エピソード21 : 英雄帰還と大混乱
夕暮れ。
辺境都市リュストの正門が、ゆっくりと開いた。
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そこから現れたのは、二人の冒険者だった。
血と埃にまみれた青年と、その後ろを歩く少女。
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「……あれ?」
「誰だ?」
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門番たちが、訝しげに見る。
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次の瞬間。
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「……あっ!」
「シオンだ!」
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「魔将獣と戦ったって噂の……!」
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ざわり、と空気が変わる。
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シオンは、気にせず歩く。
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「まずは、報告だな」
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ギルド前。
すでに多くの冒険者が集まっていた。
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「戻ったぞ!」
「生きてる……!」
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「ガルグは!?」
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口々に声が飛ぶ。
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シオンは、扉を開け、中へ入った。
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ギルドホール。
いつも通り、騒がしい――はずだった。
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だが。
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入口に立った瞬間。
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ざわざわ……。
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全員の視線が、集中する。
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「……何だ?」
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受付嬢が、目を見開いた。
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「シ、シオン様……!?」
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「戻りました」
淡々と告げる。
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「討伐、完了です」
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「……え?」
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一秒。
二秒。
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「ええええええええ!?」
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絶叫が、ホールに響いた。
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「完了!?」
「魔将獣ですよ!?」
「都市防衛級ですよ!?」
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周囲が、一斉に騒ぎ出す。
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「証拠は!?」
「確認は!?」
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「頭部なら、ありますが」
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シオンは、収納袋から巨大な角を取り出した。
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ドン。
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床が、きしむ。
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「……」
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一瞬の沈黙。
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「……本物だ……」
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「うそだろ……」
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誰かが、呟いた。
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次の瞬間。
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「ギルド長を呼べ!!」
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職員が走り出す。
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「至急!!」
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数分後。
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奥の扉が開く。
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現れたのは、白髪混じりの壮年男性。
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「……誰だと思えば」
「英雄殿か」
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ギルド長だった。
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「報告を聞かせろ」
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応接室。
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重苦しい空気。
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シオンは、淡々と経緯を話す。
戦況。
ガルグ。
討伐。
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話が終わると。
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「……正気か?」
ギルド長が、呟いた。
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「Aランク単独で、魔将獣討伐……」
「前例が、ない」
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「事実です」
シオンは答える。
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隣で、ユズが緊張していた。
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「……お前もだ」
ギルド長が見る。
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「後方支援だけで、前線を維持したそうだな」
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「は、はい……!」
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「立派だ」
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ユズの目が、輝く。
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「決定だ」
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ギルド長は、立ち上がった。
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「シオン」
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「特別報酬」
「功績章」
「王都への推薦」
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「全て、付与する」
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周囲が、どよめく。
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「……そうですか」
シオンは、あっさり答えた。
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「それと」
ギルド長が続ける。
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「お前には、もう普通の依頼は回せん」
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「次は――国家級だ」
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「覚悟しろ」
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「分かりました」
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その夜。
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街は、祭りのようだった。
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「英雄だ!」
「魔将獣を倒した男!」
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酒場は満席。
噂が飛び交う。
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宿の部屋。
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「師匠……すごすぎます……」
ユズが、呟く。
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「俺一人じゃない」
シオンは答える。
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「お前もいた」
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「……はい!」
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二人は、静かに笑った。
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そして。
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英雄の物語は、ここからさらに加速していく――。
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