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無人島で50年も修行したら、強くなりすぎたので弟子を育てる事にした  作者: ダイス
王都機密ダンジョン編

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エピソード 10 :二階層の影

二階層は一階層より天井が低かった。


石の壁が迫るように続く通路。

松明の間隔も広く、暗がりが多い。


足音が反響する。


ユズは少し身をかがめるようにして歩く。


「狭いですね」


「動きを制限される」


シオンは周囲を見ながら答える。


「広間で戦うのと、通路で戦うのは違う。覚えておけ」


「はい」


ユズは通路の幅を確認する。


両手を広げると、壁まで少し余裕がある程度だ。


双剣を大きく振れる幅ではない。


「この幅だと……刃を立てて使う感じですかね」


「そうだ。横薙ぎより突きと縦の斬り上げを使え」


「わかりました」


その時だった。


通路の奥で、音がした。


引きずるような音。


重い。


一階層のゴブリンとは明らかに違う。


シオンは静かに立ち止まる。


「来るぞ」


「何ですか?」


「リザードマンだ」


暗がりから、姿が現れた。


二足歩行の蜥蜴型魔物。


身長はユズより頭一つ分高い。

前足には鋭い鉤爪。

尻尾が石床を叩く。


そして目が赤く光っていた。


ユズは双剣を構える。


「一階層と同じですね。目が」


「ああ」


リザードマンが唸る。


低い、腹に響くような声だ。


そのまま走ってきた。


速い。


一階層のゴブリンとは比べ物にならない。


ユズは一瞬、体が固まりかけた。


だが。


足を踏ん張る。


「身体強化」


魔力を全身に巡らせる。


リザードマンが鉤爪を振り下ろす。


ユズは横に飛んだ。


爪が石床を削る。


火花が散る。


ユズは着地しながら右の剣を突き出す。


リザードマンの脇腹に届く。


だが浅い。


鱗が硬い。


「くっ」


リザードマンが振り返る。


尻尾が来た。


ユズは咄嗟にしゃがむ。


尻尾が頭上を通過する。


すぐに立ち上がる。


距離を取る。


「硬いです、鱗が」


「鱗の隙間を狙え。関節と喉だ」


シオンは壁に背を預けて見ている。


ユズは息を整えた。


鱗の隙間。


関節と喉。


リザードマンが再び来る。


今度はユズも動いた。


正面から向かう。


リザードマンが右爪を振る。


ユズは左へ躱す。


そのまま相手の懐へ潜り込む。


近い。


右の剣を下から斬り上げる。


首の付け根。


鱗の隙間。


ズバッ。


リザードマンが動きを止めた。


そのまま崩れ落ちる。


ユズは後退しながら息をつく。


「……できました」


「悪くない」


シオンは静かに言う。


「ただ、最初の一撃が浅すぎた」


「はい。鱗の硬さを見誤りました」


「次はどうする」


「最初から関節を狙います」


「そうしろ」


ユズは倒れたリザードマンを見た。


目の赤い光は消えている。


「やっぱり、目が赤かったですね」


「ああ」


「二階層の魔物まで影響を受けている」


シオンは通路の奥を見る。


壁の魔力の流れを読む。


一階層より、流れが強い。


深層からの圧力が、確実に上へ向かっている。


何かが、下で動いている。


「進むぞ」


「はい」


二人は通路を進んだ。


二階層はいくつかの広間を持つ構造だった。


通路で繋がれた広間。

その広間ごとに、魔物が待ち構えている。


リザードマンが二匹。

三匹。


ユズは止まらなかった。


通路の狭さを活かす。


一度に複数に囲まれないよう、誘い込む。


一匹ずつ仕留める。


関節を狙う。喉を狙う。


戦うたびに、判断が速くなる。


シオンはその様子を見ながら、時折短く指示を出す。


「足元」


「右」


「下がれ」


それだけで十分だった。


ユズはすぐに対応する。


やがて二階層の最奥へ出た。


また石の扉だ。


ユズは額の汗を拭う。


最後の広間では、リザードマンが四匹同時に出てきた。


囲まれかけた。


だがユズは壁を使った。


背中を壁につけて、正面だけを向く。


左右から来られないようにする。


一匹ずつ崩していく。


関節を狙う。喉を狙う。


四匹、全て仕留めた。


シオンは何も言わなかった。


それが合格の意味だとユズはわかっていた。


「二階層、終わりですね」


「ああ」


シオンは扉の前で立ち止まった。


「少し休め」


「大丈夫です」


「休め」


有無を言わせない口調だった。


ユズは素直に壁に背を預ける。


水を飲む。


呼吸が整っていく。


シオンは扉に手を触れた。


扉越しに、魔力の流れを感じる。


三階層はまた違う。

密度がさらに上がっている。


壁の紋様も一階層、二階層と見比べると変化がある。

古い文字のような形が刻まれているが、その一部が黒ずんでいる。


魔力が焼き付いたような跡だ。


まだ序盤だ。

だがダンジョンの深部で何かが起きているのは間違いない。


それも、かなり前から続いている。


シオンは視線を落とした。


戻らなかった三組の冒険者。

彼らがどこまで進んだのかはわからない。

だが、この魔力の流れを感じ取れなかったとすれば、深層で突然変化に気づいたことになる。


それは、かなり厳しい状況だったはずだ。


「師匠」


「なんだ」


「何か感じますか? この先」


シオンは少し間を置いた。


「ある」


「何かが、下で動いている」


ユズは静かに頷いた。


「わかりました」


「気を引き締めます」


ユズは立ち上がった。


腰の双剣を確認する。

刃はまだ十分に切れる。

魔力の残量も問題ない。


体が慣れてきた。


一階層よりも二階層の方が、動きに迷いがなかった。


経験が積み重なっている。


ユズはそれを感じていた。


まだ弱い。

まだ足りない。

だがこのダンジョンは、確かに自分を強くする。


「行けます」


シオンは小さく頷いた。


扉を押す。


重い音が響く。


その先へ、二人は進んだ。 


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