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無人島で50年も修行したら、強くなりすぎたので弟子を育てる事にした  作者: ダイス
王都機密ダンジョン編

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エピソード3 : 王都の仕立て屋

ドワーフの武器屋を出ると、王都の大通りには昼の賑わいが広がっていた。


石畳を行き交う人々。

商人の呼び声。

冒険者たちの笑い声。


無人島で長い年月を過ごしてきたシオンにとって、この喧騒はいまだ少し騒がしく感じる。


「……相変わらず人が多いな」


ぼそりと呟く。


その隣でユズが、ふと思い出したように声を上げた。


「あ、師匠」


「なんだ」


「王城からの手紙に、仕立て屋の紹介状も入ってました」


ユズはポーチから封筒を取り出す。


王城の紋章が刻まれた召集状。

その中に、もう一枚の紙が挟まれていた。


シオンはそれをちらりと見る。


「……服か」


王城に呼ばれている以上、あまりみすぼらしい格好というわけにもいかない。


「行くか」


「はい、師匠!」


ユズは元気よく頷いた。


───


王都中心区。


市場とは違い、落ち着いた通りだった。


宝石店。

高級武具店。

魔道具店。


その一角に、静かな佇まいの店がある。


看板には美しい文字。


『月糸の仕立て屋』


扉を開くと、小さな鈴が鳴った。


店内には上品な香りが漂い、色とりどりの布地や装備が整然と並んでいる。


奥から一人の女性が現れた。


長い銀髪。

透き通るような白い肌。

そして細く長い耳。


エルフだった。


見た目は二十代後半ほど。

だが、その瞳には長い年月を生きた者の落ち着きがある。


女性は優雅に微笑んだ。


「いらっしゃいませ」


ユズは少し緊張しながら紹介状を差し出す。


「王城からの紹介で来ました」


女性は手紙に目を通し、静かに頷いた。


「承知いたしました」


「私はこの店の店主、エルミナと申します」


優雅に一礼する。


そして柔らかく尋ねた。


「それで、本日はどのような品をお探しでしょうか?」


シオンが答える。


「王城に呼ばれてまして。最低限まともな装備が必要でして、いくつか見繕ってもらえませんか?」


エルミナは視線をユズへ向けた。


「あなたは軽装の方がよろしそうですね」


「はい! 双剣を使います!」


「なるほど」


エルミナは静かに微笑む。


「では、いくつかご提案いたします」


───


エルミナは棚から一着の外套を取り出した。


黒い外套。


光を受けると、わずかに鈍い光沢が浮かぶ。


「こちらはブラックワイバーンの皮を使用した外套です」


ユズが目を丸くする。


「ブラックワイバーン!?」


「ええ。上位種の飛竜です」


エルミナは布地を指でなぞる。


「非常に強靭で、魔法耐性にも優れております」


外套の内側をめくる。


「内側には魔繊布を使用しております」


「魔繊布?」


「魔力の流れを妨げない特殊繊維です。魔法を扱う方には非常に相性が良い素材ですね」


さらに縫い目を指差す。


「縫製にはミスリルの銀糸を使っています」


軽く、強く、魔力伝導も優れている金属糸。


まさに魔法使い用の高級装備だった。


「試してみますか?」


シオンは外套を受け取り、羽織る。


驚くほど軽い。


ブラックワイバーンの皮とは思えないほど、動きを邪魔しない。


「……悪くない」


エルミナは満足そうに微笑んだ。


───


次にユズの装備。


エルミナは軽装防具を取り出した。


黒に近い深い茶色の革装備。


「影鹿の革です」


「影鹿?」


「森の深部に棲む魔物です」


エルミナは革を軽く曲げて見せる。


柔らかい。


「非常に軽く、柔軟性が高い」


「さらに足音がほとんど出ません」


双剣使いには理想的な素材だった。


「そしてこちら」


腰装備を取り出す。


「双剣ホルダーです」


左右に剣を装着する構造。


抜刀が非常に速い。


ユズは装備してみる。


体を動かす。


軽い。


まるで何も着けていないようだった。


「すごい……!」


思わず笑顔になる。


ユズは振り返った。


「どうですか、師匠!」


シオンは一度見て言った。


「……似合ってる」


「ありがとうございます!」


ユズは嬉しそうに笑う。


エルミナも優しく微笑んだ。


「とてもお似合いですよ」


───


細かな調整が終わる。


ベルト位置。

革の締め具合。

外套の丈。


すべてが完璧に整えられた。


「これで問題ございません」


エルミナは丁寧に頭を下げる。


「また何かございましたら、いつでもお越しください」


店を出ると、王都の空気が少し軽く感じられた。


ユズは腕を軽く動かす。


新しい装備。


体に馴染む感覚。


「師匠」


「なんだ」


「武器が完成するまで一週間ありますよね」


「ああ」


ユズは少しわくわくした顔になる。


「それまで、軽く魔物討伐しませんか?」


双剣の慣らし。


シオンは少し考えた。


「……そうだな」


王都の外なら、ちょうどいい相手がいるだろう。


「行くぞ」


「はい、師匠!」


二人は王都の門へ向かって歩き出した。


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