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見覚えのない宙(ソラ)の下で  作者: 旅行ねこ
第一章

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デート

「元気になりました!」


 なってない。


 4日目、熱が下がったとの事でノエルの部屋に行くと、布団に入ったままのノエルが首だけ動かして出迎えてくれた。


 半身も起こさない。

 布団をバンバンもしない。


「ケイさんっ。今日は、お願いがあります」

 ノエルは気だるそうな声でいった。


「いいよ。はい、あんまり痛くしないでね」

そういって右腕を差し出した。


「ち~が~い~ま~すっ!」

「お願いしますから吸ってください」

「いやです! 絶対にお断りです!」

べ~っと可愛らしく舌をだす。


 いやもうホント意地張らず吸ってほしいんだけど。


「お願いというのはですねぇ」

 布団に顔半分潜ってしまった。

「ケイさんと、デートがしたいです!」

ガバッ!

 完全に潜ってしまった。


 そういえばこの子、恋愛脳だったなぁ。


「嬉しいお誘いだけど、今の体調じゃ無理だよ。起き上がるのも無理でしょ?」


 布団から半分顔を出す。

「大丈夫です。ケイさんに抱いてもらえればっ」

ガバッ!

 完全に潜ってしまった。

「(きゃー、言っちゃいました言っちゃいました言っちゃいました)」


 確信犯かよ! 今、明らかに誤解を受ける言い回ししたよね?


「いや、でも体に障《さわ》るし・・・」


 真っ赤になった顔を半分出した。

「か、身体に触るんですか!?」


いいかげんしとけよこのムッツリスケベ!



-----


 と、言うわけでデートである。


 今は部屋の外で待機中。

 中ではノエルがエレナに着替えさせてもらっている。


 デートしてみたいというお願いを無碍にはできず、カイルさんに相談した結果、2時間だけという条件で許可がおりた。

 病み上がりではあったものの、この先体調が良くなる保証もないのだ。


 始めはカイルさんが、自分同伴という条件を出したが、

「デートにおじいさまを連れてくる女性がどこにいますか!」

と、真顔で怒られて凹んでいた。



「どうぞ」

エレナさんの声がした。


 中に入ると、もこもこのネコミミ付きパーカーを着込んだノエルが恥ずかしそうにベッドの端に腰掛けていた。


「やあ、ノエル。待った?」

そう声をかけた。


「? !! い、今来たとこです!」

ノエルは嬉しそうに答えた。


「今日はおしゃれで一段と可愛いね」

そう言ってノエルをお姫様だっこした。


「お、重くないでしょうか・・・」

  ——ぬいぐるみより軽かった。


「・・・・・・ちょっと重いかなぁ」

「! ケイさんっ、ひどいですっ!」


 軽いよ、という言葉がどうしても口から出てこなかった。



-----


 屋敷の裏に小規模な湖があった。

 村の水源になっている半人工湖だそうだ。


 その湖畔を歩く。


 背中にはカイルさんに貰った小さなリュック。中にはエレナさんが作ってくれたサンドイッチと、お茶の入った水筒、ピクニックシートが入っている。


 目の前にはもちろんお姫様を抱えている。


「体調悪くなったら言うんだぞ」

「もうっ、野暮なことは言わないでくださいっ!」

お姫様はおむずかりだ。


 季節は春。

 天気も良く、最高のデート日和だった。

「外に出るの、久しぶりですっ」

「いい天気で良かったね」


 湖を少し回り込んだところに柔らかそうな草地があったので、ピクニックシート広げて二人で座った。


「あ、このサンドイッチ、フェリカ族に貰ったパンだ」

「フェリカ族って、旅のお話に出てきた人たちですよね?」

「そうそう、パルク元気にしてるかなぁ」

「むぅ、デート中に他の女性の話をするのは減点ですよ!」

「大丈夫、パルクは男の子だ」

「・・・本当に男の子だったんですかぁ? 数年後に訪ねたら実は女の子で結婚するってお話、ありましたよ?」

 さすがノエル書房、恋愛面のパターンが豊富だ。


 グゥグゥと変な鳴き声を出しながら、黒いカモみたいな鳥が寄ってきた。

 人慣れしているので、カイルさんかエレナさんがエサをやっているのかもしれない。


 ノエルが楽しそうにパンの欠片をあたえている。


「ノエルの呪いなんだけど、手がかりが見つかったかもしれないんだ。ほら、旅の話の最初に出てきた悪い神様いただろ、パラレクスの悪神」

「あれは本当のお話なんですね」

「ああ、このデート中はウソは付かないって誓うよ」

「他の世界から来たっていうのも?」

「本当」


 とくに驚いた様子はない。

 あんな世迷言を信じてくれていたのかもしれない。


「その悪神が呪いをかけた本人かもしれないんだ」

「そうなんですか!?」

「根拠は薄いから、あくまで可能性でしかないんだけど」

「やっぱり、悪い神様なんですね!」


 すまん、マオ。悪い神様に認定されてしまった。


「それで、一度その悪神に会って来ようと思うんだ。明日出発しようかと思ってる」

「パラレクス山に登るんですか!?」

「ああ、心配しないで、あそこ実家みたいなものだから」

「で、でも、登れたとして、悪神が襲いかかってきたらどうするんですか!?」

「大丈夫、僕は勇者の聖剣より強い武器を持ってるから」

「本当に?」

「ウソは付かないって言ったでしょ」


 そう、マオに対しては聖剣より強い武器を持っている。

 <僕に対する負い目>という武器だ。

 聖剣はたぶんマオには刺ささらないけど、こっちは刺さる。


「そういうわけだから、往復14日くらいかな。しばらく出かけることになる」

「本当に行くんですか?」

「行く。もう決めたんだ」

「1人でですか?」

「1人の方が安全なんだよ」


 ティナがいれば話は別だが、中途半端な護衛を雇ってエンカウント率を上げるより、1人で行った方が安全なのだ。魔力無しの特性を活かして。


「もし、私がケイさんの血を吸ったら、行くの止めてもらえますか?」

ノエルが覚悟を決めた顔で言った。


 う・・・、ここはウソをついてでもYesと答えたいが、根本的な解決ができる可能性がある以上、行かないという選択肢はない。ウソを付かないと誓った事がここで裏目に出るとは。


「それはできない」


 ノエルは泣きそうな顔になった。


「そ、それなら、1つお願いがあります! 必ず帰ってくるって約束してください!」

「わかった。約束する」

「帰ってきたら、お返しに何でもしてあげます」

「いや、女の子が安易に何でもとか言わない方が・・・」

「な・ん・で・も、してあげますっ!」


 うん、これは多分レディコミちっくな小説に毒されてるな。一度検閲したほうがいいぞ、カイルさん。


「それではお願いがあります。魔王の山から無事に帰ってきたら、キスをしてください。お姫様」


「! はい、わかりましたっ! 帰ってきたら、キスしてあげます!」


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