エピソード5 : ギルド帰還
エピソード5
ギルド帰還
森を出た頃には、
太陽が少し傾いていた。
ユズは背負い袋を
見下ろす。
袋の中には、
ぎっしりと詰まった
ゴブリンの耳。
「……結構ありますね」
シオンはちらりと見る。
「そうだな」
「まあ巣を潰したからな」
ユズは苦笑した。
「受付嬢さん
びっくりしますね」
シオンは
特に気にした様子もない。
「だろうな」
二人はそのまま
王都へ戻った。
石畳の道を歩き、
やがて冒険者ギルドの
建物が見えてくる。
扉を開けると、
いつもの喧騒が
広がっていた。
酒を飲む冒険者。
依頼を選ぶ新人。
受付で報告する者。
その中で、
ユズとシオンは
受付へ向かった。
先ほど依頼を
受け付けた受付嬢が
二人に気づく。
「あっ」
慌てて姿勢を正した。
「お、お帰りなさいませ」
シオンは軽く頷く。
「依頼の報告です」
「ゴブリン討伐でしたね」
受付嬢は
書類を確認する。
「はい、Fランク依頼の
ゴブリン討伐です」
「討伐証明の
右耳を確認させてください」
ユズは袋を
カウンターに置いた。
ドサッ。
受付嬢は袋を開く。
そして――
固まった。
「……え?」
袋の中には
大量の耳。
一つや二つではない。
十個。
二十個。
まだある。
受付嬢の手が
止まった。
「え、えっと……」
もう一度数える。
「い、今の……」
震える声で言う。
「二十七……?」
ユズは少し
申し訳なさそうに笑う。
「巣を見つけたので」
「まとめて
倒してきました」
受付嬢の目が
さらに大きくなる。
「す、巣……ですか?」
シオンが答える。
「ええ」
「逃げた一匹を追ったら
洞窟がありまして」
「そのまま
殲滅しました」
その言葉を聞いて、
受付嬢は完全に固まった。
Fランク依頼。
本来は
一匹二匹倒して
終わる程度のものだ。
それなのに。
「に、二十七匹……」
思わず声が漏れる。
その声は
周囲の冒険者にも
聞こえていた。
「は?」
「今なんつった?」
近くにいた冒険者が
振り向く。
「二十七匹?」
「ゴブリンか?」
ざわざわと
空気が動いた。
別の冒険者が
ユズを見る。
「おいおい」
「新人だろ?」
「そんな倒せるかよ」
受付嬢は慌てて
言葉を続ける。
「か、確認します!」
耳を並べる。
一つ。
二つ。
三つ。
……
数えるたびに
周囲が静かになる。
そして。
「……二十七」
受付嬢は顔を上げた。
「間違いありません」
その瞬間。
ギルドが
ざわめいた。
「マジかよ」
「新人が?」
「しかも二人で?」
ユズは少し困った顔をする。
「やっぱり
多かったですかね」
シオンは
肩をすくめた。
「まあな」
「普通は
巣までは行かない」
受付嬢は
まだ驚いたままだ。
「え、えっと……」
「報酬ですが」
書類をめくる。
「ゴブリン一体
銅貨五枚なので……」
計算する。
「二十七匹で
銅貨百三十五枚になります」
ユズは目を丸くする。
「結構ありますね」
シオンは
淡々と言う。
「まあ巣だからな」
受付嬢は
袋に報酬を入れた。
「こちらになります」
ユズは受け取る。
「ありがとうございます」
その時だった。
後ろから
声が聞こえる。
「おい」
振り返ると、
筋肉質の冒険者が
立っていた。
鋭い目で
ユズを見ている。
「新人」
「本当にお前が
やったのか?」
ギルドの空気が
少し張り詰めた。
ユズは一瞬
シオンを見る。
シオンは
静かに言う。
「気にするな」
「事実だからな」
ユズは頷き、
冒険者の方を見る。
「はい」
「私が倒しました」
その言葉で
ギルドの空気が
さらにざわめいた。




