上限は半分まで』って書いてありますよ」

 ノエルに指摘されて、例の真祖お手製パンフレットを覗き込むと、確かに隅っこに小さくそう書いてあった。

「あ、ホントだ、こんなの気付かんて」



 ~~時は少し戻って~~


 ノエルはケイに抱き着いて長い事号泣していた。


 涙も枯れて少し落ち着くと、床を指差してこう言った。

「ケイさん、正座、です」


 有無を言わせない雰囲気に、すごすごと正座する。

 そして長い説教が始まった。


「寿命全部って何ですか、全部って! 私、ケイさんと一緒に生きたいって言いましたよね!」

「はい、すいません」


「あと、ウソつかないって言ったのに、ウソつきましたよね!」

「あれはデート中限定なので時こぅ」

「言い訳しない!」

「はい、すいませんでした」


「ケイさん死んだら、私ずっと1人で生きていく事になるんですよ? 分かってます!?」

「あ、ノエルさん、超絶美少女なんで、彼氏とかすぐできますよ?」

ノエルはケイの腕に嚙みついた。

「痛い痛い!! 牙マジ痛いからやめて! 血出てるから!」

「次にバカなこと言ったら噛みますよ!」

「今噛んだよね! ほら証拠!」

ノエルは回復魔法で傷を消した。証拠は無くなった。

そうだこの子回復魔法使えるんだった!


「もう、ホントに怒ってるんですからね! なんで全部なんて言ったんですか!」

「いやだって・・・つい」

「ついじゃありません!」


 実は、最初は寿命は「半分」だけ渡すつもりだった。

 でも、あんなノエルを見ていたら、つい「全部」と言ってしまった。

 だってできるだけ長く生きて欲しいじゃないか。

 

 しかし、冷静になって考えると、「全部」はない。

 あとに残された者の事を考えない自己犠牲など、ただの自己満足でしかなく、無責任極まりない。

 ノエルが激怒して当たり前だ。


「ほんとにごめん。猛省してます」

「ほんとですよ、もう!」



 それから、なんで寿命を全部奪われなかったのだろうという話になり、ノエルと例のパンフを見直していたところ、『※ただし上限は半分まで』の記述を見つけた。


 ミラビリスの呪いって、強制的には1年しか奪えないとか、相手に同意を求めるとか、上限定めるとか、被害者への配慮がみられるんだよね・・・。意外と倫理観のある人なのかもしれない。


「結果的に、寿命半分に分けったって事は、今、僕とノエルの寿命は全く同じって事だよね」

「そうですね」

「それなら、ノエルとはずっと一緒にいられるね!」

「!!」

 ノエルは顔を赤らめた。

 うん、怒ってるノエルも可愛いんだけど、これでなんとか言いくるめられた気がする。


 実際には、これからもノエルの寿命だけは減り続ける。

 でも、根本的な解決手段も見つかった。

 真祖ミラビリスを見つける事。

 そして、呪いを解いてもらい、できれば寿命も返してもらう。

 交渉できるかもしれないし、実力行使になるかもしれない。

 全く勝てる気はしないけど。


 どちらにせよ、ミラビリスを見つけない事には話にならない。



「呪いを解く手段も分かったから、僕はその解決を目指すよ。しばらく村を離れることになると思うけど、その間ノエルはおじいさんとおば」

「もちろん、私も一緒に行きますよ?」

ノエルにカットインされた。


「いや、せっかく元気になったんだから、おじいさんとおば」

「ずっと一緒にいられるって言いましたよね?」

・・・失言だったかもしれん。


「ケイさんっ。私を助けてくれてありがとう。今の私の命はケイさんの命で出来ています。だから、ケイさんの為に使います」


「僕としては、僕に負い目を感じずに好きに生きて欲しいんだけど」

「はい。分かりました。言質《げんち》いただきました! 好きに生きますっ!」

そう言うと、正座しているケイに抱き着いた。


「私、回復魔法使えますし、神聖魔法も使えます。お役に立ちますよ!」

・・・よく考えたら、魔法使える分、僕より強いよね。ノエルさん。



「そうだケイさんっ、言い忘れてました!」


 朝日を反射してキラキラ光る長い銀髪を揺らし、フサフサのネコミミをピクピクさせ、チャーミングなキバを覗かせながら、絶世の美少女は飛び跳ねながら言った。


「私、今日、誕生日なんです!!」



~~第一章・終~~


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