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見覚えのない宙(ソラ)の下で  作者: 旅行ねこ
第一章

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吸血鬼・考察

「これが私の一番好きな本です。王子様がかっこいいんです!」

ノエルは赤らめた顔を、両手で持った本で半分隠した。


3日目。


 今回はノエルの趣味の本の話で盛り上がっていた。


 ノエルがベッドの上から指示を出し、ケイが本棚から指示された本を抜き出してはベッドの上に持っていく。


 この本は竜退治のシーンが秀逸、この本はお姫様が凛として素敵、などと教えてもらっているうちに、ベッドの上には本が高く高く積み上がっていった。


 はっきり分かったのは、ノエルは恋愛小説が好きという事だ。冒険譚も多いが、それも恋愛寄りだった。

 本の中にはかなり際どいシーンが書かれているものもあり、そんなシーンを開いてしまうと慌てて隠そうとするノエルが可愛かった。


 そういえば、最初に会った日・・・正確には2日目か、朝チュンがどうとか言ってたっけ。


 教育上どうなのかとも思ったが、14歳だった。

 恋愛に興味があって当然だ。


「こっちの本はですね・・・ふぅ・・・えっと・・・むぅ」

 話疲れたのか、ノエルはいつもより早くうとうとし始めた。

 こくり・・・こくり・・・と船を漕いでいる。


 眠るまいと必死に抵抗していたが、体もつらそうに見えたので、無理に寝かしつけて頭を撫でてやった。

 ノエルはすぐに寝息をたて始めた。



 本の元の配置など覚えていなかったので、片付けた際に並びがめちゃくちゃになってしまった。


 まぁ、ノエルに怒られながら本の位置を戻す作業もきっと楽しいだろう。



-----


 その日の午後、ノエルは熱を出した。


 ケイと話をしたいとぐずったが、体調第一。

 午後の家庭教師は中止となった。



-----


 ケイは空いた時間で『吸血鬼・考察』と書かれた本を読みこんでいた。


 吸血鬼がフリューゲル一族の事を指しているとは限らなかったが、前・領主のカイルさんが届けてくれた本という事は、そう言う事なのだろう。


 吸血鬼には何種類かいるそうで、人の襲い方に違いがあるそうだ。


1種目は手当たり次第に襲う吸血鬼。老若男女構わず選り好みをしない。


2種目は処女だけを狙う吸血鬼。処女厨乙。


3種目は相手の願い聞いた対価として吸血する吸血鬼。結構紳士な奴だ。


4種目は魅了して相手を虜にしてから襲う吸血鬼。自由恋愛なら自己責任だが催眠はよくない。


 興味深かったのは、どのタイプも何百年も生きた例があるということだった。


 1種目に比べて他の3種は明らかに襲ってる人数が少ないはずだ。それでも延命できているなら、条件を整えれば1人吸血しただけで長く寿命が伸ばせるということだろうか。

 処女ならいいのか? 最終手段で僕の血を吸ってもらったとして、男の時点でアウトだしなぁ・・・。



 本の後半は吸血鬼退治に関する事だったので読むのをやめた。

 ノエルを退治する事など、未来永劫ありえないのだから。



-----


 いっそのこと、ノエルの口に無理やり腕を押し込んで、強制的に血を吸わせてしまうのはどうだろうか。

 そうすれば、最低でも1年は延命できる。


 ・・・・ダメか。

 そんな事したら、ノエルは絶対に許してくれないだろう。

 罪悪感を抱《いだ》きながら、無為に1年間過ごしてしまう気がする。


 それでもまぁ、最終手段としては考えておこう。



 呪いについて聞きたいことがあったので、カイルさんに聞いてみる事にした。


 前・領主という立場上、話せないことも多いとは言っていたが、可愛い孫の命がかかっている事もあるし、聞くだけ聞いてみて損はない。


「呪いをかけた人物に心当たりはないんですか?」

「いくつか候補は挙がっているが、それについては話せないんだ。すまないね。」

「そうですか。最初に呪いを受けた人物は分かっているんですか?」

「ハッキリしたことは分かっていない。31代前の人物が発症していた事までは分かっているんだが、それ以前の記録は残っていないんだ」

「31代!? 1代30年とすると、900年以上前ですか?」

「そうなるね」

「呪いはかけた本人が死ぬと消えるって聞いたんですが、そんなに生きられる人っているんですか?」

「まぁ、考えられないね。フリューゲル家では、かけた本人が死んでも継続する呪いだと考えているよ」

ああ、(例外あり)ってやつか。


「ところで、エルフっています?」

「? いるよ。2人だけ会った事がある。エルフの寿命は1000年以上と言われているが、まぁ、無いだろう。人と関わるのを嫌う種族だ」


 エルフ、今回の件には関係無さそうだけど、いることはいるのか。



 マオは、僕を転移させた魔方陣を稼働させたのは1000年くらい前だと言っていた。

 1000年以上生きていて、転移魔法を自作できるくらい魔術に詳しいとなると、どうしても嫌な方向に結び付けてしまう。

 

 呪いをかけた本人でなくても、呪いに詳しい可能性もある。

 マオの力なら呪いを解除できる可能性だってある。


 貴族のフリューゲル家が持っていなくて、僕が持っているもの。

 それはマオとの <コネ> だ。


 手遅れになる前に、一度会いに戻った方が良さそうだ。


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