避難民②
森の中からも何かがあるのはちらちら見えていたけどわからなかったその全貌が、ようやくはっきりとする。
それは巨大な黒い長方形の箱のようだった。彼らは"箱舟"と読んでいるらしいので、もっと船みたいなものをイメージしていたんだけど……これ、箱の方だな。まぁ海を渡るためのものではなく世界を渡るもののハズだから船みたいな形である必要はないんだけど……佐渡でみたのは船型だったからな。
ちなみにその箱は一つではなく、いくつか存在していた。そして、その中には長方形の先に弾丸の先端のようなものがついている物があった。聞いてみれば、どうもその部分が航行に必要だったユニットらしい。ただ今回世界を渡った事でもう使いものにならなくなったので解体しているそうだ。
ようするに使い捨て。そんなもので世界を渡ってきたあたり、本当に切羽詰まった状態だったんだろうな……ちなみに現在こちらにいるのは3000人に満たない程度。かなりの大人数だが、一つの世界から避難してきたと考えれば僅かでしかないな……
その住人達からは怪訝そうだったり中には敵意を込めた目で視線を向けられたけど、さすがに先導している面子がいるので突っかかってくる奴はいない。そうして向かった先で、俺達は一人の男性に会う事になった。
男の名前はクレーベ。外見の見た目だけでいえば20代半ばくらい(実際彼らの中でもそこまで歳がいっている方ではないらしい)だが、この避難民のリーダー的な存在らしい。
ひとまず彼と他数名(幹部的な面子かな?)と共にさらに詳細な情報交換を行った。といっても俺達に彼らをどうこうする権利も責任もないし、本来なら連絡だけ入れて後は上に丸投げ案件だ。ただ今はそもそもその連絡すらできないので、その旨を彼らにとりあえず伝えて後は通信か転移の復旧で上に連絡である。……帰還者はそこそこいるし、純粋な異世界人もるーやアメルラメルと接触しているけどこれだけの数は当然初めてだ。彼らの存在が伝わったら大騒ぎになるだろうけど協会の人は頑張って欲しい。俺達は知らん。
その後周囲の視線も収まったので(クレーベさんが話を通してくれたらしい)、ひとまず俺は彼らを襲ってきたという襲撃者の遺体を見せてもらったわけだが、
「……見たことないタイプですね」
「だよねぇ」
言われた通り、その遺体は皮膚が結晶……というより、全身が結晶のようなものだった。人がそのまま結晶化したような滑らかなものではなく、幾つもの細かい結晶が集まって人型を形作っているような見た目だ。色は黒に近いけど、光沢はない。暗闇とかではなかなかに視認が難しそうな外見だ。
その姿を見て刹那さんと真砂さんは首を傾げている。彼女達は俺達より多くのダンジョンを回っているハズだが、こんな外見のモンスターは見たことがないらしい。ということは完全に新しい世界の存在が高いだろう。そして、
「ダンジョン製じゃないですよね、これ」
「そうだね」
俺の言葉に、真砂さんが頷く。
聞いた話では、奴を倒してから数日たっているようだが奴にはダンジョンのマナに返る様子がない。その時間には個体差があるが、完全に活動を停止しているモンスターがこんなに長い期間そのままの形状を維持しているのはありえない。というか体からマナが抜けているのに死体が残っている時点でダンジョン製ではないのは確定だ。
その遺体だけど、体に何か所も穴が開いており、更に腕はちぎれ飛んでいた。彼らが戦ってつけた傷の様で……彼らの中には首の付け根近くにある特殊な器官から念波で小型のロボットみたいなものを操作し、それで探索から戦闘までこなすことができるらしい。イメージ的に俺の頭の中に浮かんだのは昔の某ロボットアニメであったビッ〇やファン〇ルである。形状は円盤に蜘蛛みたいに足がついたような感じだけど。
あれ、じゃあなんで俺達を襲った時にそれを使わなかったの? と思ったけど……どうやら、コイツ相手に戦闘用にその機械を操作できる面子の大部分がダメージを負い戦闘不能になっているため、避難民の護衛を考えると動かせる人材がほぼいないとのこだった。周囲の探索とかも必要だしな……
ちなみにその戦闘不能の被害者だけど。物理的に大きなダメージを負っている訳ではなく、どうやら魔力にダメージを負っているようだ。




