エピソード20 : 魔将獣ガルグ討伐
――ドォォンッ!!
激突の衝撃が、戦場を揺るがした。
巨大な爪と、圧縮された魔力が正面からぶつかり合い、爆風となって周囲を吹き飛ばす。
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「ぐっ……!」
シオンは、地面を滑りながら後退した。
足元の石畳が、砕け散る。
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「……重いな」
小さく、呟く。
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正面。
土煙の中から、ガルグが姿を現した。
漆黒の毛並みは、傷一つなく。
黄金色の瞳だけが、不気味に光っている。
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「グルルルル……!」
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低い咆哮。
それと同時に、空気が歪んだ。
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周囲の魔物たちが、一斉に吠える。
動きが、さらに鋭くなる。
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「うそだろ……!」
「さっきより、速い……!」
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冒険者たちの悲鳴が上がる。
剣が弾かれ、盾が砕かれていく。
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「……なるほど」
シオンは、静かに理解した。
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「こいつが生きている限り――」
「戦場は、奴の支配下か」
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ガルグは、大地を蹴った。
巨体とは思えぬ速度で、突進してくる。
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「速い……!」
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爪が、横薙ぎに振るわれる。
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ゴォッ!
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空気が裂け、衝撃波が走る。
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シオンは、紙一重でかわす。
背後の城壁が、削り取られた。
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「当たれば、即死だな」
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シオンは、片手に魔力を集める。
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「――氷結」
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地面が一瞬で凍りつく。
ガルグの脚が、氷に絡め取られた。
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「グオオオ!」
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だが、次の瞬間。
筋肉が膨張し、氷を砕く。
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「……効きが浅いか」
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その時だった。
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「師匠!」
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ユズの声。
前線の奥で、仲間が倒れかけている。
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魔狼が、迫っていた。
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「……っ!」
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ユズは、歯を食いしばる。
震える手で、杖を構えた。
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「逃げたい……」
「でも……!」
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脳裏に浮かぶのは、師匠の背中。
何度も支えてくれた姿。
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「……私は、弟子です!」
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「守られるだけじゃ、嫌です!」
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魔力が、爆発的に膨れ上がる。
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「――氷槍・連射!」
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無数の氷の槍が放たれ、魔狼を貫いた。
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「ギャアアッ!」
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魔物は、崩れ落ちる。
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「……できた」
ユズは、呆然と呟いた。
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「よくやった」
シオンの声が、背後から届く。
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「今の判断は、完璧だ」
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「し、師匠……!」
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その隙を突き、ガルグが再び突進してきた。
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「来たか」
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シオンは、深く息を吸う。
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「重力は使わない」
「……正面から、叩き切る」
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魔力が、全身を巡る。
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「――魔力循環・最大」
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身体能力が、限界まで引き上げられる。
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踏み込み。
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爆音。
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地面が、陥没した。
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シオンは、一瞬で距離を詰める。
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「――氷装剣」
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右手に、氷の剣が形成される。
圧縮魔力で、青白く輝く刃。
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ガルグの爪と、激突。
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ギィィィン!!
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火花が散る。
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「硬い……!」
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だが、押し負けない。
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「――終わらせる」
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左手を振る。
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「――氷縛」
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無数の氷鎖が、ガルグの四肢を絡め取る。
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「グオオオオ!」
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暴れる。
地面が割れる。
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それでも――。
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一瞬だけ、動きが止まった。
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「今だ」
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シオンは、踏み込んだ。
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視界が、加速する。
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一閃。
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氷の刃が、首元を走る。
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ズバァン――!
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次の瞬間。
巨体が、ゆっくりと崩れ落ちた。
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首が、宙を舞う。
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ドォン……。
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地響きとともに、ガルグは倒れ伏した。
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同時に。
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空気が、軽くなる。
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「……?」
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冒険者たちが、顔を上げる。
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「体が……軽い……?」
「魔物が……弱くなってる!」
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配下の魔物たちは、統率を失い、次々と崩れていった。
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「終わった……」
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誰かが、呟く。
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戦場に、静寂が戻る。
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ユズは、震える足で歩み寄った。
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「師匠……」
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「……勝ったな」
シオンは、静かに答える。
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「お前も、よくやった」
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「はい……!」
ユズの目に、涙が滲んだ。
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こうして――。
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辺境都市リュストは救われた。
魔将獣ガルグ討伐。
それは、Aランク冒険者シオンの名を、王国中に轟かせる戦いとなった。
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