いつまでも一緒に
「僕の寿命、全部あげます」
そう言ったとたん、体から急速に力が抜けていく。
ノエルの体が明るく輝き、眩しくて目を開けていられない。
体が変化する急激な負荷に耐えられず、2人は重なるようにベッドに倒れ込んだ。
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チュンチュン・・・チュンチュン・・・
顔に当たる朝日の光でノエルは目を覚ました。
白い靄がかかっていた視界はクリアになり、体も驚くように軽かった。
老婆のようにシワだらけだった手が、ツヤツヤの瑞々しい肌に変わっていてびっくりした。
なぜか、体には絹のような銀色の髪が大量に纏わりついていた。
『僕の寿命、全部あげます』
昨日最後に見た記憶がフラッシュバックし、真っ青になって隣をみると、ケイが布団に突っ伏していた。
「あ・・・あ・・・なんて・・・ことを・・・」
私がケイさんの寿命を全部奪ってしまった・・・
突っ伏しているケイを全力で揺すった。
「ケイさんっ・・・ケイさんっ・・・いやです・・・起きて・・・起きてください!」
目から涙が溢れる。
「うぅ・・・やだ・・・いやです。ケイさんっ! ケイさんっ!」
ノエルは揺するのを止めることができなかった。
ノエルの手に、もぞっ体が動いたような感触を感じた。
「・・・・・・ケイさん?」
ケイがのそのそと起き上がり、間抜けな顔でこう言った。
「あれ? ・・・おはようございます?」
その顔は、かなり老け込んでいて別人のようにも見えたが、間違いなくケイだった。
「お、おはようございますじゃありません! ケイさんのバカッ!! うぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
ノエルはケイに抱き着いて号泣してしまった。
「え、あれ、ノエルさん? ・・・びっくりするくらい可愛いくなってません?」
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「ほらここ、寿命を奪う量のとこに、『※ただし上限は半分まで』って書いてありますよ」
ノエルに指摘されて、例の真祖お手製パンフレットを覗き込むと、確かに隅っこに小さくそう書いてあった。
「あ、ホントだ、こんなの気付かんて」
~~時は少し戻って~~
ノエルはケイに抱き着いて長い事号泣していた。
涙も枯れて少し落ち着くと、床を指差してこう言った。
「ケイさん、正座、です」
有無を言わせない雰囲気に、すごすごと正座する。
そして長い説教が始まった。
「寿命全部って何ですか、全部って! 私、ケイさんと一緒に生きたいって言いましたよね!」
「はい、すいません」
「あと、ウソつかないって言ったのに、ウソつきましたよね!」
「あれはデート中限定なので時こぅ」
「言い訳しない!」
「はい、すいませんでした」
「ケイさん死んだら、私ずっと1人で生きていく事になるんですよ? 分かってます!?」
「あ、ノエルさん、超絶美少女なんで、彼氏とかすぐできますよ?」
ノエルはケイの腕に嚙みついた。
「痛い痛い!! 牙マジ痛いからやめて! 血出てるから!」
「次にバカなこと言ったら噛みますよ!」
「今噛んだよね! ほら証拠!」
ノエルは回復魔法で傷を消した。証拠は無くなった。
そうだこの子回復魔法使えるんだった!
「もう、ホントに怒ってるんですからね! なんで全部なんて言ったんですか!」
「いやだって・・・つい」
「ついじゃありません!」
実は、最初は寿命は「半分」だけ渡すつもりだった。
でも、あんなノエルを見ていたら、つい「全部」と言ってしまった。
だってできるだけ長く生きて欲しいじゃないか。
しかし、冷静になって考えると、「全部」はない。
あとに残された者の事を考えない自己犠牲など、ただの自己満足でしかなく、無責任極まりない。
ノエルが激怒して当たり前だ。
「ほんとにごめん。猛省してます」
「ほんとですよ、もう!」
それから、なんで寿命を全部奪われなかったのだろうという話になり、ノエルと例のパンフを見直していたところ、『※ただし上限は半分まで』の記述を見つけた。
ミラビリスの呪いって、強制的には1年しか奪えないとか、相手に同意を求めるとか、上限定めるとか、被害者への配慮がみられるんだよね・・・。意外と倫理観のある人なのかもしれない。
「結果的に、寿命半分に分けったって事は、今、僕とノエルの寿命は全く同じって事だよね」
「そうですね」
「それなら、ノエルとはずっと一緒にいられるね!」
「!!」
ノエルは顔を赤らめた。
うん、怒ってるノエルも可愛いんだけど、これでなんとか言いくるめられた気がする。
実際には、これからもノエルの寿命だけは減り続ける。
でも、根本的な解決手段も見つかった。
真祖ミラビリスを見つける事。
そして、呪いを解いてもらい、できれば寿命も返してもらう。
交渉できるかもしれないし、実力行使になるかもしれない。
全く勝てる気はしないけど。
どちらにせよ、ミラビリスを見つけない事には話にならない。
「呪いを解く手段も分かったから、僕はその解決を目指すよ。しばらく村を離れることになると思うけど、その間ノエルはおじいさんとおば」
「もちろん、私も一緒に行きますよ?」
ノエルにカットインされた。
「いや、せっかく元気になったんだから、おじいさんとおば」
「ずっと一緒にいられるって言いましたよね?」
・・・失言だったかもしれん。
「ケイさんっ。私を助けてくれてありがとう。今の私の命はケイさんの命で出来ています。だから、ケイさんの為に使います」
「僕としては、僕に負い目を感じずに好きに生きて欲しいんだけど」
「はい。分かりました。言質いただきました! 好きに生きますっ!」
そう言うと、正座しているケイに抱き着いた。
「私、回復魔法使えますし、神聖魔法も使えます。お役に立ちますよ!」
・・・よく考えたら、魔法使える分、僕より強いよね。ノエルさん。
「そうだケイさんっ、言い忘れてました!」
朝日を反射してキラキラ光る長い銀髪を揺らし、フサフサのネコミミをピクピクさせ、チャーミングなキバを覗かせながら、絶世の美少女は飛び跳ねながら言った。
「私、今日、誕生日なんです!!」
~~第一章・終~~




