刹那さんの能力の覚醒
「予知?」
「うん。アイリスは時たま危機を教えてくれるんだけど、その際の感知能力はかなり高いんだ。世界樹の暴走の時はアイリスのその感知よりも先に気付いてた……というか、まだ事が起きていない時点で反応してたんじゃないかな」
《そうね。刹那ちゃんの反応は私が感知するよりも早かったわ》
脳内でアイリスが俺の論を補強してくれる。
「そこまでくるともう感知能力が優れているというレベルじゃない。それに刹那さん勘がいいって言ってたでしょ? 覚醒能力ってそういったその人の持つ性質を発展させたものが多いと聞くから、それが予知じゃないかっていうのが予想。サンプルが少ないからはっきりとはわからないけど」
「予知……能力か」
俺の予想を聞いた刹那さんは、なんともいえなそうな声音でそう呟く。
「どうしたの?」
「いや、能力覚醒かもしれないのは嬉しいんだけど、贅沢を言えば火力が欲しかったな、と」
あー。
刹那さんは準一級だから当然強いんだけど近接特化で技術や速度で戦っているタイプだから火力はそこまで高くないからな。
「確かに火力にはあまり寄与しない能力かもしれないけど、ダンジョン探索としてはかなり有効な能力じゃない?」
「それはまぁそうですが」
「奇襲攻撃や初見殺しの技も予知できれば、かなり強力な能力だよ。未開拓のダンジョンなどをかなりリスクを下げて探索できる」
「世界樹の根の事を考えると、敵意とかに反応するタイプじゃないですからね。罠とかにも対応できそうだ」
俺は真砂さんの言葉に同意を示して、そう付け足す。
「生存能力が跳ね上がりますよね」
「自分が直接狙われたケース以外も感知できれば、パーティ全体の生存能力が上がる。これは大きいよ」
「そうですか……そうですよね」
俺と真砂さんの言葉に、今度は刹那さんはうんうんと頷いていた。
実際、使いこなせればかなり強力な能力だと思う。ユニーク能力に覚醒したからと言って必ずしも一級になるわけじゃなんだいけど元々の実力が準一級の刹那さんだ。力に使い慣れれば一級に昇格するのはほぼ確定かな。
「ま、何にしろ能力を使いこなしてからだけどね」
真砂さんの言葉に、刹那さんはもう一度頷く。
覚醒ユニーク能力は目覚めた時からフル活用できるわけでないからね。当たり前だけど。
「能力の発動の制御、予知に対する反応速度の向上、能力の精度の認知と向上ってところですかね?」
俺がそう口にすると、真砂さんも刹那さんも頷いた。
まず予知できても体が反応できなければ何の意味もない。これに関しては狙撃の事を考えるとすでにある程度は出来ていると思うけど、近接戦闘に組み込むなら考えるより先に体が反応するようにならないといけない。それこそアイリスの警告に対する俺の反応のように。
次に精度の認知と向上に関しても当たり前の話で、能力がどの程度の危険に反応するか、どのような種類に反応するかが理解できていなければ信頼できるものではない。それと覚醒能力は使えば成長していくものなので、これに関しては自然と育っていくものではあるかな。
で。発動の制御。これは別にいらないと思うかもしれないけど、いくらユニーク能力といっても全くのコストなしに発動できるはずもないので常に発動しっぱなしだと消耗する。それに精度があがれば感知の必要なもののないものまで拾ってたら多分ストレスで病む。
「ただ鍛えにくい能力」
だよなぁ……。
あまり会話に参加せず俺のすぐ横でお湯をぱしゃぱしゃしていたるーがぼそっと口にしたけど、事実である。なにせ能力が発動するという事は何かしらの危機に会う直前というわけで。
その呟きを聞いて、真砂さんが口を開く。
「明日の探索では発動する可能性があるけど……現時点はそれを当てにして動くのは無理だね。刹那ちゃんはひとまずこの能力を考えて動こう」
「はい、わかってます」
頼るにはまだ心許ないからね。予知したら儲けものくらいの扱いになるだろう。……いやそもそも発動したってことは危険があるわけで、それなのに儲けものって表現はおかしいか?




