クリスティナの魔法
「僕は他の世界から無理やり転移させられて、気付いたら洞窟の中にいたんだ」
「ふんふん」
2日目。
早くも話すネタに困ったケイは、他の世界から来た事をバラしていた。
よく考えたら、ノエルに隠す必要も無いし、フィクションだと思われても退屈しのぎになればそれでいい。
「それでその場所はパラレクス山の天辺でね・・・」
「パラレクス山に人は登れませんし、天辺にはパラレクスの悪神っていう悪い神様がいるんですよ?」
マオさん悪神とか呼ばれてるのか。光速が有限って聞いて目をキラキラさせてた奴だぞ?
「実は僕を転移させたのは、その悪神だったんだ!」
「へー・・・」
あ、これはフィクションだと思って流されてるな。
「~~ってことがあって、洞窟の外に出られるように、その悪神にバリアの魔法を教えてもらったんだ」
「ふ~ん」
「これがそのバリア」
ケイは右手の周りに小さな球形のバリアを張った。洞窟での変形練習で、このくらいはできるようになっていた。
「ふぇ!?」
ノエルは目を丸くした。
まじまじとバリアを眺めている。
「これ、触っても大丈夫ですか!?」
「大丈夫だよ」
ノエルは恐る恐るバリアを突いた。
固い物質のような感触が返ってきた。
防御魔法とはまるで違う感触に再び目を丸くした。
「何ですこれ??」
「だから、悪神に教わったバリア」
「なんで自分の魔力量より、バリアの方が魔力高いんですか?」
「え~と、これは悪神に借りた力でね、僕の力じゃないからだね」
「・・・」
ノエルには、ケイの話が作り話なのか真実なのか分からなくなっていた。
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昼食を御馳走になり、自分にあてがわれた部屋に戻ると、机の上に本が一冊置かれていた。
タイトルには『吸血鬼・考察』の文字があった。
おそらくカイルさんが届けてくれたのだろう。
フリューゲル家では吸血鬼がタブー視されているような事を言っていたので、無理をしてくれたのかもしれない。
ケイは心の中でカイルにお礼を言った。
ノエルが気分を害する記載があるかもしれないので、読めるところだけ読んで、分からない単語は後でまとめて先生に聞く事にしよう。
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「続き! 続き!」
自分の隣をバンバン叩く。
転移話、お気に召してもらえたようで何よりです。
「~~で、その人はクリスティナって名乗ったんだ」
「え、クリス様!? それほんとの話ですか!?」
ノエルは今までで一番驚いていた。
「ああ、本当だよ。クリスティナとは2日前まで一緒だったんだ。ノエルはクリスティナ知ってるの?」
「それは当然知ってます。知らない人いませんよ?」
ギルドの様子から有名人だとは思っていたが、知らない人はいないレベルなのか。さすティナ。
「だって、この国の第二王女ですよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんて?」
「だから第二王女です。」
いやいやいやいや、第二王女が冒険者やってちゃダメでしょファンタジーかよファンタジーだった!
あー、あの人、本物の姫様なんだ・・・、自分の国の姫様を<殺戮姫>って呼んでるんだこの国の人。
「あ、でも、廃姫? されて、王位継承権も無くなったので、もう王女様じゃないんでした」
「廃姫って、何やらかしたんだよ、あの人」
「国王にサムズダウンしたとか、王妃に水かけたとかはよく聞きますね」
「よく!?」
「第一王子を殴り飛ばしたところは実際に見ました」
「見たの!?」
「本当のところは権力争いに嫌気がさして自分から出ていったらしいですよ?」
うわ~、それで腕一本でSランクっすか。さすティナ。男前すぎる。
「冒険者になってからは私も会った事があります。おじいさまが依頼をしてくれて、私の事、色々調べてくれたんですよ。すごく優しくしてくれました」
ノエルは両手を頬にあて、顔を赤らめた。
そう、ティナはすごく優しいんだ。
「ノエル、1つ忠告だ」
「何です?」
「何があっても、クリスティナと一緒に冒険をしてはいけないよ。戦うところを見てはいけない。魔法が解けてしまうからね」
「???」
ノエルは意味が分からず、ぽかんとしていた。




