デジャブ
「私は場所を知らないからな、前を歩いてくれ」
「・・・」
真後ろについて先を促される。
なんかすごい警戒されてませんかね・・・。
何かマズイことを言っただろうか?
さすがに後ろから刺されるような事は無いとは思うが、何かあればすぐにバリアを張れるよう心構えをしておく。
先ほど襲われた時も、逃げ出さずにバリアを張って弁明すれば良かったのだ。突然の攻撃と、慣れない殺意を向けられてパニックになってしまった。
「(困ったらバリア、困ったらバリア)」
「何をブツブツ言っている?」
クリスティナさん、声が怖いです。
-----
先ほどの崖の登り口までたどり着いた。
「ここを登ります」
振り返って話しかける。
クリスティナは辺りを見回した後、クイッと顎を上げて先を促した。黙って登れということらしい。
ズキズキと痛む左足を少し引きずりながら、促されるままに崖を登り始めた。
拍子抜けするほどあっさりと崖の上に到着した。
弓を構えた怖い人達が待ち伏せていないかとビクビクしながら辺りを見回すが、誰もいないようだった。
「何をそんなにビクついている?」
またいきなり襲撃されるかもしれないので、ここは素直に話しておいたほうがいいだろう。
「実はさっき、フェリカ族? に襲われまして」
「そうか」
特に驚いた様子も無い。
「フェリカ族って、好戦的な種族なんですか?」
「いや、臆病で人前に現れる事はまれだが、温厚な種族だ」
さっき警告も無しで射抜かれたんですけど。
「あの、防御魔法展開してもいいですか?」
「防御魔法なんて上等なものが使えるのか。だがシールドを張ったままじゃ動けないだろう。安心しろ、私が命だけは守ってやる」
だけってなんすか、だけって・・・。
マオさんのおかげでバリアを張りながら歩く事はできるのだが、それはどうやら非常識な事らしい。これ以上不信がられる行動は控えることにした。
先ほど襲撃を受けた場所にまで来たが、襲撃の痕跡は特に残っていなかった。恐る恐る崖の下を覗き込んでみると、身も凍るような高さだった。
クリスティナもつられて下を覗きこむ。
「ここから落ちたのか? 本当によく助かったな」
呆れたように呟いた。僕もそう思います。
何事も無く襲撃場所を通り過ぎて、崖沿いを進む。
しばらくすると滝の音が聞こえてきた。
「止まれ!」
崖とは反対側に広がる森の中から声が響いた。
振り向けば、木々の上には10人程のフェリカ族。弓矢をこちらに向けていた。
本日2回目、デジャブです。
警告に従い足を止めると、いきなり右腕を後ろに捻り上げられた。
「痛っ!」
「おっと暴れるなよ、もう一度崖から落ちたくはないだろう?」
クリスティナだった。
ケイを拘束したままフェリカ族に向かって叫ぶ。
「敵対する意思はない! 密猟者を連行した! そちらに引き渡そう!」
「ちょ、密猟者ってなんだよ! 裏切ったな!」
「人聞きの悪い事を言うな。密猟者の仲間になどなった覚えはない」
「だから密猟者なんかじゃないって!」
「密猟者はみんなそう言うんだよ」
さっきから態度がアレだと思ったら、密猟者だと思われていたようだ。
なんとなく、不審者を連行するお巡りさんみたいだなとは思ってたよ!
「ケイ!」
突然、森の方向から大きな声が響いた。
子供が松葉杖を突きながらこちらに駆け寄ってくる。声の主はパルクだった。
パルクは途中で松葉杖を放り出し、片足でけんけんしながらこちらへ走りだした。
「おい、危ないって!」
捻られた左腕が傷むのもおかまいなしに拘束を強引に振りほどく。
突然の事に、クリスティナも力を緩めていたので、ケイの力でもあっさり振りほどく事ができた。
パルクが転びそうになったところを、すんでのところで抱き留める。
「ケイ! ケイ!」
叫びながら首に力いっぱい抱き着いて大泣きし始めてしまった。
左手で頭を撫でてやる。パルクの体が骨折した右腕にのしかかってものすごく痛かったのだが、ここで痛みを顔に出すような奴は男ではない。
「・・・あれ?」
抱き合う二人の後ろで、クリスティナが気まずそうに首を傾げていた。




