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第37話 サンドイッチとか言う食べ物


 左右から聞こえて来る声。

 それに返事を返すだけのロボットになった隼人と、他二名。


 三人で歩いていればすぐに学校の最寄り駅に到着したので、三人仲良く乗車。


 電車に乗り込んだ事でロボットから人間に戻った隼人は、幸せなひと時を過ごしていた。


(……何だ……この状況は……)


 十七時を少し回って帰宅ラッシュに差し掛かる混雑し始めた電車の中。右腕に学校一の美少女である空野明星を、左腕に学校一の美人である館花翠を。


 魅力的な女子に左右の腕を掴まれてその間に挟まると言う、誰もが羨む幸せな時間を過ごす隼人。


「めちゃめちゃ腕に当たってるんだけど、大丈夫かこれ、マジで……)


 自分の腕に絡みついて胸部装甲を押し当てる左右の女子。


 その中心に立つ男子は、揺れる電車の中で足を肩幅に開くと目をカッと見開いて、腕をピクリとも動かさず。さながら仁王像の如く微動だにせず、考え事をする。


(そりゃあ乃愛も良く俺の腕に抱き着いてたけど……こんな、何て言うか、挟めるような大きさではなかったからな。ちょっと動いてもぶつからなかったから、あんまり意識もしてなかったけど。空野と館花はなんもしてないのにぶつかってると言うか、挟まってる。女子と一口に言ってもここまでの差があるのか)


 興味があろうがなかろうが。

 好きだろうが嫌いだろうが。

 腕に乳を押し当てられたら男なら誰だって異性を意識する。

 しない奴がいれば、その人はもう残念ながら男ではなくなってしまった悲しき生き物である。


 そんな訳で、最近やたらと構って来る明星と翠が自分の腕に抱き着いている今の状況は隼人が彼女達を女子として意識するには十分。


(乃愛との経験が無ければ引っかかっていた可能性もあるが、やっぱりこれはアレか。ハニートラップとか美人局とか言うやつか。空野も館花も何か本題があって、最近やたらと俺に構ってるのはその交渉を有利に進める為と考えるのが自然だよな)


 異性を意識した結果。

 少々緩んでいた二人への警戒心を再び強めた。


 そんな隼人が何を考えているかなど露知らず。


 彼をサンドイッチするように腕にへばりつくお馬鹿さん二人は、お互いを威嚇するように睨み合うばかり。


 そうして、三人でくっつく仲良しな電車での移動が終われば──。


「なんでこの子この駅で降りてるの?」

「何故この女は先輩と同じ駅で降りるんだ?」

「そりゃ全員最寄り駅同じだしな。何でそんな事も知らねえんだよ。小学校も中学校も高校も同じだろ、空野も館花も。何となく名前くらい聞いた事なかったのか?」

「知らない」

「知らんな」

「そっすかぁ」


 電車から降りた三人で帰路に就いたが、真ん中に立つのが嫌だった隼人は道路側を死守。そんな訳で彼の左側を明星が、彼のすぐ前を翠が歩くフォーメーション。


 一緒に帰ると言うより護衛みたいな感じになっているが、それはそれとして。


(館花翠の名前を知ったのは今年の春、つい一月前。高等部に入った女生徒の中に凄い美人が居るなんて言う話を聞いた時に初めて知った。まあ、御鐘井の高等部に居るって事は中等部にいたのはわかるけど、小学校も同じだったのは知らない。聞いた事もない)


(中等部三年の時、高等部に可愛い先輩が居ると言う話であれば聞いた事があったが、空野明星の名前を知ったのは高等部に上がった直後。皆が口にする名に興味の欠片もなかったが、まさか小学校から同じだったとは。聞いた事もないな)


 全く弾まない三人での会話。

 そんな状況に隼人が疲弊。


 その一方で、ライバルと思われる目の前の女について考える、明星と翠。


(だけど、要するにその程度の関係って事だよね。隼人の周りにこんな子が居たの初めて知ったし。部活が同じだから相手して貰ってるだけのただの後輩って感じ。立派なモノぶら下げてるけど、電車であれだけくっついて隼人に全然相手にされてないのが丸わかりって言うか)


(しかし、要はその程度の女と言う事だ。隼人君の隣にこの女が立っている光景など、今日初めて見た程だからな。大方、黒川先輩に振られたと知ってすり寄っているのだろうが、見た目の可愛さをいくら磨いた所で、内面が美しくなければ隼人君が相手にするはずもない)


 自分の方が優位な立場にいると思い込んでいる、恋する乙女たち。


 心貧しき乙女達は突如として目の前に現れたライバルを心の中で嗤うが、正直どっちもどっちである。


(……なんで会話しねえんだ、こいつら。会話のキャッチボールって知ってるか? デッドボールがぶつかり過ぎて、全身に青あざが出来てるぞ。なんで下校するだけでこんなに気を遣わないといけないんだよ。会話する気がないなら一人で帰らせてくれよ、マジで)


 恋のライバルと思われる者同士で睨み合い、牽制し合うのは結構だが。


 最近ようやく少しばかりピョコっと上がったはずの意中の相手の好感度パラメータが、刻一刻と目減りしている事に気付いて欲しい。


 その後、時々言葉を交わすがすぐに途切れてしまう実に居心地の悪い会話をした所で、隼人の家の前に到着した。

嫌いな人なんているのでしょうか

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