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侵入路を探せ


ダンジョンの下層に広がる空間は広大だ。元の所在を考えれば明らかにあり得ないだろうという空間がそこには広がっている。まぁ下層は亜空間だから元の所在の広さは関係ないんだけど。


で、その下層の中に更に異世界があるという特殊なこの場所でもそれは同じで広大な空間が広がっていた。漂流民はこの場所自体が普通に俺達の世界だと思ってたっぽいし。ここが世界の中にある世界の中の世界だっていってたらかなり驚いていた。まぁ気持ちはわかる。


で、今俺はその世界の空を、るーと一緒に飛んでいた。


「くー! 離れてきてる。ぎゅーっと。もっとぎゅーっと」

「そこまでべったりくっつく必要ないだろ……」


るーのディバインアームズにタンデムして。


彼女の真後ろに座って、るーのお腹に手を回す感じで抱き着いている。その手の上にはるーの左手が重ねられていた。


別に振り落とされないためにこんな体勢をしているわけではない。そもそも俺達がディバインアームズから振り落とされる事はないし、俺の結界ほどではないけど風よけのフィールドくらいは張られているからあおられる事もないんで。


じゃあなんでこんな体勢を取っているかというと、ここに来た時にしたのと同じ。力のリンクの為だ。


現在、俺とるーがやっているのは例の結晶人間がこちら側にやってきた時に開いたと思われる"穴"の残滓の捜索だ。自然に開いた穴だった場合すでに閉じてしまっている可能性が高いが、空間に関する能力を持つるーであれば気づける可能性が高い。なので周囲に俺の結界を張ってそこで入手した情報を力のリンクによってるーに連携し、彼女に調べてもらっている訳である。


ちなみに力のリンクは接触している面積には意味があるけど、接触している強さは関係ないので、るーが言って来ていることは全く意味がない。単純にるーの願望である。別に胸を押し付けられるのが好きなわけではなく、単純にるーは俺とのスキンシップ好きすぎるからな……引っ付き虫ってやつ? 俺としては、胸が潰れるのであまり力強くは抱き着きたくはない。


そもそもの話背中に張り付くのであれば体格的にるーが後ろの方がいいんだけど、俺が結界で力を消費する分飛行の方はるーに任せたいのでるーが前だ。ちなみに最初るーは俺を前に向い合せに座らせたかったらしいけど、それお前前見えないだろ。あと絵面が酷すぎる。


「それにしても、割とこっちの世界と変わらないな、この世界は」


異世界は世界によっては植物とかも全然違う感じになったりするが(少なくとも日本に出来たダンジョンを見る限りそう)、この世界に生えている植物は(実際は種は違うのだろうけど)見た目上はそれほど変わらない。今回の漂流民達はこちらの世界に溶け込みやすいんじゃないかな。


「これ、もう少し行ったら戻るんでいいんだよね?」

「戻る時は別ルートでな」


で、さすがに広大すぎるのでいくら結界を広げてある程度広範囲を探索できるとはいえ、全域を走査するのは厳しい。結晶人間の襲撃の方角と数日間で移動できそうな距離から範囲を絞り、その範囲のみ捜索をする予定である。その捜索範囲で見当たたない場合は一度ダンジョンを戻ってそちらに続く道を探す予定だったけど──


「あ」


小さく声をあげて、るーが速度を急に緩めた。


「……何かあったか?」

「ん」


小さい同意の声と共に、るーがディバインアームズの方角を変える。と同時にゆっくりと降下をしていき小さな林に囲まれた泉の近くに着地した。


「ここに反応があったのか?」

「ん」


ディバインアームズから降りてそう聞くと、るーはコクリと頷いた。ただ、


「なんで不満そうなんだよ」

「だってもうくーとの空のデート終わっちゃった、久しぶりだったのに」

「デートって」


確かにファーマント時代にはよく二人で空を飛び回ったりタンデムして遊覧飛行したりもしてたけども。こっちの世界で地上でそんなことするわけにはいかないし、ダンジョン内ではそこまで自由に飛び回ってないからな。


確かに自在に空を飛ぶことは殆どなくなったし、それが懐かしくはあるけど……今じゃないのは間違いない。


俺はぽんとるーの頭に手をおいてやる。


「今の状況下だし、少しでもマナは温存した方がいいだろ? 帰りもタンデムで帰るんだからそれで我慢してくれ」


そういってやると、即座にるーの表情が明るいものに変わった。「ん!」とこくこくと頷いている。いやそんなにべったりしたいのか、普段割と家でもぺったりしてきたりしているのに。いや、一緒に空飛びたかったのかな……俺達女神の眷属にとって空に在る事は当然だったからな……


まぁそれくらいなら別に付き合ってやっても構わない。行きと同じ体制でこの世界の空を駆け、俺達は刹那さんの元へと帰った。帰りは行きより気持ち速度が遅めだったけど触れないでおいて上げた。到着が数分遅くなる程度だったしな。


さて、侵攻の準備だ。







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