避難民
どうやらアレはこっちでいう土下座のようなものだったらしい。そういやあの格好って首を差し出すようなポーズだったし、その辺から来ているんだろうな、多分。
アイリスのおかげで誤解が解けた俺達は、彼らから様々な情報を入手する事が出来た。
まず彼らは帰還者ではなく、アメルラメルと同様の別世界の住人だという事。
彼らの世界が、マナの欠乏によって維持できなくなり、崩壊したということ。
生き残りが世界を渡る機能を持った船で退避してきた場所がこの場所だったということ。
そしてこの場所は彼らの生まれ育った場所に酷似しているということ。
ようするに、この空間は彼らの元居た正解を写し取った場所だという事だろう。そして彼らは沈みゆく島から避難してきたのと同じ避難民だ。恐らくだけど、この世界のを覆う壁"が薄くなったのに加えて、この場所が彼らの世界の複製となったことで世界を越えやすくなり避難できたのだろう。
アイリス曰く、本来の世界樹の世界は恐らく弱った世界を取り込んで延命することでその世界をゆるやかに養分としてゆく、ある種の共生関係みたいなことをは行っているのではないかということだった。それが正しいかはわからないけど、だとしたら彼らがこちらの世界に避難してこれたのは単純な偶然ではないだろう。
そんな彼らがこっちを襲撃してきた理由だが……どうやら先に襲撃が行われたらしい。それ自体は被害を出しつつも撃退はできたが、新たに襲撃が来ることを警戒してあの場所を見張っていた。そこに俺達がやってきたというわけだ。
ちなみにアイリス曰く、《人型だけど外見は結構違ったわよ。皮膚が結晶みたいな感じだったし》なので、何故こっちを敵と誤認したかというところだが……まぁ滅びゆく世界からなんとか逃げ出してきた先でいきなり襲われたのだから、いろいろ切羽詰まっていたのだろう。アイリスがこちらの世界のイメージを流し込み、そのような生物は暮らしていないことを伝えたらそれ以降平謝りになったわけだ。
まぁこちらは一度命を狙われている訳で、本来は彼らを強く非難すべきところだったんだけど……刹那さんが叩き落してこっち無傷だし、それがなくても俺が防げてたと思うし、なんならアレ命中しててもそこまで大きなダメージを受けなかったと思うしな。さすがに俺達レベルの人間が未知の場所を探索する際に体にマナを通して強化をおこなっていないなんてありえないし。なんで謝罪は受け入れることにした。報復で殴っても意味ないし。
というか、あの程度の威力の武器を使っていてよく襲撃撃退できたな? と思ったら、彼らの主武装となるものがその襲撃で大部分破壊されてしまいしばらく使い物にならなくなったらしい。だから襲われる前に狙撃で仕留めようとしてあの行動だったそうだ。成程ね。
──で、今の俺達だけどアイリスから《問題ない》とのお墨付きが出ているため、彼らの先導で拠点としている場所へ向かって森の中を歩いている最中である。
言葉が通じないので、対話はアイリスにまかせっきりだけど。基本的にこちらが質問した事をアイリスが向こうに聞いて、もらった返事をアイリスが内容をまとめて俺に伝えてくれる。それを更に俺が皆に伝える感じなので会話のテンポはクソ悪い。
「しかし、皮膚が結晶のようになっている人型ねぇ。刹那ちゃん、そんなのここで見たことないよなぁ?」
「ないですね。彼らの……この場所の複製元の世界の存在もないでしょうし」
「となると、残りのうちのどっちかも入れ替わっている可能性が高いか」
俺から流した情報をもとに、後ろを歩く真砂さんと刹那さんがそんなやりとりをしていた。
元々世界樹が内包していた世界は3つ。そのうちの一つがこの世界に差し変わったとして、残りの世界でもここの襲撃犯のような存在はいなかったようだ。だとしたら、
「問題は、ダンジョンが生み出したモンスターなのか、それとも」
「彼らと同種の存在かですよね」
だよなぁ。
モンスターならぶちのめせばいいだけだけど、異世界人だとそう単純にはいかないしなぁ。
特に今は上と連絡がつかない状態だから判断も仰げないし……うーん、脱出可能になるか或いは最低限通信ができるようになるまでは接触してこないで欲しいところだな。
《ついたみたいよ、久遠》
そんな事を考えていたら、アイリスがそう声をかけてきた。どうやら森を抜けたらしく、一気に視界が開け──巨大な建造物が出現した。




